現在でも、「過払い金が発生していませんか?」というCMや広告を目にします。
もしかして、最近のお借り入れにも過払い金が発生している可能性がある?と疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
2010年6月18日に完全施行となった改正貸金業法により、それ以降は過払い金が発生しなくなりました。
ここでは、過払い金が発生する理由や、その後の法改正、そして、過払い金が発生しているかどうか、このような観点から、確認して欲しいと思うポイントについて解説します。
もし、あなたが2010年以前から借り入れをされていて、もしかしたらとお心当たりがある場合には、ぜひ一度専門家にご相談ください。
過払い金の請求する権利に、時効がすぐそこにきているかも知れません。
過払い金はいつまで発生していたのか?
過払い金が発生していたのは、2010年6月17日以前にお借り入れされた借金についてです。
理由は、貸金業法が改正され、2010年6月18日以降は違法な利息での貸し出しがなくなったことです。
そもそも過払い金とは、利息制限法で定められた利息の上限を超えて請求されていたもので、利用者は否応なく支払い過ぎとなっていました。
改正貸金業法の施行以降は、貸し出し利息が法定金利内に見直されたため、すべての貸金業者で過払い金が発生することはなくなりましたが、それ以前の2007年頃から、多くの貸金業者では見直しを行っていました。
そのため、2010年と同時に、2007年より前のお借り入れかどうかも、目安のひとつとしている専門家もいます。
過払い金発生の理由となるグレーゾーン金利
過払い金は、2010年までなぜ発生していたのでしょうか。
2010年の法改正より以前には、下に示す表のように、利息制限法(上限利息15~20%)と出資法(上限利息29.2%)という2種類の法律がありました。
それぞれに異なった上限利息が定められていましたが、多くの金融会社は、高い利息の出資法の上限利息で貸付を行い、たくさんの利益を得ていました。
利息制限法にはひっかかるが、出資法上は問題にならないという、この間の上限利息をグレーゾーン金利と言い、これが払い過ぎた利息ということです。
上限利息 | 概要 | |
---|---|---|
利息制限法 | 年15.0%〜20.0% | 金銭貸借上の利息の最高利率を 規制した法律であり、 債務者の保護を目的としているが、 違反しても罰則はない。 |
出資法 | 年29.2% | 金銭貸借上の利息の最高利率を 規制した法律であり、 違反すると刑事罰が科せられる。 |
2010年6月18日の改正貸金業法完全施行
多重債務が社会問題として深刻化してきた時期に、貸金業者へ適切な規制を行い、新たな多重債務者の発生を防ぐという目的で、改正貸金業法が成立しました。
2010年6月18日の改正貸金業法施行以降は、出資法上の上限金利が年20%に引き下げられ、法の抜け穴であったグレーゾーン金利は事実上撤廃されました。
過払い金を請求する権利
グレーゾーン金利での貸付はなくなりましたが、刑事罰を科されないとは言え、違法であったことは間違いありません。
民法703条では、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」と定められています。
支払い過ぎていた利息は、法律上の原因なく請求されていたもので、この不当利得にあたります。
貸金業者は不当利得について返金する義務があり、2010年6月17日以前に借金をした人は、過払い金返還請求を行える可能性があります。
過払い金を請求する権利は、法律上認められた正当な権利で、この権利を不当利得返還請求権と言います。(民法第703条)もし、調査の結果過払い金が発生していたことがわかった場合は、堂々と請求をするべきと言えます。
2010年以前のクレジットカードでのリボ払いに過払い金は発生している?
貸金業者からのお借り入れに限らず、2010年以前にクレジットカードのキャッシング枠で、リボ払いをしていた場合にも、過払い金が発生している可能性があります。
ただし、クレジットカードのショッピング枠を利用した場合は、過払い金の請求の対象にはなりません。ショッピング利用の利息は、利息制限法の対象にならないからです。
ショッピングの利息は、借金の利息ではなく立替金の手数料を支払っているという扱いになります。
また銀行で発行しているカードでも、ローンでのお借り入れができますが、通常銀行でのカードローンの利息設定は、法律の範囲内であるため、過払い金が発生している可能性は低いです。
こんな観点から、過払い金の請求ができる借金かどうか見てみよう
では、どんな借金が、過払い金の請求ができるのでしょうか。
見分けるために、いくつかポイントがあります。
過払い金が発生しているのか、どうか、下記の観点を参考にしてみましょう。
お借り入れを始めたのが2010年以前の方
2010年に法改正が行われ、利息が見直されました。
それより前のお借り入れかどうかが、過払い金が発生しているかどうかを判断する目安のひとつになります。
もし、借り入れが、大手の消費者金融に限られている場合は、2007年以前のお借り入れかどうかも大きな目安になります。
と言うのも、大手の消費者金融は法改正前の2007年頃から、すでに利息を見直し始めていたからです。
当時のお借入利息が20%を超えていた方
2010年以前のお借り入れであっても、利息制限法の上限金利(15%~20%)内で貸付を行っていた貸金業者もあります。
そのため、当時の利息を確認することが必要です。
手元に残っている契約書や取引明細などで、確認できれば良いのですが、残っていない方も多いでしょう。
それらの書類がない場合は、借り入れをしていた貸金業者から、取引履歴を取り寄せることが出来ます。
現在は取引がなく、過去のお借り入れであったとしても、貸金業者には一定の期間、取引履歴を保管する義務があり、請求があった場合には応じなければならないことが、法律で定められています。
過払い金請求の対象となるお借り入れの場合
どんな種類のお借り入れでも、過払い金の請求が可能となるわけではありません。
消費者金融からのお借り入れと、キャッシングの場合に限定されます。
住宅ローンや自動車ローン、奨学金などは、最初から利息が低く設定されているため、過払い金は発生しません。
また、クレジットカードのショッピング利用は、借金ではなく立替金となるため、こちらも過払い金は発生しません。
すでに完済している場合は完済から10年(知った日から5年)以内
すでに完済している借金も、過払い金の請求の対象になります。
ただし、過払い金を請求する権利の消滅時効は、10年と決められています。借金を完済した日(取引が終了した日)から数えて10年後までに、請求手続きを行わなければなりません。(借金をした日から10年ではない点に、注意しましょう。)
また、この消滅時効については、2020年4月1日施行の改正民法により、権利を行使することができることを知った時から5年間(民法166条1項1号)という定めが加えられています。
つまり、2020年4月以前に借りたお金については、旧法の消滅時効である「権利を行使することができる時から10年間」が適用されますが、それ以降のお借り入れについては、「権利を行使することができることを知った時から5年間」が適用される可能性があるということです。
お借入開始は2010年以前だけど、完済してまた借りることを繰り返してきた場合は?
「お借り入れを始めたのは2010年より前だけど、一度返してまた借りるということを繰り返してきた。
いったん完済して10年を過ぎたものについては、時効なのでは?」と懸念される方もいらっしゃるかも知れません。
そんな場合でも、過払い金が認められることがあります。それは、同じ貸金業者から借り入れと返済を繰り返している場合です。
そのような場合、古い取引と新しい取引が別々の取引ではなく、「一連の取引」とみなされるケースがあります。では、どのような場合だと、一連性が認められるのでしょうか?主に下記のような事柄を基準に判断します。
- 契約番号が同じ
- 常にお借入残高がある
- 取引に分断があるが、その分断期間が短い
- 利率等の契約条件が同じ
一連の取引と見なすかどうかは、相手方となる金融機関との間でも争点となりやすい事柄です。
いくつかの基準に沿って総合的に判断する必要があるため、専門家にご相談いただくのが賢明です。
過払い金が発生していないとわかってもあきらめないで!
過払い金のお問い合わせをいただき調査を行っても、過払い金は発生していなかったと判明することも珍しくありません。
しかし、過払い金がなかったから現在の借金は減らないと、借金問題をそのままにしておいても良いことはありません。
過払い金の請求以外での、借金問題の解決方法を検討しましょう。
借金の事情や状況はお一人お一人によって異なります。ご自身に合った解決方法を見つけることが、借金解決の近道です。どんな方法があるのかご紹介していきましょう。
任意整理
任意整理とは、裁判所を通さずに、借金を減額するお手続きのことをいいます。お借入先と交渉を行い、「借金の減額」や「将来の利息をカット」して、毎月の返済の負担を軽くします。裁判所を通さず直接やり取りを行うため、手続きが比較的簡易なことや、ご家族や職場に知られる可能性がほとんどないことがメリットです。
個人再生
個人再生とは、裁判所に申立をして再生計画を作成し、借金を減額してもらう手続きです。その減額された借金を、原則として3年で分割返済していきます。マイホームがある方は、住宅資金特別条項を利用することで、住宅ローンをそのまま払い続けることもできます。
自己破産
自己破産とは、裁判所に申立を行って、裁判所が「この人は支払い不能である」と判断した場合、借金の返済義務を免除してもらう(一部支払い義務が残るものもあります)お手続きです。住宅や車など一定の価値がある財産を手放すことになりますが、生活に必要な家具・家電などの財産は残すことが可能です。
2010年以前にお借り入れを始めた方はお早めのご相談を
2010年以前にお借り入れを始めた方の中には、自身の過払い金は時効を迎えているとお考えになっていることがあるようです。
その場合、お借り入れを始めてから10年が時効消滅の期限と思われていることがあります。
時効消滅の時期は、お借り入れの開始日ではなく、最終取引日が起算点となります。
そのため、2010年以降は過払い金が発生していなくても、以前に発生した過払い金について、時効がくるまでは請求が可能となるのです。
過払い金が発生しているのかの有無を、自身で判断するのは難しいかと思います。
また過払い金だけでなく、借金返済に悩まれたときは、専門家の力を借りるのが早期解決の近道です。
中央事務所では、過払い金や、債務整理の知識と実績が豊富な専門家が、あなたのお悩みをしっかりとお聞きします。
相談時にお話しをよく伺った上で、あなたの状況にあった解決方法を提案させていただきます。
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本記事の監修/司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤 竜郎
中央事務所はお客さまのお悩みに寄り添い、常にお客さまの目線に立ってアドバイス、解決するためのお手伝いをさせていただきます。 借金、過払い金請求のことでお悩み、お困りの方、ぜひお気軽に中央事務所にご相談ください。

投稿日: 2024年6月10日
更新日: 2024年12月4日