「債務整理(借金整理)と自己破産の違いってなに?どちらを選んだらよいのか?」と悩んでいる方の中には、「債務整理」と「自己破産」のそれぞれが、借金整理の方法だと認識されている場合が少なくありません。
この2つの言葉は、正確には、債務整理>自己破産。つまり、債務整理とは借金手続きの総称で、その中に自己破産という1つの方法があるという関係になります。
今回は、自己破産手続きについて解説するとともに、債務整理(任意整理)と自己破産の手続きの違いについても詳しく述べます。任意整理と自己破産の手続きについてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
債務整理と自己破産の違い
「債務整理」は借金の整理をする手続きの総称です。
債務整理の方法には、主なものとして「任意整理」・「自己破産」・「個人再生」があります。
借金にお悩みの方が、返済できなくなったときの法的な救済手段として「債務整理」があり、「自己破産」はその救済手段の手続きの1つです。
つまり、任意整理も自己破産も、債務整理の種類の1つになります。
債務整理=任意整理?
「債務整理 自己破産」とインターネットで検索される方の中には、「債務整理=任意整理」と理解している方が多いようです。
正確には先に示したとおり、「債務整理」は借金の整理をする手続きの総称を指す言葉になります。
「自己破産」はその整理方法の1つですが、実際には、債務整理=任意整理という理解で説明されていることも多く、その場合は、「債務整理(任意整理)」と記されています。
自己破産とはどんな手続き?
自己破産手続きは、裁判所を介して、原則としてすべての借金について借金の支払いを免除してもらう手続きです。先行きの見えない借金生活を白紙に戻して、収入の範囲で生活できるよう生活の立て直しを計っていきます。
自己破産というとネガティブなイメージが優先されますが、必ずしもそうではなく、むしろ生活再建への究極の救済手段であるとも言えます。現在、いくつかのお借入先から借金をして首が回らない状態である、利息だけ支払う状態を続けていて先が見えない、などの状況にある場合は、検討する価値のある手続きです。
自己破産の手続きの流れ
自己破産には、「破産手続き」と通常並行して行われる「免責手続き」があります。
免責手続きで、免責が認められると借金の支払いが免除され、免責が認められないと借金の支払いを免除されません。
免責されない理由のことを「免責不許可事由」といい、これに該当してしまうと、自己破産をすることが難しくなります。
免責不許可事由には、以下の一例が挙げられます。
- 借金の原因が、浪費やギャンブルである場合
- 財産を隠していた場合
- 一部の人だけに弁済してしまい、ほかの債権者に害を与えた場合
ただし、免責不許可事由に該当している場合にも、裁判所の判断で免責を認めることができます(このことを「裁量免責」といいます)。
免責不許可事由があっても、免責が認められないケースは実際には少数です。
裁判所で進める複雑な手続きである上、免責が認められるためには、適切な対策を行う必要があるので、司法書士・弁護士に依頼して進めることをおすすめします。
自己破産のメリット
自己破産を考えた時、気になるのはその手続きをすることで、どんな影響を受けるのかということです。
気になるメリットとデメリットを、順に解説します。
自己破産のメリット
- 借金の支払いが免除される
- お借入先からの取り立てがなくなる
- 生活に必要な財産は手元に残せる
ほぼすべての借金について、支払いをする必要がなくなることが自己破産の大きなメリットです。借金のお悩みから解放され、生活の立て直しを計ることができます。ご自身が返済を免れても、その代わりに家族が借金を肩代わりすることになるのでは?と心配する方もいらっしゃいますが、家族が保証人や連帯保証人になっていなければ、その必要はありません。
借金をしている間は返済が滞ると、お借入先から督促の連絡が入り続けます。しかし、自己破産の手続中はそんな取り立ても止まります。手続きを専門家に依頼した場合は、依頼して通知を発送してもらえば、原則督促や取り立てがストップします。
自己破産をすると、すべての財産を没収されると思われている方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。自己破産手続きの目的は、生活の再建です。手続きの後も生活ができるように、一定の現金と生活必需品は手元に残せます。
自己破産のデメリット
- ブラックリストに載ってしまう
自己破産をすると、そのことが信用情報に登録されてしまいます(いわゆるブラックリストに載るということです)。そのため、約5~10年間は新たなお借り入れはできなくなりますし、クレジットカードを利用することや新たに作ることも難しくなります。ただし、金融機関のキャッシュカードを作ったり、通常の預貯金取引を行ったりすることは問題ありません。
- 手続きを行ったことが官報に掲載される
国が発行する官報という機関紙に、自己破産手続きを行った人として掲載されます。ただし、一般の人が官報を見る機会はほとんどないと言ってよいでしょう。
- マイホームや資産価値の高い車などは手放さなければならない
生活に必要なお金や家具などは手元に残せますが、それ以外の資産価値のある物は手放すことになります。
- 保証人や連帯保証人がいる場合は迷惑をかける可能性も
手続きを行うとご自身の借金は免除されますが、保証人・連帯保証人には返済義務が残ります。
同時に、保証人・連帯保証人は、債権者から一括請求を求められることになります。必ず自己破産をする前に伝えて、理解をしてもらう必要があるでしょう。
自己破産した後の生活への影響
自己破産の手続きをした場合、その後の生活にどんな影響があるのか?そして同居の家族の生活は変わってしまうのか?・・・気になると思います。
家族の生活や日常への大きな影響は、ほぼありません。具体的に見ていきましょう。
具体的に見ていきましょう。
信用情報へ登録された事故記録はどうなるのか?
ご自身の信用情報には、手続きを行ったことが記録されますが、5~7年程度で記録は抹消されます。事故記録が消えれば、新たなクレジットカードの作成や住宅・車のローン申請も可能になります。
手続きをした後の収入はどうなるのか?
自己破産後の収入は、もちろん今後のご自身の生活のために使えます。
手続きを専門家に依頼した場合はその準備の過程で、収入の範囲で生活する予算や見通しについて、一緒に考えてアドバイスをくれるはずです。生活再建に向けて、心強い一歩となるでしょう。
官報に名前が載ったらどうなるのか?
自己破産したという情報は、官報に公開はされますが、一般人が目にする機会はほとんどないと言えます。また、官報は毎日発行されるものではなく、いつ発行の官報に載るのかも、正確には関係者しかわかりません。
任意整理と自己破産のどちらを選ぶ?
「任意整理」と「自己破産」、どちらも「債務整理」の種類ですが、手続きの内容や影響、そしてその効果には大きな違いがあります。任意整理と自己破産のどちらにしようか迷っているという方のために、任意整理と自己破産の違いを解説します。
任意整理と自己破産の違い
任意整理と自己破産の違いを、おおまかにまとめたものが以下の表です。信用情報へ登録されるという点は同じですが、それ以外の事柄については各々メリット・デメリットがあります。
自己破産 | 任意整理 | |
---|---|---|
裁判所の関わり | 裁判所を通すため、複雑で時間がかかる | 裁判所の関わりはなく、お借入先と直接交渉 |
整理対象の借金 | 原則としてすべての借金が対象※1 | 整理対象の借金を選べる |
減額・免除の内容 | 原則として全ての返済が免除 | 基本、元本はそのままで、利息を減額してもらう |
手続後の返済 | 返済の必要なし | 月々の返済は軽くなる(元金を3~5年かけて返済) |
信用情報への登録 | 事故登録あり | 事故登録あり |
財産 | 20万円以上の財産は処分の対象となる(自宅・車・保険など) | 財産の処分は必要なし |
必要な書類 | 申立に必要な住民票や通帳、給料明細など多くの書類 | ほとんど不要 |
手続きにかかる期間 | 半年~1年程度(裁判所での審問あり) | 数か月程度。その後3~5年の返済期間あり |
借金の原因 | 問題になるケースあり | 特に問われない |
官報 | 官報に載る(2回) | 官報に載らない |
保証人への影響 | 影響あり 保証人に返済義務が生じる | 影響を防ぐことが可能(保証人のいる借金を整理対象から除く) |
家族に知られる可能性 | 同居の家族は可能性が高い | 可能性は低い |
おすすめする条件 | 借金を返済できる可能性が、ほぼない | 借金の額が比較的小さい |
自己破産を選ぶべきケース
借金総額が大きすぎて返済ができない、おおよそ財産と呼ぶものがなく、換金して返済することもできない、収入のめどが立たない、などの状況にある場合には、自己破産を選ぶことが適切と考えられます。
一方、任意整理は、借金の額が比較的少ない場合に向いています。
借金の額は多いが、自己破産は生活への影響が大きいので回避したいという場合には、民事再生(個人再生)があります。
次に民事再生に向いているケースと、メリットを紹介しますので、民事再生により破産を回避することができるかどうか検討してみましょう。
民事再生(個人再生)とは
民事再生(個人再生)手続きは、裁判所で行い、原則としてすべての借金について減額をする手続きです。
裁判所が許可した「再生計画」に従い、減額された借金を返済します。
任意整理と比べると、最大で10分の1ほどまでに借金が減額できるので、借金の額が多い場合に向いています。
また、自己破産の場合の免責が認められないある場合であっても、最低の返済額を返済する見通しができれば民事再生が利用できます。
破産と同様に、財産を原則として換金して債権者に分配する必要がありますが、民事再生では持ち家を「住宅ローン特則」により手続きから外すことが可能です。
適用には条件がありますが、そのまま持ち家に住むことができる可能性があります。
借金を大きく減らし、住宅ローン特則が使える場合には、民事再生のメリットがあります。
裁判所で進める複雑な手続きであることから、破産の場合と同様に、司法書士・弁護士に依頼して進めることをおすすめします。
債務整理(任意整理)と自己破産でお悩みの方は専門家にご相談を
借金返済に悩まれたときは、専門家の力を借りるのが早期解決の近道です。
中央事務所では、過払い金の知識と実績が豊富な専門家が、あなたのお悩みをしっかりとお聞きします。
ご相談時にお話しをよく伺った上で、あなたの状況にあった解決方法をご提案させていただきます。
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本記事の監修/
司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤竜郎
中央事務所はお客さまのお悩みに寄り添い、常にお客さまの目線に立ってアドバイス、解決するためのお手伝いをさせていただきます。
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投稿日:2023年5月31日
更新:2024年3月28日