個人再生とは?個人再生の特徴や、メリット・デメリットを解説

借金によって生活が立ち行かなくなった場合、債務整理をすることで返済額を見直したり、負担を減らすことが可能となる場合があります。

債務整理にはいくつかの種類がありますが、この記事では個人再生(民事再生)について解説していきます。

個人再生の対象となる方や、個人再生のメリット・デメリットなどを見ていきましょう。

個人再生とは

個人再生とは、個人版民事再生とも呼ばれており、裁判所に再生計画を認可してもらい、債務を返済するものです。

裁判所のホームーページでも解説されていますので、詳しく知りたい方は参照してください。

個人再生には2種類ある

個人再生手続は、手続きを利用する人に応じて2種類あります。

小規模個人再生は、個人商店主や小規模の事業を営む方を対象

個人商店主や小規模の事業を営む方を対象とした「小規模個人再生手続」では、次のような方が利用の条件となります。

  • 借金などの総額が5000万円以下であること(住宅ローンを除く)
  • 将来にわたって継続的に収入を得る見込みがあること

給与所得者等再生手続

主にサラリーマンの方を対象とした手続きです。次のような方が利用の条件となります。

  • 借金などの総額が5000万円以下であること(住宅ローンを除く)
  • 将来にわたって継続的に収入を得る見込みがあること
  • 収入が給料などで、その金額が安定していること

最低限返済しなければいけない金額とは

個人再生手続きでは、返済能力や負債の総額を勘案して、最低限返済しなければいけない金額が決まっています。

まず、次のような金額を計算し、最も高い金額以上の借金を返済することになります。

(1)自分の可処分所得の2年分

(2)清算価値総額(清算価値の対象となる財産を全て処分した場合に得られる金額)

(3)借金の総額(住宅ローンを除く)に応じた最低返済額

なお、小規模個人再生であれば(2)(3)のいずれか高い方の金額が採用されます。

個人再生の再生計画とは

個人再生手続で立てる返済計画では、全ての債権者に対する返済総額を減らした上で、原則として3年間で分割して返済する計画となります。

ただし、養育費や税金などの一部の債務は減額されません

小規模個人再生では、再生計画には債権者の半数の同意が必要

裁判所は、債権者の意見を聞いた上で、再生計画を認めるかどうか判断します。

更に、小規模個人再生では、次のような条件を満たす必要があります。

  • 再生計画に同意しない債権者が全体の半分に満たない
  • 再生計画に同意しない債権者の債権総額が、全体の半分に満たない

例えば債権者が3社いて、債務総額が300万円だった場合、次のような場合、再生計画は認められなくなってしまいます。

  • 2社が反対
  • 200万円の債権を持つ1社が反対

個人再生のメリット

次に、個人再生の場合にどのようなメリットがあるか見ていきます。

借金を減らせる

個人再生の場合に最低限返済しなければいけない金額については先ほどご説明しました。

その基準の一つである最低返済額は、借金の総額(住宅ローン除く)に対して次のように計算されます。

  • 100万円未満の人・・・・・・総額全部
  • 100万円以上500万円以下の人・・・・・・100万円
  • 500万円を超え1500万円以下の人・・・・・・総額の5分の1
  • 1500万円を超え3000万円以下の人・・・・・・300万円
  • 3000万円を超え5000万円以下の人・・・・・・総額の10分の1

給与所得者等再生手続であれば更に可処分所得も考慮されますが、これらの金額が小さい場合は、借金の金額が最大で10分の1となる可能性があります。

適用範囲が広い

個人再生は、

  • 免責不許可事由が問われない
  • 一部の債権者が反対しても再生計画が認められ得る

という長所があります。

自己破産の場合、免責が認められないケースもある

自己破産の場合は、浪費やギャンブルによって負債を増やしたなど「免責不許可事由」に該当する場合、債務の返済義務が免責されない可能性があります。

一方で、再生計画の認可について定めた民事再生法174条では免責不許可自由についての規定はなく、個人再生では、自己破産の場合に問われるような免責不許可事由に影響されません。

一部の債権者が反対しても再生計画が認められる可能性がある

債務整理の一つである特定調停では、返済計画に対して全ての債権者が同意する必要があります。

また、任意整理では、返済計画に同意してくれない債権者との債務整理ができません。

一方、個人再生の場合は、再生計画に反対する会社数と債務の金額の両方が過半数を下回る場合でも再生計画が裁判所に認められる可能性もあります。

住宅ローンを返済中でも、持ち家を失わずに借金を整理できる

住宅ローンを使ってご自宅を購入された場合、住宅には担保として抵当権が設定されます。

返済ができなくなったら銀行に住宅を売却されてしまうと不安な方もいらっしゃいますが、個人再生の場合は再生計画の認可の見込みがあれば抵当権が実行されず、住宅が処分されないようにできます

このルールは民法の「住宅資金貸付債権に関する特則」というルールで、「住宅ローン特別条項」とも呼ばれることがありますが、条文を確認したい場合は以下のリンクを参照して下さい。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411AC0000000225#Mp-Ch_10

車などの財産を手放さなくて良いことも

個人再生では、破産した場合の財産価値(清算価値)以上の弁済をする必要がありますが(https://www.courts.go.jp/nagoya/saiban/tetuzuki/minzi_kojin_mositate01/index.html)、破産した場合でも一定の財産は保有し続けられます。

このような財産を自由財産と言いますが、

  • 99万円までの現金
  • 自動車
  • 電話
  • ストーブ

などの生活に必要なものであれば自由財産に含まれることがあります。

個別の事情を踏まえて、自由財産と認められる範囲が拡張される可能性もあります。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00225.html

職業や居住などの制限を受けない

自己破産の場合、手続きが開始されると、

  • 保険募集員
  • 弁護士
  • 税理士
  • 後見人

などになれないという制限があります。

また、破産管財人が選任された場合は、次のような制約を受けます。

  • 裁判所の許可なく転居や長期の旅行ができない
  • 郵便物が破産管財人に転送される場合がある
  • 破産管財人に対して財産状況などの説明義務を負う

https://www.courts.go.jp/nagoya/saiban/tetuzuki/l4/Vcms4_00000280.html

個人再生の場合はこのような制約の影響を受けません。

返済の督促が停止する

貸金業法21条では、貸金業を営む者やその委託を受けたものは、債務者が債務の処理を弁護士・弁護士法人・司法書士・司法書士法人に委託し、委託者から通知を受けた場合は、正当な理由なく債務者へ督促してはいけないと決まっています。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=358AC1000000032#Mp-At_21

従って、個人再生の手続きを開始した場合に弁護士や司法書士から貸金業者に受任を通知すれば、督促を受けることはなくなります

個人再生のデメリット

個人再生にはどのようなデメリットがあるかも見ていきましょう。

借金はゼロにはならない

自己破産の場合、免責不許可事由がある場合や免責の対象とならない債務を除けば、債務の返済から逃れられます

一方、個人再生の場合、借金は減額になるものの、数年かけて借金を返済することとなり、借金がゼロにはなりません

また、自己破産と同様に、罰金や税金などの支払いは免除されません。

資産を持っていると、返済額が思ったより減らないことも

換金すると大きな金額になる資産を持っている場合、可処分所得の2年分や最低返済額よりも清算価値総額が大きく上回ってしまうことがあります。

その結果、思ったよりも返済額を減らせない可能性もあります。

将来受け取る退職金も、財産に評価される

退職金制度がある会社に勤めている場合、現時点で受け取っていないのであれば財産にカウントされないと思いがちですが、再生計画を裁判所に提出する際は将来受け取る退職金についても考慮されます

https://www.courts.go.jp/oita/vc-files/oita/file/saimuseirihouhou.pdf

どの程度が現在の財産になるかは裁判所が判断するため、詳しく知りたい方は司法書士事務所・弁護士事務所などにご相談ください。

保証人の返済義務は変わらない

民事再生法177条では、再生計画は、債権者が債務者の保証人に対して有する権利には効力が及ばないと定められています。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=411AC0000000225_20200401_501AC0000000002#Mp-At_177

個人再生は、全ての債権者に対する返済総額を少なくする制度(https://www.courts.go.jp/sendai/saiban/tetuzuki/kozinsaisei/index.html)ですので、知人などに保証人になってもらった借金がある場合は、保証人にも個人再生手続きをしてもらわなければいけない可能性があります。

氏名や住所などが官報に掲載される

民事再生法では、裁判所に対して、個人再生の手続きを開始したこと、手続きが終了したことを官報で公告するよう定めています。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411AC0000000225#Mp-At_10

官報とは政府が国民に公的な情報を伝えるもので、国立印刷局・東京都官報販売所での掲示とインターネット(https://kanpou.npb.go.jp/)で配信されています。

個人再生に関する公告では、債務者の住所氏名や、個人再生の手続に関する情報が掲載されます。

信用情報に個人再生手続をしたことが載ることも

貸金業者は、借金の審査を効率化するために、信用情報機関を通じて与信に関する情報を共有しています

個人再生手続きをしたことも信用情報として登録され、貸金業者の間で共有される場合があります。

登録される期間は信用情報機関によって異なりますが、例えば全国銀行信用情報センターでは官報掲載情報が7年間登録されます。

https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/privacy/

クレジットカードに関する信用情報などを保有するCICでは、現在では官報掲載情報の収集を中止しています。

https://www.cic.co.jp/faq/detail/cre/cre01/002585.html

個人再生の手続きの流れとは

個人再生のメリット・デメリットが分かったところで、手続きの流れを見ていきましょう。

詳細については裁判所による解説も参考にしてください。

https://www.courts.go.jp/sendai/saiban/tetuzuki/kozinsaisei/index.html

1. 司法書士や弁護士に債務整理を依頼

個人再生の手続きは作成する書類が多く、裁判所は個人で進めず司法書士や弁護士に依頼することを勧めています。

https://www.courts.go.jp/nagoya/saiban/tetuzuki/minzi_kojin_mositate01/index.html

司法書士事務所や弁護士事務所に相談して、手続きを依頼する専門家を選びましょう。

専門家を選んだら、受任通知を送ってもらうことで返済の督促が止まります

2. 個人再生の申し立て

個人再生の申し立てに必要な、

  • 申立書
  • 陳述書
  • 財産目録

などと手続き費用を用意して、裁判所に提出します。

その後、裁判官による面接や個人再生委員の選定を経て、個人再生手続きの開始が決定されます。

3. 再生計画の提出

個人再生の手続きの開始が決められたら、

  • 債権の調査
  • 財産の調査

などを踏まえて再生計画案を作り、裁判所に提出します。

裁判所は、提出された再生計画案を債権者に送付し、書面決議か意見聴取をします。

4. 再生計画の認可・不認可を決定

再生計画について債権者・個人再生委員から異議が出なければ、再生計画案が決まります。

5. 認可決定の確定

再生計画案の認可が確定したら、再生計画に従って返済が始まります。

申立に必要な書類、費用について

個人再生の申し立てに当たって主に必要な書類は次の通りです。

  • 申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 添付書類(源泉徴収票、給与明細、財産目録、戸籍謄本、住民票など)

また、代理人弁護士がいれば約30,000円、いなければ約215,000円裁判所に納めなければいけません

個人再生で債務整理する場合に、過払い金は請求できるのか

個人再生で債務整理をする場合に、条件を満たしていれば貸金業者から過払い金を取り戻すことで借金を減らせる場合があります

過払い金とは

消費者金融やクレジットカード会社からお金を借りたら、借入金の元金の返済とともに利息を支払うことになります。

借入時の金利には法律で上限が決まっており、2010年までは以下のように定められていました。

  • 利息制限法・・・金利の上限は、年15〜20%
  • 出資法  ・・・金利の上限は、年29.2%

また、利息制限法を超えた金利でお金を貸しても罰則がありませんでした。

このような法律の元では、貸金業者は儲けを増やすために高い金利でお金を貸そうとするため、貸出金利が「利息制限法の上限を超えるが、出資法の上限以下」の金利(グレーゾーン金利)となることがよく発生していました。

そもそも罰則が無いとはいえ、利息制限法を超えた金利で利息を支払わせることには違和感があります。

利息制限法の上限金利を超えた利息の支払いは無効ではないかという訴訟も数多く起こされていました。

最終的に、2006年に最高裁が「グレーゾーン金利でとった利息は無効」という判決を出し、お金を借りた人は、グレーゾーン金利による利息の返還を貸金業者に請求できることになりました。

このお金が「過払い金」と呼ばれるものです。

なお、2010年6月には、出資法の上限金利が引き下げられたため、グレーゾーン金利でお金を借りることは無くなりました。

出資法の改正後の新たな契約においては、過払い金は発生しません

過払い金を取り戻しながら個人再生を進める方法とは

過払い金を取り戻すには、

  • 貸金業者に取引履歴を請求する
  • 過払い金の金額を計算する
  • 貸金業者に請求・返還交渉を行う

上記のような流れで進みます。

個人再生では、再生計画を作る際に借金の金額を調査しますので、過払い金の請求を並行させる場合は借入金額の調査の中で一緒に調査してしまうのが効率的でしょう。

その後、貸金業者に対して過払い金を取り戻し、清算価値総額に取り戻した過払い金の金額を加えたうえで、再生計画を作り、裁判所に認可してもらうことになります。

貸金業者との交渉で不利にならないようにする

対象となる貸金業者との交渉においては、こちらにとって不利となる提案を受け入れないように注意が必要となります。

司法書士などの意見を仰ぎ、円滑に進めるようにしましょう。

個人再生以外の債務整理の方法

最後に、個人再生以外の債務整理の方法についても簡単にまとめます。

任意整理

任意整理は、裁判所を使わずに当事者間の話し合いで返済方法を決める方法です。

話し合いに応じてくれる債権者であれば柔軟な返済計画を組めますが、話し合いに応じてくれない債権者とは債務整理を進められないデメリットがあります。

特定調停

特定調停は、裁判所が選んだ調停委員に仲立ちしてもらって債権者と債務者で返済計画を作る方法です。

不要な費用を抑えられますが、借金をしている全ての貸金業者の合意が必要で、ハードルがやや高い方法と言えるかもしれません。

自己破産

自己破産は、必要最低限の財産以外を処分して、手続き完了後はほぼ全ての借金の返済の免除を受ける方法です。

借金を大きく減らせる可能性がある一方で、多くの財産を処分する必要があること、資格や居住地などの制約を受ける可能性もあります。

借金整理のお悩みは、中央事務所にご相談ください

借金返済に悩まれたときは、専門家の力を借りるのが早期解決の近道です。

中央事務所では、債務整理の知識と実績が豊富な専門家が、借金のお悩みをしっかりとお聞きします。

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本記事の監修/司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤 竜郎

中央事務所はお客さまのお悩みに寄り添い、常にお客さまの目線に立ってアドバイス、解決するためのお手伝いをさせていただきます。 借金、過払い金請求のことでお悩み、お困りの方、ぜひお気軽に中央事務所にご相談ください。

伊藤 竜郎
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