「過払い金」が返ってくるとわかったら早く欲しいものですが、「いったいどのくらいで返金されるものなの?」と考えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
過払い金返還請求の手続きは、通常3か月~半年を要します。ただし、ご自身で行うのか専門家に依頼するのか、依頼した事務所の実績・経験値、裁判の有無や、貸金業者の経営状況など様々な要素によって異なります。
また、相手となる貸金業者の対応方針によっては、かなり期間が延びてしまうこともあり、必ずしも型通りの流れにならないこともあります。
過払い金請求から返金までの流れ
過払い金の返還請求をする際、必ず必要となる手続きは取引履歴の調査です。
貸金業者から取引履歴を取り寄せ、引き直し計算を行って正確な過払い金を算出します。
過払い金返還請求の手続きを専門家に依頼した場合、ご依頼から返金されるまでの一般的な流れは下記の通りです。
①受任通知の発送
専門家に手続きを依頼した場合は、まず、手続を受任した専門家が、貸金業者に対して、過払い金の返還請求手続きを受任した旨の通知を、金融機関に送ります。
その時点で残借金がある場合は、通知が貸金業者債権者に届いた時点で、返済や取り立てがストップします。
なお、返済や取り立てが止まるのは、弁護士や司法書士が受任した場合で、ご自身で請求される場合は止まりません。
②取引履歴の開示
貸金業者から依頼した事務所の元へ、これまでのお借り入れと返済の記録が送付されてきます。
③過払い金の計算
送付された取引履歴を、利息制限法の上限金利に基づいて引き直し計算を行い、過払い金請求額を算出します。
返金交渉の準備段階となるここまでの期間は、貸金業者によっても異なりますが、受任後およそ1~3か月程度かかることがほとんどです。
④返金交渉の開始
過払い金返還請求書を貸金業者宛てに送付し、金額や返金日等についての交渉を行います。交渉がまとまらない場合は、貸金業者に対する訴訟手続きを開始することになります。
⑤合意書の取り交わし
交渉の結果、貸金業者が返金に応じた場合は、合意内容を書面にして取り交わします。
⑥お客さまへ返金
合意書記載の返金日までにきちんと返金がなされるか監視を行います。
専門家に手続を依頼してから最終的に返金されるまでにかかる期間は、早くても3か月~、交渉に時間を要した場合は半年ほどが目安となります。
過払い金返金までの期間に影響する5つの要素
過払い金が返金されるまでの期間が、短くなるのか長くかかってしまうのかは、貸金業者の対応や交渉内容が大きく影響します。
過払い金返金までの期間に影響する要素として、次の5点が挙げられます。
下記で1つずつ見ていきましょう。
- ① 貸金業者の返信速度
- ② 過払い金返還請求訴訟の有無
- ③ 返金条件を巡る交渉内容
- ④ 貸金業者の経営状態
- ⑤ 依頼先事務所の知見と対応状況
①貸金業者の返信速度
貸金業者の返信スピードは、手続きの進捗を左右します。
こちらから時間をあけずに連絡しても、相手からのレスポンスが遅いとその都度中断してしまい、交渉がなかなか前へ進みません。
貸金業者との交渉は、双方からの提案について互いに検討しながら進めていきますが、これが数回の連絡で収まらなかったり、貸金業者側がその都度預かって社内で検討したりということになると、時間がかかってしまいます。
②過払い金返還請求訴訟の有無
任意交渉の中で、貸金業者と過払い金の金額や支払い方法・期日について和解に至らない場合は、訴訟を提起することになります。
訴訟に発展した場合には、その後の期日などは裁判所が示したスケジュールに沿って行われるため、裁判所の指示通りに進めていくしか方法はありません。
それでも多くは、訴訟の提起から1~2か月ほどで和解できます。
中には、訴訟を一通り終えるのに、半年ほどかかる場合もあります。
裁判をすると、任意交渉による和解より時間がかかり、返金時期が遅くなってしまいますが、その分過払い金の返還率や返還額が大きくなることが多いです。。
一方、少しでも早く過払い金の返金を受けたい場合は、裁判をすることなく交渉段階で和解すべきということになります。
また、提訴されることを嫌う貸金業者がいる一方で、裁判をしないと返還請求に応じない貸金業者もあります。
そういった貸金業者別の傾向などを、しっかりと把握している事務所に依頼することも大切です。
訴訟に発展しやすいケースとは
では、訴訟に発展しやすいのはどのようなケースでしょうか?
多いものは、貸金業者が消滅時効を主張している場合です。
過払い金返還請求権の「消滅時効」とは、過払い金返還請求が出来る権利は、取引が終了した時点から10年で時効により消滅する、というもので、取引が終了した時点とは、具体的には最後の支払いをした時のことです。(最高裁平成21年1月22日判決)
ただし改正民法により、令和2年4月1日以降に発生した請求権については、取引が終了してから10年経っていない場合でも、請求権の発生を知った時から5年で時効となる。としていますので注意が必要です。
また、取引履歴の中で2度以上完済した箇所がある場合、どの完済日を「最終取引日」とするかで過払い金請求権の消滅時効の成立時期が変わってきます。
10年以上前の完済日を最終取引日だと貸金業者が主張した場合には、訴訟になる可能性が高くなります。
③返金条件を巡る交渉内容
貸金業者が、返金しなければならない過払い金の存在は認めても、返金額や返金の時期などについて反論がある場合には、なかなか合意に至らず時間がかかることがあります。
こちらとしては当然早い返金期日を求めますが、貸金業者がその見返りとして、返金額の減額を条件に出してくる可能性が高くなります。
逆に、返金額を満額に近づけるためには、粘り強い交渉は元より貸金業者の都合に配慮して、先の返金期日を受け入れるなどの柔軟な対応が必要となってきます。
返金額や返金期日について貸金業者が激しく反論する場合には、任意交渉での和解が難しくなります。
こちらも納得出来る結果を求める場合は、訴訟に発展することもあり、そうなると返金までの期間が延びてしまうのはやむを得ないでしょう。
④貸金業者の経営状態
貸金業者の経営状態によっても、過払い金の返金に通常以上の時間がかかってしまう場合があります。
まず貸金業者は、自社の経営状態悪化を理由に、返金額の減額とともに、かなり先の期日を提案してくる可能性が高いです。
また、いよいよ経営が立ち行かなくなり、民事再生や破産手続きを取ることになった場合、過払い金返還請求の手続きは裁判所を通して行うことになり、実際の返金はとてつもなく先になってしまいますし、返金されないこともしばしばです。
法律が改正されて過払い金返還請求が可能になった結果、経営不振となる貸金業者がどんどん出てきました。
そして、倒産や廃業にいたるケースは増えています。
こうなってしまうと返金されないこともあります。
そうなる前に過払い金の返金を受けるためには、お早めの着手が重要です。
⑤依頼先事務所の知見と対応状況
過払い金を迅速に返金してもらうには、ただ請求手続きを行えばよいわけではありません。
貸金業者ごとの返金額・返金時期の見込みや、過払い金額の計算方法が争点になる場合はその対策、訴訟の有無など、様々なケース毎にあらかじめ手続きの方向性を固めておくことが重要です。
つまり、依頼する事務所が貸金業者についてどの程度情報をもっているかが、対策の要になるのです。
事務所によっては、過去の解決事例や判例を通じ、貸金業者ごとの傾向をデータとして集積しています。それらの情報は、高度な知見の1つといえます。
また、知見だけにとらわれるのではなく、貸金業者と合意を締結してからの対応速度も、返金までの期間に影響します。
事務所を選ぶ時には、対面での説明などから誠実な対応かどうかなどをしっかりと見極めることが大切です。
過払い金が早く欲しい!早期返金のポイントまとめ
本記事の監修/
司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤竜郎
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投稿日:2021年10月4日