債務整理(借金整理)を依頼していた専門家に辞任されてしまった場合、もう一度依頼することはできるのでしょうか?
同じ専門家や事務所にもう一度依頼することもできますが、ほとんどの場合、引き受けてもらえないでしょう。その場合でも、別の専門家に依頼して手続きを進めることは可能です。
辞任によって受ける影響は大きいため、辞任されたらどのようなリスクを負うのかということや、その対処方法について解説します。また、再び辞任されることがないよう注意点もお話します。
債務整理手続き中に辞任されたらどうなる?
債務整理の手続き中に辞任されてしまったときは、なるべく早く新たな専門家に相談をして債務整理を再開しましょう。委任していたことで得られていた効果がなくなってしまうため、たちまち困ることになります。具体的には、下記のリスクを負うことになります。
- ・借金取り立ての連絡がくるようになり、一括請求の督促が再開される
- ・そのままにしていると、法的手続きを取られる可能性が高くなる
辞任通知送付の意味
債務整理の依頼を受けた専門家は、その手続きに必要な交渉や代理人としての法的な行為、書類作成の代行などを担ってくれます。しかし、何らかの理由によって専門家がやむなく辞任してしまうことがあります。
その場合、専門家は、お借入先に対し、依頼人との契約(委任関係)を解消し、以後は代理人ではなくなり手続きも行わないという意思表示を、辞任通知を送付することによって行います。
最初のリスクは督促が再開されること
専門家が辞任通知を送付すると、その通知を受け取ったお借入先は手続き開始前の状態に戻ってすぐさま督促を再開します。依頼後はパッタリとおさまっていた督促ですが、代理人が退くと同時に連絡が入り始めます。
というのも、代理人が就任しているのにお借入先が正当な理由なく債務者本人に督促を行うことは、禁じられていますが(貸金業法二十一条)、辞任通知には「もう債務者の代理人ではない」ことが明言されているため、直接の取り立てを再開することに問題はなくなるからです。
任意整理で手続中の場合
任意整理の示談交渉前に辞任された場合、ご自身でお借入先と交渉を進めることは可能です。しかし、交渉も含め専門家に任せたいと依頼された方がほとんどでしょうから、途中からのそれも慣れない交渉に戸惑いを感じる方は少なくないでしょう。
また、お借入先が専門家相手の交渉と同じ条件で示談交渉に応じてくれる可能性は、低いと言わざるを得ません。
一方、示談交渉後に辞任された場合は、すでに示談した内容がなくなるわけではありません。その時点で返済を2か月分滞納していなければ、そのまま返済を続けることが可能であることがほとんどです。
2か月以上滞納して期限の利益を喪失している場合には(期限の利益とは、借金のある人がその期限の日までは返済をしなくてもよいという権利(利益)のことで、期限の利益を喪失すると一括返済を求められる場合があります。)、和解書に基づき損害遅延金と残借金の一括請求をされる可能性があります。
自己破産や個人再生で手続き中の場合
自己破産や個人再生手続き中に辞任された場合、手続きが頓挫してしまうことになります。これらの手続きは非常に難解なため、途中からご自身で行うのはかなり無理があるでしょう。
手続きの流れを理解し、必要な書類を揃えて裁判所や破産管財人とのやりとりを行うなど、決められた通りの手続きを期限内に行うことができなければ、最終的には手続きが失敗に終わってしまうでしょう。
新たな専門家に依頼するときのポイント
新たに依頼できる専門家を見つけた場合、依頼するときに気をつけたいポイントを解説します。
預けている書類は早めに返却してもらう
前任の専門家に預けている書類は早めに返却してもらいましょう。新たに別の専門家に債務整理依頼するときに、これらの書類があれば手間も時間も短縮できるため、手続きを進めやすくなるからです。
辞任通知の送付時期を確認する
辞任通知の発送がまだの場合は、送付時期を相談して早めに発送してもらうようにしましょう。前任の専門家に辞任通知を送付してもらわないと、新たな専門家に受任通知を送付してもらうことができないからです。辞任通知と受任通知がスムーズに送付できるよう、それぞれの専門家に相談するのが望ましいでしょう。
辞任された理由や経緯を最初に話しておく
新たに委任する専門家には、辞任された理由や経緯を最初から正直に話しておきましょう。もちろん積極的に話したくないことかもしれませんが、手続きを進めていく中でわかってしまう可能性は高いですし、隠していたと思われて信頼関係が築けないと判断されてしまうと、結果的に良いことはありません。
辞任されるケースとは
そもそも、なぜ一度依頼を受けた専門家に辞任されてしまうのでしょうか?理由はいくつかありますが、事前に確認することで辞任される可能性を少なくしましょう。
信頼関係が築けなくなり辞任
依頼人と連絡がつかない、必要書類をなかなか揃えてくれない、費用の支払いが連絡なく滞るなど、信頼関係が築けないと判断されると、今後責任を持って進めることが困難と判断して辞任されるケースは少なくありません。
司法書士の業務範囲の制限による辞任
司法書士の業務範囲の制限によって辞任となるケースも稀にあります。認定司法書士は、債権額140万円以下の任意整理を取り扱うことができる(司法書士法3条1項7号、裁判所法33条1項1号)とされていますが、債務整理手続きの中でその範囲を超えることが判明した場合については、業務を行うことができなくなります。
もちろん、想定の上で相談を受けて手続きを進めるので、途中で辞任となるケースは稀といえます。もしそのような状況になった場合でも、引き継げる専門家を紹介してもらえることが多いため、不安に感じる必要はほとんどないでしょう。
辞任されないための対処方法
再び辞任されないためには何に気を付けるべきか、以下で解説していきます。
依頼した専門家としっかり連絡をとる
依頼したその日から、連絡を取れるようにしておくことが大切です。仕事や予定などで連絡が取りにくい期間や時間帯があれば、事前に知らせておきましょう。迅速に連絡が取れるケースでは、互いに無駄や手間が省け手続きも順調に進みます。
時間がないからと無視したり、いつまでも返事がなかったりすると、「連絡がとれない人」とみなされてしまう可能性が高くなります。すぐに電話が取れない場合もありますが、気づいたらなるべく早目に折り返したり、メールを送ったりすることで信頼関係は増すでしょう。
手続きに必要な書類は早めに用意する
債務整理の中でも自己破産や個人再生は、多くの書類を必要とする手続きです。個人的な書類も多く、それらは当事者でしか用意することができません。また、1つの書類を提出してもそれ以外の書類が揃わないために時間が過ぎてしまい、最初の書類も期限切れで使えなくなるということも少なくありません。
普段目にする機会のない書類については、どこでどのように取ればよいのかなど確認して、早めに書類の収集に動きましょう。もし、決められた日に書類が用意できない場合でも、きちんと連絡を入れていつなら提出できそうかなど目処を伝えることで、信頼してもらえるでしょう。
手続き費用は遅れないように支払う
専門家に依頼したことで安心し、その手続き費用の支払いが遅れたり滞ったりすることがあると、信頼関係を築くのは難しくなります。どうしても支払いが難しい月は、理由を話して来月からは必ず支払えるなどの目処をしっかりと伝えましょう。
約束した通りに費用を支払ってもらえないのでは、責任を持って業務を行うことができず、辞任通知を送らざるをえなくなってしまいます。再度の依頼ということで手元の資金が厳しい場合には、最初の相談時点で事情を伝えて、初回〜2回目の支払金額を少なくしてもらうことは可能かなど聞いてみても良いかも知れません。
債務整理を辞任されたら早めに新たな専門家へ相談を
債務整理を依頼していた司法書士や弁護士から辞任されてしまったら、早めに別の専門家を探しましょう。債権者からは、以前よりもさらに厳しい催促を受けることが予想されます。
初回の手続きがうまくいかなかったのは、方針がご自身の状況に合っていなかったという可能性もあります。別の専門家に相談して方針を再検討することが、有効な場合もあります。
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本記事の監修/
司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤竜郎
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投稿日:2023年8月25日