債務整理(借金整理)をすると官報にご自身の名前が載ってしまうと聞くと、手続きに躊躇される方がいらっしゃるかも知れません。「債務整理を考えているけれど、周りの人に知られるのは嫌。」「債務整理をした人は、全員官報に名前が載るの?」などの不安を抱え、借金返済に困りつつも相談を迷われている方も、少なくないのではないでしょうか?
確かに、債務整理の種類によっては、手続きをした方の名前や住所が官報に掲載されます。しかし、周囲にそれほど大きい影響はないと言えるでしょう。また、任意整理の場合、官報には掲載されません。
そもそも官報とは何のためにあり、なぜ個人情報が掲載されるのかということや、実際に官報を見る可能性があるのはどんな人か?など、詳しく解説します。
官報とは
官報とは、法令の制定や改定などの情報を知らせる公的な手段として、国立印刷局が発行している政府の冊子です。法令に関する事以外に、裁判所の決定事項なども掲載されます。国が発行する新聞と考えるとわかりやすいかも知れません。
官報にはなにが掲載されているのか
官報には、下記の様な事柄が掲載されています。
- ・法令の公布(法律改正や政令など国に関わる情報)
- ・広報的事項(国会の議案関係や人事異動、皇室にまつわる報告事項など、各省庁が国民に対して発信したい報告事項など)
- ・公告紙的事項(政府関係機関の入札に関する情報、自己破産や失踪宣告など裁判所の決定事項、会社の解散など国民の権利や義務などに関わる事項)
官報はどうやって見る?掲載されている期間は?
官報は、紙とインターネットという2通りの方法で見ることができます。紙は図書館で閲覧したり、官報販売所や特定の書店で購入したりすることができます。
Webでは、インターネット版官報というサイトで、直近の30日分は無料で閲覧できますが、それ以前のものは、データベース化されているものを有料のサイトでしか見ることができません。
債務整理をすると必ず官報に載るのか
債務整理手続きには、主に任意整理・自己破産・個人再生がありますが、これら3つの手続きすべてが官報に載るわけではありません。
任意整理は、裁判所を通さない手続きとなるため、官報に掲載されることはありませんが、自己破産では2回、個人再生では3回掲載されます。
手続きをしたらいつ官報に掲載される?
個人再生では、手続きの中で下記の3回官報に掲載されます。
- ・再生手続き開始決定が出たとき
- ・再生計画案の書面決議、意見聴取のとき
- ・再生計画認可決定が出たとき
また、自己破産では、下記の2回官報に載ります。
- ・破産手続き開始決定が出たとき
- ・免責許可決定が出たとき
なぜ個人情報が官報に掲載されてしまうのか
政府発行の新聞に個人情報が掲載されることを、疑問に感じる方もいらっしゃるかも知れません。これは、自己破産や個人再生の手続きが行われたことを、債権者に広く知らせるという目的があります。
何かの事情により、手続きすることを債権者が知ることができなかった、手続きに参加できなかったという不利益を被ることがないよう、官報に掲載することでそれを防ぐという意味合いがあります。知ることができない債権者に対して、手続きが行われた事実を平等に告知する手段は官報公告以外にはないからです。
官報はどんな人が見る?誰でも見ることができる?
官報は図書館やWebでも見ることができるため、閲覧することは誰にも可能です。しかし、一般の方で、特別な目的や意図がなく閲覧している方はほとんどいないでしょう。
金融機関や不動産会社で官報情報を確認する業務を担当している、自治体で税金の回収業務を担当しているなど、仕事の上で必要なので目を通す作業をしているという方が主です。さらに、過去の分の閲覧については手段も限られるため、何の目的も持たない人が閲覧したり、そこで偶然に知人の氏名を見つけたりという可能性は限りなく低いと言えるでしょう。
官報に載った場合に起こるリスクとデメリット
では、官報に掲載された場合、どのようなリスクやデメリットがあるのか?具体的に見ていきましょう。
周囲の人に知られるリスクがまったくないとは言えない
先の章で、官報を見るのは限られた人であることから、そこから家族や知人に債務整理を行ったことを知られる可能性は限りなく低いということを説明しました。
しかし、仕事で必要なために閲覧している人もいることから、100%知られることはないとまでは言い切れません。また、官報によって周りの人に知られることがなくても、例えば裁判所からの通知などで身近な人に知られてしまう可能性もあります。
官報を見てヤミ金などから情報収集される
業務上官報を見ているのは、企業や自治体ばかりではありません。ヤミ金などの怪しいお借入先も、閲覧して情報を収集しています。そのため官報に載ると、掲載されている住所宛に、ヤミ金からダイレクトメールが届くことがあります。
債務整理手続きによって一定期間お金を借りられなくなった人に対して、「すぐ借りられます」などの甘い言葉の勧誘通知が届きます。うっかり借りてしまうと法外な利息を請求されるため、このような通知が届いても無視することが大切です。
官報と信用情報に関係はある?
債務整理手続きを取ると、その情報が掲載される・登録されるということから、官報と信用情報を混同している方が少なくありません。債務整理を行うと、信用情報にそのことが事故情報として登録されることになります。
信用情報とは、個人のローンやカードの支払い情報(利用残高や返済履歴)などのことで、それらの情報を管理する各機関のデータベースに集約して管理されています。ローンやクレジットカードの申し込みがあると、金融機関はこれらの情報を参照して経済的な信用度を審査しているのです。ただし、この事故情報は5〜7年で削除されます。
全国銀行協会では官報の公告を元に事故情報を登録しているため、全国銀行個人信用情報センター(KSC)も情報を共有しています。
その意味では、全国銀行個人信用情報センターについては、官報と関連があると言えるかも知れません。しかし、こちらも7年経てば事故情報は削除されます。
一方官報の掲載は、信用情報とは関係なく行われます。個人再生・自己破産を行う手続きの中で、必ず官報に掲載することになっているからです。
官報に載ると住宅ローンは組めなくなる?
ローンを申し込むと、金融機関は審査時に個人の信用情報を確認します。債務整理をした場合、事故情報が登録されているため、審査に通りにくくなります。
ただし、一定の期間を経て事故情報が削除されると、再びローンの審査にも通りやすくなります。つまり、官報に載ると住宅ローンが組めなくなるというよりは、信用情報に事故記録が載っている間は住宅ローン審査に通らない(ローンが組めない)ということになります。
債務整理の手続き後しばらく経って、クレジットカードの審査が通ったので住宅ローンも通るのでは?と考える方もいらっしゃいますが、必ずしも、クレジットカードと住宅ローン審査通過が連動しているとは言えません。
信用情報の機関によって事故情報の登録期間が異なること、また審査するクレジットカード会社によって審査対象の期間が異なることがあるからです。しかし、銀行や信用金庫などが加盟する全国銀行個人信用情報センターでは、7年間と掲載期間が決められており、その期間の住宅ローン審査は厳しいものになります。
官報から債務整理したことがわかる可能性は低い
官報に掲載されたことで、周囲の人に債務整理をしたことがわかってしまう可能性は限りなく低いと言えます。しかし、そのことに不安を感じ債務整理を迷っている場合は、官報に載らない任意整理を選択するという方法もあります。
債務整理の中でも、個人再生・自己破産は官報に掲載されますが、任意整理は掲載されません。ただし、任意整理でも事故情報が登録されることは理解しておきましょう。
また、官報から債務整理したことがわからなくても、郵送された書類などから知られてしまう可能性もあります。
周囲に知られることに不安をお持ちの方は、専門家に相談されることで周りの人に気づかれないように配慮してもらうことが可能です。
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本記事の監修/
司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤竜郎
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投稿日:2023年7月31日