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過払い金請求手続きの流れを
パターン別に解説

過払い金請求をお考えの場合、ご自身で行うのと専門家に依頼するのとではどのような違いがあるのか、気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。手続きの流れ自体は、ご自身で行っても専門家が行っても大きな違いはありません。

しかし、手続きの全体像として、請求手続きの流れを知っておくことは大切です。ここでは、手続きの流れと、ご自身で行う場合の注意点などを解説します。

お借入先から取引履歴を取り寄せる

過払い金が発生しているかどうかは、計算をしてみないとわかりません。そのための資料となる取引履歴を、お借入先から取り寄せる必要があります。

取引履歴とは、いついくら借りていついくら返したかなどの取引経過の全容です。債権者には取引履歴開示義務があることが、判決で示されています(最高裁判所第三小法廷平成17年7月19日)。

そのため、請求者が専門家か債務者ご自身かに関わらず、ほとんどのお借入先は開示請求にすみやかに応じてくれるでしょう。ただし取引履歴開示までの時間は、お借入先によって異なり、時間がかかるところでは3か月近くを要することもあります。

引き直し計算をする

お借入先から開示された取引履歴をもとに引き直し計算を行い、過払い金が発生しているかどうかを確認します。ご自身で行う場合は、アプリなどを使って計算する場合が多いでしょう。ところがこの計算は、一般の方にはかなり難しいとされています。

それは、ただ計算をするだけでなく、取引の分断についての判断など法的な解釈が必要になってくるケースがあるからです。これらの詳細については、「引き直し計算の注意点」の章で解説します。

お借入先に過払い金返還請求書を郵送する

引き直し計算を行い過払い金が発生していることがわかれば、お借入先に対して請求書を郵送します。

請求をご自身で行う場合ですが、受け取っていないと主張されないためにも、内容証明郵便を利用したほうがよいでしょう。請求書を送るだけで、請求額どおりに全額を支払ってくれることはほとんどありませんし、そもそもお借入先から連絡がくるとも限りません。こちらから何度も連絡を入れて、やっと交渉にこぎつけられる場合もあります。

お借入先と話し合いによる示談交渉をする

過払い金返還請求書を郵送後に、お借入先との交渉を開始します。交渉の場合の多くが、よくて7~8割程度から半額未満という金額での返金を、最初に提案されます。示談交渉する場合は、利息を含めた返金は難しいですが、比較的早めの入金日になるというメリットがあるため、何を優先するかによって落とし所を決めます。

交渉で折り合いがつかない場合には、訴訟を提起することになるでしょう。

過払い金請求の裁判をする

お借入先が話し合いに応じてくれなかったり、示談交渉で折り合いがつかなかったりという場合には、裁判所へ過払い金返還請求の訴訟を提起します。裁判を行うことになった場合、相応の時間を要することを覚悟しなければなりません。

専門家へ依頼している方は、ご自身で何かすることはありませんが、手続きをご自身で行う場合には、必要書類の取り寄せや、訴状を作成して裁判所に提出しなければなりません。訴状が受領されると、裁判所から期日の連絡が入ります。

お借入先から過払い金が返金される

示談交渉での和解や、訴訟での判決が確定すると、ほとんどの場合お借入先から決まった額全額の入金があります。ただし、決められた期日に正しい金額で入金があるかどうか、きちんと確認することが重要です。


ご自身で行う過払い金請求では、こんなことに注意

過払い金請求手続きを日頃から業務として行っている専門家は、法的な知識と日常的な実践で身につけた処理力で、下記の煩雑な業務を行います。しかし、ご自身で過払い金請求手続きを行う場合には、専門家のようにはいかないことが多いでしょう。特に、下記の点には注意が必要です。

取引履歴取り寄せ時の注意点

開示請求をご自身で行う場合は、電話や郵送の他にウェブのホームページや店頭窓口で請求することになります。ただし、お借入先に取引履歴の開示請求をする際は注意すべきポイントがあります。

まず、請求する時にその利用目的を聞かれることがありますが、過払い金請求する予定とは答えないことです。聞かれると答えなくてはいけないように思ってしまいますが、使用目的を伝えなければならない義務はありません。

また、その場でもしくは後日、「借金をゼロにするので和解しませんか?」といって示談交渉を求められる場合があります。一見お得に思え、うっかり合意してしまうと「あなたとの契約は和解済みである」とされて、過払い金返還請求が難しくなる可能性があります。

3つ目の注意点は、過払い金請求権には消滅時効があることです。しかも、これまで過払い金の返金は、借金を完済した日を起算点として、10年で請求が出来なくなるとされていました。しかし、2020年の民法改正により10年が経過していなくても、返還請求をできる権利があると知った時点から5年で時効が成立するケースが出てきました。

取引履歴の利用目的を答えない

取引履歴を請求する時に利用目的を聞かれると、うっかり答えてしまいそうになりますが、過払い金請求をするためとは答えないようにしましょう。

「返済義務がないと知ったうえで、任意で返済した借金の過払い金は請求できない」(民法705条)という定めがあるため、過払い金があることを知りながら返済をしていると主張される可能性があるからです。目的を聞かれたら「これまでの取引を確認したい」と伝えると良いでしょう。

過払い金請求の時効が過ぎないようにする

過払い金を請求する際の最大の注意点は、請求権の消滅時効です。以前は、最終取引日から10年で時効を迎えるとされていました。しかし、2020年の民法改正により、「権利を行使することができることを知った時から5年間」という消滅時効期間が加えられました(民法166条1項1号)。

最終取引日から10年が経過していなくても、返還請求をできる権利があると知った時点から5年で時効が成立してしまう可能性もあり、手続きをさらに急ぐ必要があります。

ゼロ和解にそのまま応じない

取引履歴を請求すると、お借入先からゼロ和解をしませんか?(過払い金を請求するご自身も、請求されるお借入先も、どちらも債権や借金がないということを確認する和解をいいます)と提案されることがあります。

取引履歴を開示する前にゼロ和解を提案してくる場合、過払い金が発生している可能性があります。ゼロ和解に応じてしまうと、過払い金請求の権利を放棄したとみなされ、その後は請求に応じてくれない可能性があります。

引き直し計算の注意点

引き直し計算は、過払い金請求手続きの流れの中でも、重要なポイントとなるところです。

この引き直し計算によって法的に正しい借金額が確定し、返金してもらうべき過払い金の金額が決まるからです。誤った計算で過払い金請求をしてしまうと、返金される金額が少なくなったり、間違いを指摘されてその後の交渉に影響を及ぼしたりする可能性があるため、慎重に行わなければなりません。

まず、一連か分断かの判断は、専門家でも慎重に取り扱うところです。交渉の中でどのように主張するのか、戦略も必要になってきます。次に、取引履歴の一部が処分されている場合ですが、その場合は推定計算を行う必要が出てきます。この計算を慣れない方がご自身で行うのは、無理があるでしょう。3点目は、ブラックリストに載ってしまう可能性です。過払い金が発生していても、現在も返済中で残借金がある場合は、ブラックリストにのる可能性があるため、その確認には注意をはらう必要があります。

一連か分断かの判断

一連か分断かは、基本契約が同一かどうかや空白期間の長さなどで判断しますが、同じ契約番号で借入と完済を繰り返している場合の引き直し計算はさらに複雑になります。同じ契約番号の複数の取引を一連の取引とみなすのか、別の取引として扱うのかによって時効の成立が変わってくるためです。どの完済日が消滅時効の起算点となるのか、ご自身での判断は難しい可能性があります。時効の成立に伴って過払い金請求の対象となる取引件数が変わり、過払い金の額も変わってきます。

取引履歴が処分されている場合

取引履歴が処分されている場合、開示されている取引履歴と通帳からわかる引き落としの履歴などをもとに、処分された期間の取引を推測して計算(推定計算)をしなければならないことがあります。推定計算による過払い金請求は裁判での争点となることもあるため、必要な場合は司法書士・弁護士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。

ブラックリストに載る可能性の確認

返済中の状態で過払い金引き直し計算をする場合、ブラックリストにのる可能性があります。計算した結果、残借金より過払い金が少なかった場合には任意整理という手続きになり、ブラックリストに載ってしまいます。ただし、過払い金によって残っているお借り入れが0円になる場合は、手続き中に信用情報に載ってしまうことはあっても、最終的に、過払い金が返金された時点で信用情報から消されます。

お借入先と交渉するときの注意点

実際にご自身で交渉されるときの注意点をあげました。

返済中の場合、返済や督促は止まらない

現在も返済中の過払い金請求の場合、専門家が代理人となっているケースに限り返済や督促が止まります。ご自身で行う場合は止まらないため注意が必要です。

不当な和解条件を提案される可能性も

示談交渉では、できるだけ金額を少なく、少しでも先の支払い日にするため、不当な和解案を提案してくるお借入先もあります。交渉相手が専門家でない場合は、さらに対応を変えてくる可能性も否定できません。ご自身で対応する場合には、辛抱強い交渉が必須でしょう。

専門家は過去の実績や傾向など情報も豊富

過払い金請求の実績が豊富な事務所の場合、これまでの傾向など蓄積されたデータがあり、有効な内容で交渉を進めやすいという利点があります。また、予め争点となる事柄についても対策がたてられますが、慣れない方がご自身で行う場合は、それら1つ1つについて調べたり、検討したりしなければなりません。


過払い金請求を専門家に依頼した方がよい場合

このような事情や理由のある方は、最初から専門家に依頼されることをおすすめします。

平日に裁判所に行ったりお借入先と連絡をとったりすることが難しい方

お借入先との交渉は、多くが企業の営業時間に連絡が入ります。また、訴訟になれば、裁判所の期日は平日に設定されます。出廷するためには、仕事を休んだり早退や遅刻を申請したりしなければならないでしょう。

家族に知られないようにしたい方

過払い金返還請求の手続きでは、お借入先との電話や郵便物でのやりとりが何度かあります。もし訴訟になった場合は、期日の連絡などさらに裁判所とのやりとりも必要になるため、家族に知られる可能性は高くなります。家族に知られたくない事情がある人は、専門家に依頼することでそれらのリスクが低くなります。

可能な限り満額に近い返金を希望する方

個人で請求した場合、法律の専門家がついていないことでお借入先に足元を見られる可能性があります。つまり、専門家に依頼するよりも返金額が減額されやすい可能性があることは否定できません。可能な限り満額に近い返金額を希望するのであれば、裁判所への提訴も行わなければならないでしょう。これらのことを踏まえると、ご自身での交渉・対応は難しくなります。


まとめ

借金返済に悩まれたときは、専門家の力を借りるのが早期解決の近道です。

中央事務所では、債務整理の知識と実績が豊富な専門家が、借金のお悩みをしっかりとお聞きします。

ご相談時にお話しをよく伺った上で、ご自身の状況にあった解決方法をご提案させていただきます。

WEBから、24時間いつでも受付していますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。


過払い金の対象になるかならないか迷ったら専門家に相談を

中央事務所では、過払い金返金の対象であるかどうか、また過払い金はいくらあるのかの診断を無料で行っております。

もし、対象でなかった場合でも費用はかかりません。
WEBからは24時間いつでも受付しておりますので、是非一度、お気軽にご相談いただければと思います。


本記事の監修/
司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤竜郎

中央事務所はお客さまのお悩みに寄り添い、常にお客さまの目線に立ってアドバイス、解決するためのお手伝いをさせていただきます。
借金、過払い金請求のことでお悩み、お困りの方、ぜひお気軽に中央事務所にご相談ください。

執筆者伊藤竜郎

投稿日:2023年5月24日



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