「ひょっとしたら過払い金があるかも」と思っていても、その具体的な金額が分からなければ、なかなか行動には移せません。
そのため過払い金調査を行って、「自分に過払い金請求の権利があるのか」、「そもそも過払い金が発生しているのか」を知らなければなりません。
過払い金調査には、シミュレーターを使う方法、引き直し計算をする方法、そして司法書士や弁護士に依頼する方法の3つがあります。
この記事では、過払い金が発生する仕組みを説明したうえで、それぞれの方法に対するメリットや注意点を解説します。
過払い金請求には期限があるため、早めの調査が大切です。無料確認なども活用して、まずは過払い金請求への一歩を踏み出しましょう。
過払い金とは?
過払い金とは、簡単に言うと支払い過ぎた利息のことです。
ではなぜ、支払い過ぎた利息が生まれるのか。それは、グレーゾーン金利と呼ばれる法律の抜け穴が関係しています。
グレーゾーン金利とは、利息制限法が定めている金利と出資法が定めている金利との上限の差によって生まれた金利です。当時は貸金業規制法のもとで、このグレーゾーン金利は債務者が利息として任意で支払ったものとされていました。しかし、2006年の最高裁判所の判決によって、このグレーゾーン金利が、債務者の自己の自由な意志で支払ったものと認められないとされました。
これによりグレーゾーン金利にあたる分が、支払いすぎていた利息とされ、過払い金と呼ばれるようになりました。その後、2010年に出資法は年20%に改正されたためグレーゾーン金利は実質的になくなりました。
貸金 | 利息制限法 | グレーゾーン金利 | 出資法 |
---|---|---|---|
10万円未満 | 年20% | ← この差が過払い金 → | 年29.2% |
10~100万円未満 | 年18% | ← この差が過払い金 → | 年29.2% |
100万円以上 | 年15% | ← この差が過払い金 → | 年29.2% |
過払い金調査で分かること
過払い金調査をすることで、過払い金額や過払い金を請求する権利があるかどうかを知ることができます。そもそも過払い金が発生していなければ、請求することはできません。自分の中で心当たりがあって気になる場合は、まずは過払い金調査をしてみましょう。
そもそも過払い金が発生しているか
過払い金調査で、自分に過払い金の請求が発生しているかどうかを調べます。過払い金調査では、過払い金額や過払い金返還請求の権利の有無が分かります。
貸金業者との取引履歴を一目見ただけでは、それで過払い金が発生しているかどうか分かりません。取引期間や取引内容を精査して、初めて過払い金の有無が分かります。また、借金返済に充当されることで、実際はもっと早くに完済が終わっていて、無駄に支払いを続けていたことが判明する場合もあるため、過払い金調査は大切です。
請求できる過払い金の金額はどれくらいなのか
過払い金として請求できる金額を知るためには、引き直し計算が必要になります。
引き直し計算では、利息制限法の上限金利を超えたものを返済したものと考え、元金を減らしていくという計算を繰り返し、借金の元金や利息がどうなっているかを調べます。
この計算は素人が行うには少し難しく、簿記のプロでもない限りは、司法書士などの専門家にお任せして正確な値を出してもらったほうが賢明でしょう。
過払い金を請求することができるのか
過払い金調査によって、過払い金を請求できる権利があるかどうかが分かります。過払い金の返還請求をするには以下の条件があります。
- 2010年6月17日以前にお金を借りていた
- グレーゾーン金利で利息を支払っていた
- 最後の取引から10年以内である
これら3つの条件をすべて満たさなければ、過払い金請求はできません。
期間に関する条件は取引履歴を見ればわかりますが、グレーゾーン金利で利息を支払っていたかどうかは、引き直し計算が必要になるため、過払い金の調査をしなければわかりません。
過払い金調査に必要なもの
過払い金調査では、正確な時期や取引金額を知るための資料が必要になります。
特に貸金業者との取引履歴と、引き直し計算書は大切です。ここではそれぞれの資料を集める際のポイントを解説します。
貸金業者との取引履歴
貸金業者との取引履歴が自分の手元になければ、直接貸金業者に取引履歴を請求しましょう。
電話で請求するのが一般的ですが、その際に目的を聞かれても「過払い金」と言ってはいけません。
なぜなら、貸金業者からしてみれば、できれば過払い金の請求には応じたくないからです。
「過払い金」が目的であることを悟られてしまうと、対応がスムーズにいかなくなる恐れがあります。純粋に取引履歴が気になって知りたいという気持ちを伝えておくのが無難です。
取引履歴を基にした引き直し計算書
貸金業者から取引履歴を取り寄せたら、それを元に引き直し計算書を作成します。
引き直し計算をすることで、本来払うべき利息との差額がある程度分かります。
引き直し計算には、利息制限法に基づいた上限金利を適用した計算が必要です。
この計算は、自分だけで行うには難しい作業です。
また、計算が本当に間違っていないか確かめる方法もありません。
そのため過払い金の計算ソフトを活用したり、司法書士などの専門家に依頼したりするのが一般的でしょう。
実際に過払い金を調査する方法
過払い金を調査する方法は3つです。
自分で行う場合は、過払い金シミュレーターを利用する方法と、自分で引き直し計算をする方法があります。
そして司法書士のような専門家に相談する方法です。
どの方法を選ぶかは、簡単に過払い金額を把握したいのか、確実に過払い金請求をしたいのかでも変わります。
それぞれのメリットや注意点を把握し、自分に合った方法を選びましょう。
過払い金シミュレーターなどを利用する
自分で過払い金を調査する過払い金シミュレーターは、司法書士などの事務所ホームページに掲載されており、気軽に利用できるのが特徴です。
借入金額と借入期間を入力するだけで、おおよその過払い金額を算出してくれるので便利です。
ただし、このようなシミュレーターはあくまでおおよその金額を知るためのものです。
実際に請求するとなれば、取引履歴を元に正確な引き直し計算をしなければなりません。
とりあえず確認したい時に使うものと考えましょう。
過払い金は一般的に
どれくらい発生しているのか?
金額と期間で試算してみましょう。
おおよその金額をご入力ください
おおよその期間をご入力ください
※この計算機は出資法旧上限29.2%で利息のみを返済した場合を想定し作成しています。実際に同額の過払い金が発生していることを保証するものではありません。またお借り入れの時期により、過払い金が出ない場合もあります。当該結果が実際に発生している過払い金の額に相違している場合や、これらの情報等に起因してお客様または第三者が損害を被った場合についても、当法人は一切責任を負いません。
取引履歴を基に自分で引き直し計算をする
自分で引き直し計算を行うには、利息制限法を理解する必要があります。
一例を取り上げてみます。
(例)50万円の借り入れで毎月2万円を返済していた場合 適用金利が29.2%であれば、利息制限法の18%の金利に戻す必要があります。 誤った利息 → 50万円 × 29.2% ÷ 12か月 = 12,166円20,000円 – 12,166円=7,834円を、 元本返済に充てていたのが、 正しい利息 → 50万円 × 18% ÷ 12か月 = 7,500円20,000円 – 7,500円=12,500円も、 元本返済に充てられることがわかる |
この計算は一回目の返済だけを例に取り上げましたが、2回目以降は引き算によって値が変動していくため毎回計算式は変わります。
また10万円を下回ると、利息が18%から20%に途中で変動することも考慮しなければなりません。
これらを続けていくことによって、本来であれば返済がもう少し早く終わっていたことが判明します。
その場合、余分に支払いが発生していた期間分も過払い金の対象となります。
このように、単純な利息の差額だけでなく、毎月の返済額や返済期間なども考慮した計算が必要になります。
これを自力で行うのは、なかなか骨の折れる作業で、また計算間違いの可能性も高く、あまり現実的ではありません。
司法書士や弁護士などの専門家へ相談する
司法書士や弁護士といった専門家へ、過払い金調査を依頼するのも一つの方法です。
専門家に依頼することで、過払い金調査で一番厄介なポイントである引き直し計算を、正確に行ってくれます。
また過払い金の請求には、返還交渉も必要です。貸金業者に対して、法的な手段で返還交渉をしなければいけません。
専門家に依頼すれば、これらの交渉もすべて代行してもらえます。法律の知識がない人にとって、必要な書類さえ揃えれば、すべてお任せでやってもらえるのは心強いです。これらの専門家に依頼するときは、電話で無料確認をしてくれるところもあります。
過払い金請求の流れは?
過払い金請求の流れには、必要な書類の用意・作成と返還交渉が必要になります。
以下に、自分で過払い金の返還請求するときと、司法書士や弁護士などの専門家に依頼するときの流れをまとめました。
自分で過払い金請求する流れ | 司法書士や弁護士に依頼したときの流れ |
---|---|
1. 取引履歴の用意(なければ貸金業者に請求) 2. 取引履歴から引き直し計算書を作成 3. 過払い金返還請求書の作成・送付 4. クレジットカード会社等へ返還交渉 5. 過払い金の受け取り | 1. 電話による相談 2. 本人確認を行って正式に依頼 3. 返金までの手続きは基本的にお任せ 4. 過払い金の受け取り 中央事務所の手続きの流れはこちら |
自分で過払い金請求の交渉する場合に注意することは、貸金業者からの提案には応じないことです。貸金業者の話にのってしまうと、上手く言いくるめられて自分に不利な対応をされる可能性があります。過払い金は、条件を満たしていれば法的な手段として、正当に請求できる権利です。
ちなみに、交渉しても返金されない場合は、裁判での取り戻し手続きを行うことになります。
こうしたことを考えると、自分で確実に過払い金を請求するには、法的な知識が十分に必要なことが分かります。
もしも、どの貸金業者と取引があったか覚えていない場合
賃金業者からお金を借りた記憶はあるけど、昔のことで忘れてしまって思い出せないという場合には、信用情報を確認することが大切です。
信用情報とは、クレジットカードやローンの契約履歴や返済状況が記録されたものです。
これは一般的に、金融機関が顧客の信用判断をするときに利用されます。
この信用情報は、自分の情報であれば専門機関に開示請求をすれば知ることができます。信用情報機関には以下のようなものがあります。
- CIC(シー・アイ・シー)
- JICC(日本信用情報機構)
- KSC(全国銀行個人信用情報センター)
ちなみに、クレジットカードや消費者金融に関する情報は、CICやJICCが取り扱っています。
これらの機関で、インターネットや郵送を通じて手数料を支払うことで、開示報告書を受け取ることが可能です。
この開示報告書には、契約内容、利用残高、返済状況などが記載されています。
そのため、昔の取引記録を紛失したり忘れてしまったりした場合でも、この信用情報を元に引き直し計算ができます。
過払い金請求は専門家へ依頼したほうが良いのか?
過払い金請求は、専門家に依頼したほうが正確な手続きができるため安心です。
専門家に依頼することで以下のようなメリットがあります。
- ややこしい引き直し計算書を作成しなくてもよい
- 貸金業者への交渉を代行してもらえる
- 手続きは、ほぼおまかせのため時間を有効活用できる
自分で過払い金請求を行うと、計算間違いや、交渉に必要な資料が分からず困ってしまう可能性があります。
専門家に依頼をすれば、手続きはほぼ代行してもらえるので、ただ待っているだけで過払い金が戻ってくるため精神的にも楽です。
中央事務所へご相談を
過払い金請求をするには、その最後の取引から10年以内という期限が設けられています。
これは民法の消滅時効で定められているため、10年を過ぎると二度と請求することができません。(※2020年の法改正で現在は5年だが、グレーゾーン金利が存在していた時期はそれ以前のため10年が適応されます)
そのため、少しでも貸金業者に借入をした記憶があって、もしかしたら払い過ぎているかもしれないと思ったら、早めに過払い金調査をすることが重要です。
中央事務所では、電話やメールで、過払い金がいくら戻ってくるのかを無料確認しています。
過払い金の請求は、法律で認められた正当な権利です。
正しい過払い金調査を行って、払い過ぎていたお金を、確実に自分の手元に戻しましょう。
本記事の監修/司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤 竜郎
中央事務所はお客さまのお悩みに寄り添い、常にお客さまの目線に立ってアドバイス、解決するためのお手伝いをさせていただきます。 借金、過払い金請求のことでお悩み、お困りの方、ぜひお気軽に中央事務所にご相談ください。

投稿日: 2025年5月2日
更新日: 2025年5月29日