過払い金を返金してもらう方法には、示談交渉と、裁判(訴訟の提起)の二つがあります。
前者はお借り入れをした貸金業者と交渉し、和解契約を締結することにより、過払い金を返金してもらう方法です。
後者は、裁判所に貸金業者に対する訴訟を提起し、裁判で返金を命令してもらう方法です。
示談交渉・訴訟、それぞれご自身でも手続きを進めることができますが、メリット・デメリットがあり、状況に応じて方法を選択することが必要です。
2つの方法のメリット・デメリットの比較と、どうしたら適切に選択できるか、コツを解説します。
この記事の目次
過払い金が返金される条件
過払い金とは、お借り入れをした貸金業者に払いすぎてしまった利息のことをいいます。
一定の条件のもと過払い金が発生している可能性があります。
過払い金が発生している条件は次の通りです。
グレーゾーン金利が適用されていること
支払いすぎた利息=過払い金は、法律で定められた利息を超えて支払った利息を指しています。
特に「グレーゾーン金利」が適用されていた借金に、過払い金が発生している可能性があります。
グレーゾーン金利とは、以下の2つの法律で定められた上限の間にあたる利息のことをいいます。
この利息は、貸金業者からのお借り入れにかつて適用されていたことがあります。
- 利息制限法・・・利息の上限は、年15〜20%
- 出資法 ・・・利息の上限は、年29.2%
現在グレーゾーン金利は違法で、適用できないこととされています。
2010年6月の利息制限法改正以前にグレーゾーン金利が適用されたお借り入れを返済した場合は、払いすぎた利息=過払い金が発生しているかもしれません。
払いすぎた利息は、不当利得返還請求権にもとづき、返してもらえる可能性があります。
消滅時効にかかっていないこと
法律上、一定の期間を経過すると権利がなくなることを消滅時効といいます。
消滅時効のため、過払い金は、最終の取引=最終返済日から一定の期間を過ぎると返してもらえなくなっている可能性があります。
過払い金を返してもらえる権利が時効にかかるのは次の場合です。
- 借金をしていた人が過払い金を返してもらえる権利を行使できる時=最終返済日から10年が経過したとき(民法166条2項)
- 返してもらえることを知ったときから5年が経過したとき(民法166条1項)
なお、5年の消滅時効については、2020年4月1日よりも前に借金を完済している場合には適用がありません。10年の時効が適用になります。
過払い金を請求する方法
過払い金を返金してもらう方法には、示談交渉と、裁判(訴訟の提起)の二つがあります。
貸金業者と交渉し、和解契約を締結し、過払い金を返金してもらう示談交渉の場合、裁判所に貸金業者に対する訴訟を提起し、裁判で返金を命令してもらう裁判の場合について、それぞれの手続きの流れと準備しておきたいことなど、具体的にご紹介します。
示談交渉
貸金業者との返金の交渉を行う、示談交渉の場合は、次のような手順で進めます。
- 1.過払い金の調査(取引履歴の確認・引き直し計算=過払い金の計算)
- 2.示談か、訴訟か、方針の決定
- 3.交渉の準備・日時のアレンジなど
- 4.貸金業者との交渉
- 5.和解契約書を作成、締結
示談交渉も、ご自身で進めることは可能です。
しかし、過払い金の専門家に相談すると、過払い金の調査・過払い金の額の計算など事前の情報収集や交渉をよりスムーズに進めやすくなりますので、専門家に相談しながら交渉をすすめることや、専門家に代行を依頼する場合が多く見られます。
示談交渉のメリット
金融機関と直接話し合う示談交渉は、無駄な時間を省いて臨機応変に交渉を進めやすいといえます。
また、解決にかかる期間が、裁判の場合は半年以上かかることが一般的であるのに比べ、示談交渉の場合は数か月で終わることも少なくないので、裁判より早い解決を望めます。
そのため、過払い金を少しでも早く返金してもらいたい場合は、示談交渉を選択することが多くなります。
示談交渉のデメリット
一方で、裁判をする場合に比べ、返金される額が少ない傾向にあり、利息は取り戻せないのが普通です。
また、交渉をご自身で行う場合、経験豊富な金融機関の担当者を相手に、主張したり駆け引きしたりすることが難しいと感じる場合もあります。こうした場合は、過払い金の専門家に相談・依頼することができれば、金融機関との経験値の差をカバーすることが可能です。
裁判
裁判所で過払い金を取り戻す場合は、大まかには次のような手順で進めます。
- 1.過払い金の調査(取引履歴の確認・引き直し計算=過払い金の計算)
- 2.示談か、訴訟か、方針の決定と訴訟の提起
- 3.裁判所に提出する書面の作成などの準備
- 4.裁判所で口頭弁論を何回か行い、多くは和解により判決まで行かずに終了する。しかし、場合によっては判決・控訴審まで行くこともある
裁判所に訴訟を提起すること、その後の手続きを進めることはご自身でも行うことができます。
ただし、過払い金訴訟は多くの場合、司法書士・弁護士のような専門家が代理人となり手続きを進めています。
裁判のメリット
裁判のメリットとして挙げられる最大のポイントは、返金される額が大きくなることです。
過払い金そのもの以外にも、過払い金に適用される延滞利息が発生しますが、裁判を行って返金を受ける場合、利息も含めて全額を返金してもらえることが通常です。
特に判決の場合、過払い金があるとされれば、これに対して適用される利息についても請求している限りは全額を支払えとの判決が出ます。
長期間気づかずにいた過払い金の場合、利息の額が非常に大きくなっている可能性もあり、できるだけ多くの額を返金してもらうことを重視するのであれば裁判が選択肢となりやすいでしょう。
裁判のデメリット
口頭弁論には期日があるので、貸金業者との交渉と違い、柔軟に日程を決めることはできません。
また、期日はある程度間隔をあけて設定するのが通常ですので、早くは進められない面があります。
和解までに半年ぐらいの期間を見込んでおくのが通常ですが、1年またはそれ以上かかる場合も見られます。
裁判所の手続きになれていないと困難があることもデメリットの1つです。
書面の作成の手間自体は示談交渉も裁判所もある程度慣れている人にとっては大きく変わらないこともあると思われますが、そうはいっても特に知識がないまま裁判所で書面の説明を受けても戸惑ってしまうということもあります。
こうした手続き上の不安感や心配事は、過払い金を多く扱う司法書士・弁護士事務所に相談すること、それらの事務所に依頼して裁判所の手続きを代行してもらうことにより、解決することをおすすめします。
過払い金請求裁判の流れ
過払い金の請求での裁判は、示談交渉と比較して大きな金額の過払い金を回収できる方法です。
ただし、ご自身で裁判を行う場合、申立書類を作成する手間や裁判期日などで、時間を取られてしまうことになります。専門家に依頼すれば、裁判手続きを一任することができ、ご自身が煩わされることはありません。
では、具体的にどのようなことを行うのか、過払い金請求裁判の流れを見てみましょう。
訴訟提起
引き直し計算で算出した過払い金の請求金額を基に、訴状・書証(証拠)などを作成します。
訴状には必要な記載事項を記入しますが、日弁連のホームページに訴状の書式がありますので、必要な方は参考になさってください。
「請求の趣旨」と「請求の原因」の項目には、通例の書き方や必ず記載すべき内容があるので、注意が必要です。
訴状と書証を作成したら、収入印紙・郵券と一緒に管轄の裁判所へ提出します。
書類の提出が終わると、裁判所で不足書類などの不備がないか確認が行われ、問題があった場合は、追加の提出などを求められます。無事に受理されたら、数日後に裁判所から裁判期日の連絡が入ります。期日は、裁判所が開廷している平日の日時で決められます。
裁判所が第一回目の裁判期日を指定
第1回口頭弁論期日は、訴状の提出から約1か月〜2か月後に指定されます。
裁判所が、金融機関(被告)に請求者(原告)から出された訴状を郵送し、口頭弁論期日もこの頃に決まります。第1回口頭弁論期日の前に、相手となる金融機関(被告)から答弁書(被告の主張や反論が書かれている書面)が請求者(原告)に届きます。取引が一連計算か分断かといった複雑な争点がある場合は、反論や主張が答弁書に記載されているので、相手側の主張を確認の上こちらも反論する必要があります。
相手の金融機関によっては、提訴されたと知った時点で合意案を提示してくる場合もありますが、そのまま裁判に移行する場合が多いです。
裁判・判決
裁判では、1か月に1回程度開かれる期日の前に準備書面を提出し合い、請求者(原告)と金融機関(被告)の間で主張や反論を繰り返します。互いの主張が出つくした頃に、裁判所が見立てを示すなどして、合意案を打診してくれることもありますし、途中で金融機関が提示してきた条件で納得できれば、その時点で合意する場合もあります。
裁判で合意した場合は、合意の内容をまとめた和解調書を、裁判所で作成してくれます。
合意に至らないケースでは、最終的に裁判所が判決を下して裁判が終了します。
過払い金が発生していることが認められれば、被告である金融機関にその支払いを命じる判決が言い渡され、後日指定した金融機関口座に過払い金が入金されます。
迷ったら、専門家に相談を
ただし、早く解決することが本当に遺産分割のために必要であるか、あるいは、借金整理の場合、借金の取り立てとの関係で、裁判手続きをするのでは間に合わないかもしれない、といったように、状況に応じた対応をすることがより適切な解決につながります。
さらに、最も状況に応じた適切な解決方法を選ぶには、過払い金の専門家でないと判断できない微妙な問題が生じるとこともあります。
ご自身だけで判断に迷ってしまった、過払い金と並行して借金整理との関係や遺産分割との関係が気になる、あるいは家族に知られたくないなど、その他の心配事・困り事がある、といった場合は、適切な判断ができる専門家に相談するようにしましょう。
過払い金の専門家なら、過払い金があるかどうかの調査や、過払い金の額の計算・裁判の手続きや、交渉を代行してもらうこともできますので、どちらもご自身の手間が少なく、精神的な負担も少なくすることができます。
また、裁判の場合でも、交渉の場合でも、過払い金専門の事務所に依頼すると手続き関係の郵便物を事務所に届けるように手配するなどの工夫をしてもらえます。
そのため、家に手紙が届いたときに、過払い金が家族にばれてしまうような事態も可能な限り避けることができます。
相談先の見つけ方とは?
ところで、過払い金の相談先の見つけ方にはポイントがあります。
過払い金の問題を取り扱い、貸金業者との交渉や裁判手続きの代行をすることができるのは、認定司法書士・弁護士に限られています。
しかし、法律の専門家も、さらに専門分野が分かれているので、認定司法書士・弁護士に頼めば相談ができるとは限りません。
例えば土地の登記を専門に扱う司法書士にお願いしても、過払い金について相談に乗ってくれて、適切に取り扱ってくれるとは言えないのです。
相談先は、過払い金の返金の実績が豊富で、借金の整理も実績もある事務所・無料診断を扱っている事務所など、過払い金に強い事務所を選びましょう。
裁判と示談交渉、どちらを選ぶのがよい?
裁判と示談交渉、どちらを選んだらよいかは状況によりますので、一概にどちらを選ぶべきと決めることはできません。
ご自身の状況から、裁判と示談交渉のどちらがよいか判断がつけにくい場合もあり、悩んでしまうこともあります。
そうした場合にも、過払い金の専門家への相談をおすすめします。
なお、気になる費用の点については、過払い金を専門に扱う事務所では、交渉の場合も裁判の場合も、出来高制など返金の額に応じた費用設定をしている事務所が多くあります。
出来高払いの場合、費用が一概に高い・安いと比較はできません。
ただ、出来高払い、特に完全出来高払いの場合、手続きの最初に費用を支払うことがないため、相談者の経済的・精神的負担を少なくすることができます。
中央事務所も、完全出来高払いの対応をしています。
裁判が適切な例・示談交渉が適切な例とは?
裁判と、示談交渉には、一般的に次のような違いがあります。
- 裁判は利息を含めて返金され、返金額は多くなる傾向がある反面、解決までに時間が長くかかりがち。
- 示談交渉は、返金額は裁判より少なくなり、利息も返してもらえないことがほとんどだが、解決までの期間が短くなる傾向がある。
これらの違いから、できるだけ多くの額を返してもらいたい借金整理の前の過払い金の返金の場合は、訴訟を提起してできるだけ返してもらうことを狙う、遺産分割を急ぐことが理由で、故人の過払い金を早く返してもらうことを狙って示談交渉にするなど、状況に応じた選択をすることとなります。
相談先の見つけ方
ところで、過払い金の相談先の見つけ方にはポイントがあります。
過払い金の問題を取り扱い、金融機関との交渉や裁判手続きの代行をすることができるのは、司法書士・弁護士に限られています。
しかし、法律の専門家も、さらに専門分野が分かれているので、司法書士・弁護士に頼めば相談ができるとは限りません。
例えば土地の登記を専門に扱う司法書士にお願いしても、過払い金について相談に乗ってくれて、適切に取り扱ってくれるとは言えないのです。
相談先は、過払い金の返金の実績が豊富で、借金の整理も実績もある事務所・無料診断を扱っている事務所など、過払い金に強い事務所を選びましょう。
迷ったら専門家に相談を
裁判で過払い金を返してもらうか、あるいは示談交渉で返してもらうか、それぞれの方法にメリットとデメリットがあり、状況に応じてどちらを選択するのがより適切かは異なります。
迷ったら、過払い金の返金や借金の整理に多数の実績をもち、無料診断があり相談をしやすい事務所に相談してみましょう。
過払い金の請求で悩まれたときは、専門家の力を借りるのが早期解決の近道です。
中央事務所では、過払い金の知識と実績が豊富な専門家が、あなたのお悩みをしっかりとお聞きします。
ご相談時にお話しをよく伺った上で、あなたの状況にあった解決方法をご提案させていただきます。
WEBから、24時間いつでも受付していますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。
本記事の監修/
司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤竜郎
中央事務所はお客さまのお悩みに寄り添い、常にお客さまの目線に立ってアドバイス、解決するためのお手伝いをさせていただきます。
借金、過払い金請求のことでお悩み、お困りの方、ぜひお気軽に中央事務所にご相談ください。
投稿日:2022年6月9日
更新日:2024年3月29日