一度、債務整理(任意整理)をして返済を再開したけれど、その後事情が変わって支払えなくなることがあります。その場合は、どうすればいいのでしょうか?任意整理後に支払えなくなった場合は、再和解を行うことができます。
再和解とは、任意整理をした後、もう一度任意整理をやり直す手続きです。でも、2回目も相手は応じてくれるのか?再和解できない場合はどうなるのか?などの疑問や、手続きのポイント・注意点などについて解説します。
任意整理をして支払いができなくなったらどうなる?
任意整理では、一般的に2か月分の支払いを延滞すると、債権者から残額を一括で支払うよう請求されてしまいます。このことは、債権者との間で交わした和解書に記載されています。
また、一括請求されると、完済できるまでの間ずっと遅延損害金がかかり続けることになります。任意整理をした後に支払いができなくなった場合、そのまま放置するとこのようなリスクを負うことになります。
一括で返済するよう請求される
延滞をそのままにして、(一般的には)2か月が経過すると、期限の利益を喪失した状態になります。すると、債権者から「全額を一括で返済するように」という通知が届きます(期限の利益喪失通知)。
「期限の利益」とは、決められた支払期日までは支払いを猶予される(返済をしなくてよい)という債務者(借りている人)の利益のことです。しかし、返済がされなかった場合は、この期限の利益を失ってしまいます。期限の利益を失うとそれまでの分割払いは認められなくなり、債権者は残金全額を請求することができるようになるのです。
たいていは「返済が2回分滞ると期限の利益を失い、残額を一括で支払う」という条項になっていますが、中には「1回でも返済が滞ると残額を一括で支払う」という内容の場合もあるため、注意が必要です。
返済するまで遅延損害金がかかる
期限の利益を喪失すると、借金を一括で請求されるだけではありません。返済するまで借金残高の全額に対して、遅延損害金がかかり続けます。
任意整理では多くの場合、遅延損害金が年率14.6%~20%で加算されます。遅延損害金は、下記の式に数字を当てはめると計算することができます。
- お借入額×年率×滞納日数÷365日=遅延損害金
たとえば、100万円の借金があり支払期日から2か月経った場合、年利20%とすると3万2876円もの遅延損害金が加算されることになります。
何とか資金を用意して返済をしようとしても、遅延損害金が付加された状態では、返済しても借金が減らないという状況に陥ってしまいます。
差し押さえを受ける可能性も
延滞が続いても放置していると、最終的には差し押さえを受ける可能性も出てきます。債権者は、銀行預金や給料などの財産に対して、裁判所を通した強制執行の手続きをとることで回収しようとします。
では、どうやって預金を差し押さえられるのでしょうか?まず、債権者は裁判所に訴訟を提起するなどします。すると、ご自身の自宅に裁判所から通知が届きますが、そのまま答弁書を提出せず、出頭もしないでいると、一方が不在でも裁判所によって判決が出されてしまいます。
債権者は確定判決という「債務名義」を得ることで、財産を差し押さえることができるようになるのです。裁判所から通知や書類などが届いたらそのままにせず、すぐに内容を確認して専門家に相談するなどしましょう。
任意整理後の再和解は難しい?
任意整理後に支払いを延滞してしまったけれど、もう一度返済を再開したい。そのような場合は、再和解という方法があります。でも、一度任意整理を行っているのに、また再和解をすることはできるのでしょうか?
任意整理は、債権者との話し合いで借金の返済額や返済回数の変更に応じてもらう手続きです。回数制限などのルールはありません。しかし、再和解への債権者の対応は、1度目の任意整理より厳しいものになることは事実です。
債権者が応じれば再和解は可能
債権者との間で合意ができるならば、再和解は可能です。「やむを得ない事情により再和解するが、今後は返済できそうだ」と納得を得られる場合や、「これまでは遅れることなくきちんと返済をしてきたから」と信頼してもらえるようなケース、また、返済資金の見込みがあるなどの場合には、再和解の合意が得られやすいと言えるでしょう。
ただし、中には会社の方針として、再和解を承諾しないところもあります。再和解は、まさに債権者次第と言えるでしょう。
ただし再和解の条件は厳しくなる傾向が
合意が得られ再和解ができたとしても、これまでより厳しい条件になる傾向があります。毎月の返済額が以前より上がってしまったり、再和解までの遅延損害金はカットしてもらえなかったりというケースも少なくありません。
そのため、「現在、任意整理で示談した金額を支払っているが、毎月の返済額を下げてもっと余裕を持って返済したい。」などの理由で再和解を依頼するのはおすすめできません。
再和解できないケースもある
再和解できないケースもあります。詳細については後の章で述べますが、債権者側の事情による場合もあれば、こちら側の事情でできない場合もあります。また、再和解できてもその支払いの見通しが立たないようであれば、そもそも再和解すること自体を検討し直すべきである場合もあります。
再和解を検討するケース
任意整理の返済中で、下記のようなケースにあてはまる方は再和解を検討する必要があるかも知れません。
示談交渉後に2回以上延滞してしまった
返済が苦しくなり、2回以上延滞してしまった場合は、早急に再和解を専門家に相談しましょう。既に解説しているように、任意整理では2回以上支払いが滞ると残借金を一括請求されてしまいます。
支払いが困難だからとあきらめ、ただ日にちを延ばしても何もよいことはありません。その後に想定される裁判に直面しないためにも、専門家に相談しましょう。
返済を続ける見通しが立ちそうにない
返済が苦しくなって、今後支払いを続ける見通しが立ちそうにない。そんな状況になったら、早めに再和解を検討しましょう。なぜ返済の見通しが立たないのか、他に方法はないのかなど、お一人で考えるよりも専門家と一緒に考える方が解決につながりやすくなります。
1回目の示談交渉は専門家に依頼していない
現在支払い中の任意整理は、ご自身で債権者とやりとりを行ったという方もいらっしゃるでしょう。いざ支払いが始まると思いのほか苦しく、悩まれることもあるかも知れません。
中には、専門家が介入した場合と異なる条件で示談交渉をしているケースもあります。1度専門家に示談交渉内容を確認してもらうことで、再和解という解決方法が見えてくる可能性もあります。
再和解出来ないのはどんな場合?できない場合はどうする?
再和解を希望してもできないのは、どのような場合でしょうか?具体的に見ていきましょう。
債権者の会社による方針で応じてもらえない
債権者側の会社による方針で、再和解できないケースもあります。希望条件が債権者側の社内基準から外れている、そもそも再和解には応じないというルールである、他にも、社内稟議にあげたが通らなかったという場合もあります。
収入が大幅に減少もしくは借金総額が大幅に増加した
任意整理後にリストラされたり病気になったりして、ご自身の収入が大幅に減少してしまうことがあります。また、予定外の大きな出費が重なったため、お借り入れが増えてしまったというケースもあります。
リストラや病気などで事情の変更を余儀なくされた場合は、説明することで債権者の同意を得られる場合もありますが、それでも今後の収入の見込みが立たないような場合には、再和解に応じてもらうのは難しいでしょう。もちろん、個人の事情で借金が大幅に増えてしまった場合なども、返済の見込みがないと判断される可能性が高くなります。
最初の示談交渉から月日が経っていない
最初の任意整理から月日が経っていない状況で再和解の交渉をしても、信用面から再和解に応じてもらいにくくなります。
これまで度々延滞をしている
すでにこれまでの返済で度々延滞をしている場合も、信用度が低いため、再和解に応じてもらえる可能性が低くなります。
難しい場合は、個人再生や自己破産という選択肢も
どうしても再和解が難しい場合には、個人再生や自己破産という選択肢も検討すべきです。
再和解を成功させるポイントとは
では、再和解成功のポイントをまとめてみましょう。
やむを得ない事情を債権者にきちんと説明する
やむを得ない事情により再和解を希望する場合は、債権者が納得できるようきちんと事情を説明することが大切です。
どんな事情にせよ、一度合意した条件で返済ができなくなったことで、本当に返済してくれるのかと債権者が心配になるのは仕方のないことです。事情を説明すると同時に、再和解後は必ず返済していけるという見通しを、きちんと伝えましょう。
家計を見直し・援助を受けるなどして返済資金を用意する
返済を続けるのが難しい場合には、現在の家計を見直したり、家族や親族の援助を受けたりするなどして返済資金を用意するという方法もあります。
ご自身ではぎりぎりだと考えていた家計も、専門家の視点によるアドバイスを受けることで、余剰ができるかも知れません。また、家族や親族に相談することで、資金の援助を受けられることになった例も少なくありません。
債務整理の経験が豊富な司法書士や弁護士に依頼する
債務整理手続きは、ほとんどの司法書士や弁護士に相談することが可能です。しかし、「再和解が可能な状況か」、「再和解をすべきなのか」、また「他の選択肢を選ぶべきか」などの適切な判断は、難しいところです。そんなときは、債務整理の経験が豊富な専門家に相談することが大切です。
任意整理の返済が苦しい方はご相談を
現在借金返済が苦しいと感じている方は、司法書士などの専門家に相談してみましょう。滞納期間が長くなればなるほど、再和解は難しくなります。また、放置すればするほど解決へのハードルも高くなってしまいます。再和解を考えている方はお早めにご相談ください。
債務整理の知識と実績が豊富な中央事務所は、借金のお悩みを安心してご相談いただける事務所です。弊所では、ご相談時にお話しをよく伺った上で、ご自身の状況にあった解決方法をご提案させていただきます。WEBから、24時間いつでも受付しています。
本記事の監修/
司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤竜郎
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投稿日:2023年7月31日