過払い金を返してもらいたい時には、いくら過払い金が発生しているか、計算を行ってから貸金業者に返金の請求をします。ご自身の借金の額に応じた目安となる額があると過払い金の返還請求の見通しが立てやすいのですが、過払い金の額は、借りている期間と額で異なります。
そこで、請求の前に、ご自身の借金の記録と、借りていた期間をできるだけ正確にしらべて、計算をし、過払い金の額を算出することが必要です。
過払い金をおさらい
過払い金とは何か、少しここでおさらいをしておきましょう。
過払い金とは、貸金業者に払いすぎてしまった利息のことをいいます。かつて、法律の上限を超えた利息である「グレーゾーン金利」を貸金業者が借金に対して適用していたことがあります。
グレーゾーン金利が適用されていた借金を返済していた場合には、過払い金の発生の可能性があります。グレーゾーン金利とは、利息制限法と、出資法という2つの法律で定められた上限の間の利息のことをいいます。
グレーゾーン金利は、今では違法とされ適用されていませんが、次のような利息がかつては適用されていました。
- ・利息制限法・・・利息の上限は、年15〜20%
- ・出資法 ・・・利息の上限は、年29.2%
利息制限法と出資法の上限の間の違法なグレーゾーン金利が適用されていた借金を返済する際、払いすぎた利息が過払い金です。
過払い金を実際に返してもらう時には、グレーゾーン金利が適用された借金を返済していたことと、原則として最後の返済から10年が経過していないことが必要です。経過してしまうと、消滅時効が完成し、返金してもらう権利がなくなってしまうためです。
お借り入れの金額と期間で過払い金の額は変わる
過払い金の額は、先ほどご紹介した通り、グレーゾーン金利に幅があるものなので、もともとの利率により変わります。
また、利息は、元金に対する一定の割合をいいますので、お借入額によって変わり、さらに期間が長くなればなるほど増える性質があります。
例えば、100万円を利率20%で借りた場合の利息額は、1年、2年、3年で異なり、3年お借り入れした場合の利息額は72万8000円となります。また、複利計算により年間あたり発生する利息額も増えていきます。
<100万円を20%の利息でお借り入れした際の1年目から3年目までの利息額>
お借入期間 | 元利合計 | 利息額 |
---|---|---|
1年 | 120万円 | 20万円 |
2年 | 144万円 | 44万円 |
3年 | 172万8000円 | 72万8000円 |
上記の通り、ご自身のお借入額・適用されていた利率・お借入期間を調べたうえ、それぞれの額を計算しなければ正確な過払い金の額はわからないものです。貸金業者に返金を請求する際には、正確な額を計算します。
過払い金の計算方法とは?
ところで、過払い金には引き直し計算という計算方法があります。引き直し計算は、適法な利息が適用されていたら、いつ完済できたか、そして違法なグレーゾーン金利のためいくら余分に返済したのかを計算する方法です。
借金に適法な利息を適用しなおし、それぞれの返済時にいくら残額があるか計算します。元金が0になるまで繰り返して計算し、算出した返済額の合計額と、実際に返済した返済総額との差額=過払い金です。
過払い金はご自身でも計算は可能です。お借入金額・お借入期間・適用されていた利息を用意できれば、インターネットなどで掲載されている計算方法やエクセルシートを使って計算することができます。
ところが、ご自身で計算しようとすると、なかなか正確に計算できないことも多いので、うまく行かない場合は、過払い金を専門に扱う司法書士や弁護士に頼むこと・チェックをしてもらうことがおすすめです。
過払い金が多くなりやすい場合
「過去の記録が入手できていないが、今できるだけ目安が欲しい」という場合もあるでしょう。こうした場合、ご自身にあてはまる条件から、過払い金が多くなりがちな傾向にあるかどうかの目安はつけることができます。
まず、お借入れの額と期間が多くなる場合は、過払い金も多くなりやすい傾向にあります。複数の貸金業者からお借り入れした場合、1つの貸金業者のお借り入れよりも、過払い金の額は大きくなる傾向にあります。
また、借金は「限度額」という枠があり、限度額が大きい方がそれだけ多くの額の借金をしている可能性があるので、過払い金の額が大きくなりがちです。
過払い金の額の大小の傾向を簡単にまとめると、お借入金・お借入期間・限度額が高いことにより過払い金の額は大きくなりがちです。
過払い金の額
大きい 小さい
お借入金の額が大きい > お借入金の額が小さい
お借入期間が長い > お借入期間が短い
限度額が大きい > 限度額が小さい
繰り返しの借金では過払い金が大きくなるケースもある
さらに、限度額の枠内での繰り返しの借金で過払い金が大きくなる可能性があります。次のAさんと、Bさんのケースでは、利息の額は同じでも、過払い金の計算をすると、Bさんの方が大きくなります。
Aさんのお借り入れ 限度額が100万円、5年間1度だけ100万円を借りて、返済した。
元利合計額 248万8320円、利率(年利)29.7%、年利利息額148万8320円
Bさんのお借り入れ 限度額はAさんと同じ100万円だが計5口の借金をそれぞれ5年かけて返済した
元利合計額 1口49万7,664円、利率(年利)29.7%、利息額29万7664円、5口合計148万8320円
上記のように、単純に計算すると、5年100万円を借りたAさんと、5回に分けて借金をしたBさんで、合計の利息の額は変わらないはずです。
しかし、Bさんの各借金が重なって、完済せずに追加のお借り入れをしていた時期がある、または各借金の間隔がおおむね1年以内、という条件を満たしていると、過払い金の額はAさんのケースよりも多くなる可能性が高くなります。
複数の取引が上記の条件をみたすとすると、「一連の取引」と考えられ、例えばBさんのケースでは5個の取引が1つとみられる可能性が高くなります。
その一方で、1つの取引であることから、1回目の20万円の借金の時に発生した過払い金を2回目の取引の元金返済に充てることができます。2回目以降の借金も同様です。
このようにして、5回目の借金の元金まで、前に発生した過払い金で元金を相殺できる可能性がありますので、借金の額自体を減らせる効果が生じることが考えられます。
過払い金が少なくなりやすい場合
逆に、過払い金が少なくなりやすい場合は、お借入金が少なく、お借入期間が短い場合です。
限度額が少ない場合も、それだけお借入金が少ない可能性が高いといえるでしょう。複数の金融業者からの借金がない場合も、過払い金は少なくなる可能性が高くなります。
同じ限度額にしても、ご紹介した一連の取引とみられる複数の借金をしているかどうかで異なります。前のAさんとBさんの比較のケースに見るように、借金を完済して次の借金までおおむね1年間隔が開けば、次の借金に発生した利息で前の借金の元金を相殺する効果は生じません。
一連の取引とみられる複数の借金をしている場合よりもしていない方が過払い金は少なくなりがちです。
時効に要注意!最後の返済はいつ?
ご自身の過払い金の額が多いかもしれない、と思った方は時効にもご注意ください。
特に完済しているときには、できるだけ早く対応したほうが良い、と考えておきましょう。
法律上、一定の期間を経過すると権利がなくなることを消滅時効といいます。消滅時効のため、過払い金最終の取引=最終返済日から一定の期間を過ぎてから請求すると返してもらえなくなっている可能性があります。
ただし、最終返済日は、先ほどもご紹介した、複数の取引が一連の取引とみられる場合には、各取引について時効が進行するのではなく、最新の取引の最終返済日=最終返済日となります。
過払い金を返してもらえる権利が時効にかかるのは次の場合です。
- ・借金をしていた人が過払い金を返してもらえる権利を行使できる時=最終返済日から10年が経過したとき(民法166条2項)
- ・返してもらえることを知ったときから5年が経過したとき(民法166条1項)
なお、5年の消滅時効については、2020年4月1日よりも前に借金を完済している場合には適用がありません。10年の時効が適用になります。
過払い金はどうやって返してもらう?
過払い金は、貸金業者と示談交渉する方法と、訴訟を提起する方法のどちらの方法でも請求することができます。また、示談交渉や訴訟をご自身で進めることも可能です。
しかし、ご自身で進める場合は、注意しておいた方が良い点もあり、専門家に相談しながら進めることがスムーズに返してもらうコツといえます。以下でくわしくご説明します。
過払い金の調査
過払い金を請求する前には、どこからいついくらお借り入れをしたのかに関する情報を、ご自身で用意するか、貸金業者から記録を取り寄せて調べる必要があります。
さらに、正確な金額がわからないと、請求のしようがありませんので、過払い金の額は取引の調査をした後、正確に計算してから貸金業者に請求します。
過払い金の調査の際には、ご自宅やその他の保管場所の取引記録を調べるほか、貸金業者への請求を行って過去の記録をそろえます。
ご自身のお取引の履歴の調査は、各貸金業者の専用窓口から記録を請求する・あるいは個人情報の開示請求のページから記録を請求するといった方法で、貸金業者に直接請求を行います。各貸金業者で書式や申し込みの方法が決まっているので、これに従って請求します。
調査をご自身で行うときの留意点
貸金業者にお取引の履歴を請求する場合は、記録の保管年限を超える場合、貸金業者からは情報を得られないということがあります。
過払い金は、利息制限法の改正の時、すなわち2010年6月以前にお借り入れをした借金に発生しているので、保管期間を過ぎているような場合は、ほかの手段で取引の確認をする必要があります。
また、先ほども触れましたが、引き直し計算は、適法な利息が取引に適用されていたらいつ借金を完済できていたことになるのか、正確に計算をする必要があります。この引き直し計算がうまく行かず、正確な額が出ないと請求ができない恐れがあります。
過払い金に困ったら、専門家に相談してみよう
貸金業者から古い記録がもらえない・引き直し計算が正確にできないなどの心配事が生じたら、過払い金の専門家に相談して解決しましょう。取引調査も引き直し計算も、専門家に依頼すると、解決方法を知っているので、対処してもらえます。
また、そのあと過払い金の請求の代行もしてもらえるので、時間のない方・交渉などに気後れしてしまう方も、手続きを任せることができます。
過払い金の専門家は、司法書士・弁護士の中でも、豊富な過払い金の返金実績があり、借金の整理にも実績と知見があります。
法律の問題も専門分野が細かく分かれていることから、司法書士や弁護士の資格があれば専門家、というわけではありません。過払い金に最も詳しい実績のある専門家を見つけて、相談するのがおすすめです。
過払い金の無料診断であなたの過払い金の目安がわかる
過払い金に実績が豊富な司法書士・弁護士事務所でよくみられるのが、過払い金の無料診断です。
ご自身の場合のお借入先・時期などを伝えると、電話やメールで回答してもらえます。または、簡単な無料診断ツールに入力するとおおよその額が計算できます。
目安額が具体的にわかると、請求もやる気が出ることでしょう。また、他の借金がある場合も過払い金での返済も考えられるので、対策・見通しを立てやすくなります。
簡易診断ツールなどはあくまでも目安の金額なので、もう少し詳しく内容を知りたい・取引の具体的な経緯を話しながら確認してみたい、という場合、相談も無料で対応している過払い金専門事務所も多くあります。
中央事務所は、無料診断を実施しています。納得のいくまでしっかりなんでも相談してみてください。
専門家に相談~過払い金の返金までの流れ
最後に、専門家への相談から過払い金の返金に至るまでの流れを簡単にご紹介すると次の通りです。一般的に、裁判の場合は、第1審で終わる場合は、半年から1年くらい、また示談交渉の場合は3か月から半年くらいの期間が目安となります。
- 1. 専門家への相談
- 2. 1.で納得がいったら専門家への依頼
- 3. 過払い金の調査(ご利用記録の確認・引き直し計算)
- 4. 示談か、訴訟か、方針の決定と訴訟の提起
(訴訟の場合)
- 5. 裁判所に提出する書面の作成などの準備
- 6. 裁判所で口頭弁論を何回か行い、多くは和解により判決まで行かずに終了する。しかし、場合によっては判決・控訴審まで行くこともある
(示談交渉の場合)
- 7. お借入先との交渉
- 8. 条件がまとまれば和解契約を締結、返金をしてもらう。まとまらない場合、訴訟を起こすこともある。
まとめ:過払い金の無料診断で目安を把握するのがおすすめ
以上のとおり、過払い金の金額の目安は、一律には出せませんが、過払い金の返金実績が豊富な事務所の無料診断を受けてみると、ご自身の場合の目安がつかめて今後の進め方を検討しやすくなります。
また、過払い金の返金に実績が豊富で、借金の整理も扱う事務所に相談すると、調査や引き直し計算の代行はもちろんですが、返済に関する相談も並行して進めたい・ほかにも心配事がある、という場合になんでも相談ができて心強いのです。
気軽に無料診断・相談をうけてみましょう。そして、しっかり過払い金は返してもらいましょう。
過払い金の対象になるかならないか迷ったら専門家に相談を
中央事務所では、過払い金返金の対象であるかどうか、また過払い金はいくらあるのかの診断を無料で行っております。
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WEBからは24時間いつでも受付しておりますので、是非一度、お気軽にご相談いただければと思います。
本記事の監修/
司法書士法人 中央事務所 司法書士 伊藤竜郎
中央事務所はお客さまのお悩みに寄り添い、常にお客さまの目線に立ってアドバイス、解決するためのお手伝いをさせていただきます。
借金、過払い金請求のことでお悩み、お困りの方、ぜひお気軽に中央事務所にご相談ください。
投稿日:2023年2月28日