現在、生活保護を受給している方、もしくは今後、生活保護の申請を検討している方の中にも、過去のお借り入れでご自身に過払い金が発生しているかもとお考えの方がいらっしゃるかも知れません。
確かに、生活保護費を受給する一方で、過払い金を取り戻せるのか?また、受け取ってもいいのか?、疑問に思いますよね。
そんな疑問への回答や、生活保護受給者が過払い金の取り戻しを行うときに注意することなどをまとめてみました。
また、生活保護受給中の方の過払い金についてのお悩みなども載せていますので、ぜひ参考になさってください。
生活保護受給者でも過払い金の請求は可能です
過払い金の請求とは、過去にお借り入れをしていたときの高い利息を正しく計算し直し、払いすぎていた利息の返金を請求する手続きです。
これは、法律で定められている権利であり、生活保護費を受給しているかどうかは関係ありません。
生活保護費を受給中であっても、過払い金の請求を行ってお金を取り戻すことができます。
生活保護受給者は、支給される保護費で生活費を補って家計をやり繰りしているわけですから、むしろ過払い金を受け取ることが自立のきっかけになる場合もあります。
生活保護費の受給中に過払い金を受け取るとどうなるのか?
では、生活保護を受けている状態で過払い金を受け取ると、そのお金はどうなるのでしょうか?
ここで重要なのは、生活保護を受給している方にはいくつかの「義務」があるということ、そして返金された過払い金は、「所得」とみなされるという点です。
過払い金は、自身が払いすぎたお金を返金してもらったものと考えると、自身に戻ってきた自由に使えるお金と思ってしまいますが、生活保護上の考え方は異なります。
具体的にはどういうことに気をつけなければならないのか、1つずつ見ていきましょう。
過払い金はあなたの収入とみなされます
生活保護を受けている期間は、収入状況に変化があった場合はそのことを連絡しなければならないと定められています。
収入状況の変化というのは、「働いて給与をもらった」「年金や手当をもらい始めた」など収入があった場合にもあてはまりますが、過払い金を請求して手元に戻ってきた場合も、これらと同様にあなたの収入としてみなされます。
福祉事務所への届出義務があります
先に述べた収入状況の変化の届出義務とは、生活保護受給中の方が収入に変動があったときは、すみやかに保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。(生活保護法第61条)と、法律で定められているルールです。
給与などご自身が働いて得た収入だけでなく、年金や児童手当、生命保険や入院給付などの働きによらない収入の場合も同様です。
過払い金も例外ではなく、必ず担当のケースワーカーまで申告しなければならないのです。
不正受給とみなされる可能性も
収入があったにもかかわらず申告を怠った場合には、生活保護費の不正受給とみなされる可能性があります。
たとえば、1度だけ行ったアルバイトの申告を、うっかり忘れてしまうなどということはないとは言えません。
しかし、言わなければわからないのではと、わかっていながら申告をせず、後日の調査で発覚した場合は、不正受給とみなされる可能性が高くなってしまいます。
得た収入は金額の大小にかかわらず、ケースワーカーに申告が必要です。
不正受給がばれるとどうなるのか?
実際に支給される保護費は、下図のようなイメージです。
定められた最低生活費と生活保護受給者の実際の収入認定額(※)を比べてみて、収入認定額のほうが少ない場合に、不足する部分を生活保護費でカバーするのが生活保護の基本的な考え方になります。
(※)収入認定額とは、勤労して得た収入、年金収入など世帯員全員が得たもの全ての収入から、控除される額(基礎控除、必要経費など)がある場合はそれらを差し引いた額のことです。
つまり、過払い金を得ることで最低生活費を超える収入が入ることになった場合は、個々のケースによって以下の対応を取られる可能性があります。
不正に受給した分の返金を求められる場合も
過払い金の受け取りを報告せず、後にそのことが発覚した場合は不正受給とみなされ、今までもらってきた生活保護費までさかのぼって請求されるリスクもないとは言えません。
生活保護が打ち切られたり減額になったりする可能性が
生活保護が打ち切られたり減額になったりする事由としては、生活保護受給者が保護を必要としなくなったとき(生活保護法第26条)や、生活保護受給者が義務に違反したとき(生活保護法第62条3項)などがあげられます。
過払い金で得た収入が、定められた最低生活費と同等であったり上回ったりする場合などは、前者の法律を根拠に、また知っていて申告をしない場合は、後者を根拠に減額や打ち切りといった可能性も出てきます。
刑事告訴になる可能性も
その経緯や年数、金額などから、不正受給が意図的に行われ悪質性が高いと判断された場合には、刑事告訴という事態になる可能性もまったくないとは言えません。
生活保護受給者が過払い金請求をしたかどうかは、福祉事務所で調べることはありませんが、報告しないまま後日発覚してしまうと、不正受給とみなされる可能性が高くなります。
そのためにも、過払い金を請求する場合にはケースワーカーへの届け出は行うように心がけましょう。
お悩み例
生活保護を受けている方が、過払い金の請求することを考えるとき、実際にどんなことで悩まれるのか、具体的な例をあげて見ていきましょう。
Q1 過払い金を受け取りたいけど、保護費がもらえなくなるのか?
Q:現在、生活保護を受給して生活しています。過払い金を受け取ると、生活保護はストップしてしまうのでしょうか?保護費がもらえなくなると、生活できなくなるので心配です。
A:過払い金を受け取ることで、生活保護費を受け取らなくても生活できる状況になる場合は、保護費の支給はいったん廃止になる可能性が高いです。
しかし、過払い金によってまとまったお金が入ったとしても、それは一時的なもので継続的な収入となるわけではありません。過払い金を生活費に充てそれらがすべて費消された後、また収入がない状態になれば、生活保護の再申請は可能なので、安心してください。
面倒だから請求しない方がよいかと迷う方もいらっしゃると思いますが、生活保護受給者は、利用できる資産は、最低限度の生活の維持のために活用することが受給の要件(生活保護法4条)とされています。また、生活保護費が国民の税金で運営されていることを考えると、請求してそれで生活ができる間は自立するということは、重要な義務と言えるでしょう。
Q2受給してない時期の過払い金でも保護費に影響するのか?
Q:生活保護を受給するずっと以前にお借り入れをしていました。そのときに発生した過払い金を請求して返金されたら、そのことをケースワーカーに申告しなければならないのでしょうか?また、申告した場合、生活保護受給費に影響はあるのでしょうか?
A:生活保護受給者は、全ての収入について申告義務があります(生活保護法第61条)。返金される過払い金がたとえ生活保護受給以前の要因に基づくものでも、保護費を受給中に受け取る以上、現在の収入について申告義務があると言えます。返金される金額や、決められている最低生活費との関係にもよりますが、保護費の減額もしくは受給停止を受ける可能性があります。
過払い金の消滅時効に注意
過払い金には、時効があります。
正確には「消滅時効」と言いますが、最後に返済をした日(取引が終了した日)から、10年後が過払い金請求の消滅期限になります。
加えて、2020年の民法改正により、権利を行使できる時から10年間のほか、「権利を行使することができることを知った時から5年間」とすることが定められました。
基本的には、最終取引日から10年を過ぎると過払い金は消滅時効を迎え、請求することができなくなってしまいます。
そのため、自身に過払い金が発生しているかもと思われる方はまず、時効がいつなのかを確認してみてください。
そしてもし時効が差し迫っているようであれば、できるだけ早く専門家へ相談されることをおすすめします。
生活保護受給中の過払い金の相談も専門家に相談しましょう
生活保護受給中に過払い金の請求をして返金を受ける場合、そのことをケースワーカーに申告しなければならず、それによって生活保護費の減額や受給停止の措置が取られる可能性があります。
しかし、過払い金を請求することでまとまった額の返金をうけることができれば、生活保護を受けることなく経済的に自立し、それをきっかけにご自身の力で社会復帰できる可能性もあるのです。
中央事務所では、過払い金の対象であるかどうか、また過払い金はいくらあるのかの調査を無料で行っております。
もし、対象でなかった場合でも費用はかかりません。
WEBから、24時間いつでも受付していますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。
本記事の監修/司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤 竜郎
中央事務所はお客さまのお悩みに寄り添い、常にお客さまの目線に立ってアドバイス、解決するためのお手伝いをさせていただきます。 借金、過払い金請求のことでお悩み、お困りの方、ぜひお気軽に中央事務所にご相談ください。
投稿日: 2024年6月10日
更新日: 2024年10月8日