公開日 2023.08.25
更新日 2024.01.29
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コールセンターの評価指標 NPS とは?分析手法や向上する方法を解説
商品・サービスを利用したお客様が「人にどれだけ薦めたいか」を評価する指標として「NPS」があります。
「NPSが高い=お客様に愛着と信頼を得ている」ことを意味するため、顧客満足度の向上、経営改善を目指しているのであれば、積極的に導入すべき指標と言えるでしょう。
なかでもコールセンターでは、NPSを活用した対応品質の評価・改善のプロセスが有効です。NPSを向上させられれば、リピート率が上がり、ポジティブな口コミにより新規顧客の獲得にもつながります。
しかし、「NPSとはどのようなものなのか」「分析方法がわからない」など、そもそもNPSについて詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、コールセンターの評価指標NPSの概要と向上させる重要性に併せ、分析手法や改善方法について解説します。
コールセンターの評価指標となるNPSとは?
NPSとは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略です。
商品・サービスの利用や購入などの顧客体験をもとに、家族や知人にどれくらい薦める可能性があるかを数値化した指標です。
以下では、コールセンターにおけるNPSの役割と、似て非なる「顧客満足度(C-SAT)」との違いについて紹介します。
NPSとは?コールセンターにおける役割
コールセンターにおけるNPSは、主に応対満足度を測定するために使用され、サービス内容・対応品質の把握と改善内容を明確にする重要な役割を果たします。
具体的には、電話対応後にオペレーターの対応を受けて「今後、このサービスを身近な人におすすめする可能性はどれくらいありますか?」と質問し、以下のように推奨度合いを評価してもらいます。
● 9~10点:推奨者(ロイヤリティが高い)
● 7~8点:中立者(満足しているが受け身)
● 0~6点:批判者(企業や商品に対し不平不満を抱いている)
評価をもとに、「推奨者(%)-批判者(%)」と計算することでNPSの算出が可能です。
数値を把握し、改善・向上を目指すことで、コールセンターの信頼度アップやリピート率の向上、新規顧客獲得に期待できるでしょう。
顧客満足度(C-SAT)との違い
NPSと類似する指標として、顧客満足度(C-SAT)があります。
顧客満足度(C-SAT)とは、お客様が商品・サービスを利用した直後に「どの程度満足しているか」を測り、「直近の満足度」を表す指標です。
一方、NPSは「今後、どれくらい人におすすめしたいか」といった「推奨度」を測る指標であり、直近も含め「長期的な満足度」を表します。
つまり、顧客満足度(C-SAT)は現時点での満足度であるのに対し、NPSは将来性を見込んだ満足度の指標であるという違いがあります。
コールセンター運営の長期的な収益性や満足度を図るには、NPSを計測して施策を練ることが重要です。
コールセンターにとってNPSを向上させる重要性
コールセンターが、NPSを向上させる重要性は以下の通りです。
● 解約率の低下
● 顧客単価の引き上げ
● リピート率の改善
● サービス・商品の拡散力促進
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
解約率の低下
NPSが向上することで、サブスクリプションやレンタルサービスなどの解約率低下につなげられます。
「NPSが高い=(企業や商品・サービスに対し)愛着がある」ということを意味し、心理的に「解約する」という気持ちになりにくい傾向があるからです。
さらに、NPS向上のプロセスには、NPS調査のフィードバックを収集し、問題を解決するところまで含まれています。
お客様から寄せられた問題点を特定し、商品・サービスの改善に役立たせることで、今後解約の検討になり得る問題を解消できます。それにより、継続して商品・サービスを利用する可能性を高め、解約率低下につなげられるのです。
顧客単価の引き上げ
NPSが高い状態は、商品・サービスを推奨してくれる「推奨者」が多いということです。
企業や商品・サービスの「熱烈なファン」でもあるため、多くの商品を購入してくれる可能性が高まり、自ずと顧客単価の引き上げにつながります。
具体的には、以下のパターンで顧客単価の引き上げに期待できるでしょう。
● より高価な商品・サービスを購入してくれる
● すでに購入している商品と関連性の高いアイテムをプラス購入してくれる
このようにして、個人の購入単価が上がることで、収益の増加を見込むことが可能です。
顧客単価の引き上げ以外でも、アウトバウンド業務においては、商品案内の電話を好意的に受け入れてくれたり、提案した商品が購入されやすかったりするなどのメリットがあります。
リピート率の改善
NPSが向上すると商品・サービスの継続的な購入につながり、リピート率の改善に期待できるでしょう。
とくに、対象の商品・サービスの普及度が高かったり、機能や品質が競合と似通っていたりする場合には、効果的といえます。なぜなら、差別化が困難な商品において、ほんの少しの変化やきっかけで、他社に乗り換えてしまう可能性があるからです。
そこで、NPSの向上を図ることで多くのお客様が「購入候補」として、自社商品・サービスを第一に思い出してくれるようになり、リピート購入の改善に期待できます。
サービス・商品の拡散力促進
高い評価を付けたお客様は、自ずと商品・サービスの宣伝役として活躍してくれるでしょう。
近年、SNSの普及により、お客様のリアルな口コミやレビューはより重視される傾向にあり、自社で打つ広告以上の効果をもたらす場合もあります。
商品・サービスを提供している企業ではなく、実際に購入・利用したお客様の口コミやレビューは「第三者からの評価」として、心理的に信頼性や信憑性が増す効果があるからです。
このように、NPSの向上は商品・サービスを利用したお客様だけでなく、口コミやレビューなどを見た他者にも影響する点も大きなメリットといえます。
NPSの分析方法
NPSの分析には、「定性分析」と「定量分析」の2つの方法があります。目的に応じて使い分けることで、お客様が抱えるニーズや問題を深く理解することが可能です。
ここでは、それぞれの概要について説明します。
定性分析
定性分析とは、数値では表せない質的データに基づいて行う分析のことです。「数値化できないお客様の心情を理解するもの」と考えると分かりやすいかもしれません。
定性分析の例としては、自由回答のアンケート、口コミ、レビューなどが挙げられます。コールセンターにおいては、推奨の度合いを11段階で評価してもらう際のコメント欄に、「評価理由もあわせてお答えください」と記載することで定性分析を行えます。
定性分析の結果を活用することで、商品・サービスの改善点を特定し、顧客満足度を向上させるためのアクションプランが立てやすくなるでしょう。
定量分析
定量分析とは、NPSのスコアを数値的に分析・評価する方法です。NPSの回答から数値的な統計情報を取得し、グラフにするなどデータの可視化を通じて結果を明確にします。
しかし、分析目的によっては、NPS数値だけでは足りない要素が出てくる可能性もあります。そのため、分析目的に応じた切り口から「選択式アンケート」を加えて調査することが必要です。
具体的には、以下のような切り口で質問を投げかけるとよいでしょう。
● アフターフォロー体制はどうか
● コストパフォーマンスは良いか
● カスタマーサポートは充実しているか
● 魅力的なアイテムがそろっているか
● 購入までの操作方法が簡単であったか
これらの要素とNPS調査で判明した数値をグラフ化することにより、数値的な傾向やNPSに影響を与えている事柄が明らかにしやすくなります。
NPS実施の際の注意点
NPSは、対応品質の向上や商品・サービスの改善に役立てたい指標ですが、実施する際には以下の点に注意しなければなりません。
● 日本はマイナス平均になりやすいことを考慮する
● 十分なサンプル数を担保し、無回答者は除外する
<日本はマイナス平均になりやすいことを考慮する>
日本においてNPS数値は、マイナス平均になりやすい傾向にあります。理由としては、日本人の特性として極端な評価を避け、当たり障りのない中間評価をしがちであるからです。
「それならば中立者に偏るのでは」と思うかもしれません。しかし、NPSは「0〜11」の11段階評価のうち「0〜6」を「批判者」と分類します。つまり、「4〜6」の中間評価に偏りやすい日本においては、必然的に「批判者」が多くなりマイナス平均になってしまうのです。
これを踏まえ、NPSは単独で見るのではなく、定期的に測定し時系列の推移や競合との相対比較など、他の数値と組み合わせながら把握する必要があります。
<十分なサンプル数を担保し、無回答者は除外する>
NPSの数値はサンプル数が多いほど、正確性がアップすると言われています。具体的には、正確性を±5%程度に抑えたい場合は「400サンプル以上」が必要です。
なお、調査結果のなかには無回答者(回答すべきであるが、回答しない)が存在します。その場合、回答の正確性が担保しにくいため、除外するようにしましょう。
NPS向上の手順・方法
NPSを向上させるためには、以下の手順・方法を理解し実践しましょう。
● NPSに影響している要素の整理
● 影響度順に優先度をつける
● 改善方法を決め、現場への浸透を図る
● 定期的に振り返り、PDCAを回す
それぞれについて、詳しく説明します。
NPSに影響している要素の整理
まず、NPSを向上させるために行うのは、調査結果から問題点を洗い出し、NPSに影響している要素の整理を実施することです。
最初に要素の整理・分析を行うことで、次につながる「影響度順の優先度位」がつけやすくなります。それにより、課題を改善するための行動目標の明確化が可能になり、スムーズかつ合理的にNPSの向上を目指せるでしょう。
なお、どの要素がNPSに影響を及ぼしているかを把握するためには、NPSの他に調査に付随する質問を作成します。その際、自由回答形式にすることで、企業側が想定していない回答や具体性がうまれ、問題点の明確化がしやすくなります。
影響度順に優先度をつける
次に、NPSに影響している要素をもとに、影響度順に優先度をつけてから課題に取り掛かりましょう。
影響度から優先順位をつけることは、リソースや時間を効率的に活用するためにも必要です。なおかつ、すべての問題やニーズを同じ優先順位で扱うと、本当に重要な問題やニーズが見逃される可能性があるので注意しましょう。
優先順位は、商品・サービスの推奨度と、アンケートで得た各要素の満足度との相関値を算出します。その際、ドライバーチャートを活用することで、優先的に改善すべきゾーンの把握が可能です。
具体的には、縦軸を「推奨度」、横軸は「満足度」とし、以下4つのエリアに分けて各項目を見ていきます。
①重点維持項目(右上のエリア):満足度を獲得している、重点的に維持していかなければならない
②優先改善項目(左上のエリア):推奨度への影響が大きいが満足度が低い、最も優先的に対策が必要
③基本維持項目(右下のエリア):推奨度への影響度は高くない
④注意観察項目(左下のエリア):推奨度への影響度、満足度ともに低いが継続的に様子見が必要
改善方法を決め、現場への浸透を図る
優先的に改善すべき課題や問題が見つかれば、改善方法を策定し、それを現場のスタッフに浸透させましょう。なお、コールセンターにおいての「現場」とは、主に「オペレーター」のことを指します。
NPSが向上するために重要なのは、改善へ向けての施策や方針を管理部だけにとどめるのではなく、現場のスタッフにも伝えることです。
なぜなら、もっともお客様とやり取りをする現場スタッフに意図が伝わっていないと、思い通りに改善活動が進められない恐れがあるからです。
適切な浸透の方法としては、データからどのような改善を図ればよいのかを「具体的に」示すようにしましょう。
仮に「お問い合わせ時の応対が悪い」という課題に対しては、単に「感じのよい応対を心がける」という曖昧な内容では改善が難しいといえます。「相手に好意的に感じてもらえるよう、正しい敬語を学びましょう」というように、改善のために今からやるべきことを明確に伝えるようにしましょう。
定期的に振り返り、PDCAを回す
NPSは、単発的に分析・改善施策を行うだけでは向上成果を上げるのは難しいため、定期的に振り返りPDCAを回すことが重要です。
振り返りをするタイミングや頻度に決まりはありませんが、一般的に四半期に一度や半年に一度程度です。
定期的に過去データとリアルタイムの調査結果を比べることで、各取り組みによる成果を明確にし、さらなる改善点が見つけやすくなるでしょう。
それをもとに、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返し行い、NPSの向上を目指すことが大切です。
まとめ
コールセンターにおけるNPSは、主に応対満足度を測定するために使用され、サービス内容・対応品質の把握と改善内容を明確にするための重要な指標です。
オペレーターの対応品質や、取り扱う商品・サービスに対して「身近な人におすすめする可能性はどれくらいありますか?」と質問し、11段階評価で回答を求めます。高い評価を得られれば、継続的な利用や購入単価の向上、サービス・商品の拡散力促進に期待できるでしょう。
しかし、コールセンターの現場におけるNPSの認知度は低く、なおかつノウハウが浸透していないため、利活用が難しいのが実情です。現状、適切にNPSを調査し分析・改善が難しい場合には、電話対応の全般を電話代行サービスに委託するのも有効な方法といえます。
株式会社中央事務所は、専門講習を受けたプロのオペレーターが在籍しており、月間総受電数6万件(※1)、新規入電応対率98%(※2)、さらにカスタマー応対率95%(※3)を維持するなど確かな実績がございます。
コールセンターの業務改善に課題を抱えているのであれば、課題にそったご提案をいたしますので、お気軽にご相談ください。
※1: 月間総受電数6万件
2021年10月1日~10月31日の期間で入電数をCTI出力により、CTIに接続しオペレーター対応をした件数を集計
※2: 新規入電応対率98%
2021年1月~2022年4月の期間でオペレーター対応数を新規入電数で割り算出
※3: カスタマー応対率95%
2022年2月~2022年4月の期間でオペレーター対応数をお客さまからのカスタマー入電数で割り算出
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