顧客のニーズが多様化するにつれ、コールセンターに課せられた役割も年々増加しています。オペレーターの負担を最小限に抑え、業務を効率良く進めるためには「CRMシステム」の活用が欠かせなくなってきています。
そこで今回は、コールセンター向けCRMシステムの機能やメリット・デメリット、また選び方のポイントなどを解説します。
コールセンター向けのCRMシステムとは?
コールセンター向けのCRMシステムとは、顧客の基本情報や対応履歴などを一括で管理するためのシステムのことです。
具体的には顧客の住所、電話番号、年齢、性別などの他に購入履歴や問合せ内容、要望やクレームなどの入電情報を登録することで検索や分析が可能になります。
CRMシステムは、以前から営業活動の分野において利用されてきましたが、コールセンターの命綱である応対品質や業務効率化の向上に欠かせない仕組みとして重要視されるようになりました。
最近はインターネットの普及によりメールやチャットの需要が増加傾向にあるため、CRMシステムを活用した顧客とのコミュニケーションは、コールセンターの強みと言えるでしょう。
コールセンター向けCRMシステムの主な機能
コールセンター向けCRMシステムにはさまざまな機能が設けられています。それぞれの役割を理解し顧客応対に活用することで、業務の効率化を図りながら応対品質の向上に役立ちます。
主な機能をご紹介していきます。
顧客情報と応対履歴の管理機能
CRMシステムの最大の特徴は、顧客情報や応対履歴などを一括で管理できることです。氏名、住所、年齢、電話番号、勤務先などの顧客情報はもちろん、商品の購入履歴やDMの送付履歴などの管理も可能です。
また、つい面倒になりがちな応対履歴も、入力項目をルール化することでリアルタイムに記録することができます。
その結果、顧客データが常に最新の状態に更新されるため、鮮度を重要視するコールセンターにおいて最も大切な機能です。
情報共有機能
CRMシステムにおける「情報共有機能」も便利な機能の一つです。
コールセンターの性質上、スタッフ間の意思統一が難しい場合がありますが、掲示板やお知らせ欄などの情報共有機能を使えばマニュアルの変更や注意事項を周知することができます。
また、対応に困った場合やリアルタイムに回答が欲しい場合は、チャット機能でSVに相談することも可能です。
情報をこまめにチェックする習慣は必要ですが、情報共有するためには便利な機能です。
チケット管理機能
最近のCRMシステムには「チケット管理機能」という便利な機能が搭載されています。
「チケット管理」という言葉は耳慣れないかもしれませんが、目的を達成するために必要な一つ一つのタスクのことを「チケット」として考えるとわかりやすいでしょう。
このチケットには「未対応」「対応中」「解決済」などのステータスを付けられるので、対応漏れを未然に防ぐ、中途半端になっている案件を発見するなど、対応の可視化に優れた機能です。
CTI連携機能
CRMシステムとCTIを連動させ、受電と同時に顧客情報をポップアップさせたり、顧客情報の画面からワンクリックで発信したりできるのが「CTI連携機能」です。
オペレーターは受電した段階で相手の情報が確認できるので、聞き取った情報をもとに顧客情報を探すという手間が省けます。
また、架電する際も電話番号を手動で入力せず顧客リストから架電できるので、かけ間違いの心配がありません。
CTI機能は、生産性や応対品質向上のためには欠かせない機能です。
データ分析・集計機能
データ分析・集計はコールセンター業務にとって欠かせない作業です。オペレーター1人1人の応答数や応答時間、後処理時間などのデータを分析することによって、解決すべき課題が明確になるからです。
CRMシステムには優れたデータ分析と集計機能が設けられているため、データベースから効率良くデータを分析し集計することが可能です。
過去の対応履歴や購入履歴が一元化されているCRMシステムだからこそできる優れた機能と言えるでしょう。
ワークフロー機能
CRMシステムにおける「ワークフロー機能」とは、顧客対応を他部署へ依頼する時やエスカレーションする際に、業務フローに応じた課題作成や進捗管理、レポート作成を自動で行う機能です。
ワークフロー機能を使うことで他部署にスムーズな伝達ができるとともに、作業効率が格段にアップします。
またチケット管理機能と併用して、行き詰っている案件のフォローや課題の優先順位を調整すれば、生産性の向上にも大いに効果を発揮します。
コールセンター向けCRMシステムを使うメリット
顧客と直接コミュニケーションが取れるコールセンターにおいて、CRMシステムの導入はコールセンター、オペレーター、顧客それぞれに大きなメリットがあります。
ここでは代表的な4つのメリットについて解説します。
顧客情報を踏まえた対応ができる
CRMシステムを導入する最大のメリットは、最新の顧客情報を元に対応ができることです。顧客情報や応対履歴が一元化されているCRMシステムは、リアルタイムに情報が更新されるため、顧客のニーズに合った質の高いサービスの提供が可能です。
顧客側にとっても「自分のことを理解されている」と感じる事は大きな満足につながります。
応対品質を向上させるために、CRMシステムの導入は大きなメリットがあると言えるでしょう。
必要な情報が一元化されアクセスもしやすい
必要な情報が一元化されスピーディーにアクセスできるのも、CRMシステムの大きなメリットです。
実際、会話中に必要な情報を得るために顧客を待たせる、確認ができる部署にたらい回しにするなどクレームにつながるケースも稀ではありません。オペレーターにとっても、システムが使いにくいことが離職の原因につながるケースもあるほどです。
情報の一元化とアクセスのしやすさは、質の高いサービスを提供するためにとても重要といえます。
顧客の声を改善に活かしやすくなる
情報の一元化により、顧客の声を他部門で活用できるのもCRMのメリットの一つです。コールセンターにおいて商品やサービスに対する不満やクレームなどは、サービスの改善や売上アップにつながる有益な情報です。
例えば営業部門と情報を共有し、顧客の声に寄り添ったクロスセルやアップセルを実施することで売上アップが期待できます。
また顧客の年齢層や性別、行動パターンなど分析すれば、今後の商品開発に活かすこともできるでしょう。
オペレーターの教育や早期戦力化を図れる
オペレーターにとって、相手の情報を確認した上で対応できるのは大きな安心につながります。ただでさえ覚えることが多いコールセンターにおいて、顧客特定や情報の抽出が難しければ新人教育もままならないからです。
その点、CRMシステムであれば新人でもスムーズな対応ができるので、短期間で効率よく戦力化を図ることが可能です。
また、録音した音声データをもとに顧客対応モデルを作成し、オペレーター教育に活用するのも効果的です。
コールセンター向けCRMシステム導入のデメリット
コールセンター向けCRMシステムを検討する際は、メリットだけでなくデメリットも十分理解した上で導入を決定することが重要です。
ここでは、コールセンター向けCRMシステム導入のデメリットを3つ解説します。
導入と保守運用費用がかかる
CRMシステム導入にあたり最もネックになるのは、導入にかかる初期費用や保守運用費用がかかることです。
CRMシステムには「クラウド型」と「オンプレミス型」があります。
クラウド型はサーバーを自社で用意する必要がないので導入コストは抑えられますが、利用アカウントごとにサービス利用料が異なります。
一方、オンプレミス型は自社内にサーバーを用意する必要があるため導入コストが高めです。
いずれにせよ費用がかかるため、導入の際はCRMシステムを数社比較して検討すると良いでしょう。
導入に一定の時間を要する
CRMシステム導入は時間と労力のかかる作業です。第一に自社に最適なシステムを探すのに時間がかかること、また導入後もメリットを感じるまでには一定の期間が必要だからです。
仮に応対品質向上が目的で導入した場合も、一定のデータが蓄積されるまでは効果が見えにくいという欠点もあります。
自社の課題は何か、またその課題を解決するためにCRMシステムをどのように活用するかのイメージを明確にした上で導入を検討することが大切です。
現場への浸透を行う必要がある
どんなに便利なシステムでも、しっかりと現場に浸透させなければ導入した意味がありません。ほとんどのCRMシステムは難しい技術を必要としませんが、マニュアルの準備や導入時のサポートなど事前の段取りが必要です。
特に、それまでメモ用紙などのアナログ媒体を使っていたコールセンターであれば、システム教育の時間も確保しておく必要があります。
導入コストを試算する際には、導入後の教育まで視野を入れて予算を計上することが重要です。
コールセンター向けCRMシステムの比較ポイント
CRMシステムは非常に便利なツールですが、自社に合ったCRMシステムを選ぶためには、さまざまな角度から比較検討し正しく活用することが大切です。
ここでは、CRMシステムを選ぶ際のポイントを6つ解説します。
利用可能な機能の範囲
現在、さまざまなCRMシステムが存在しますが、コールセンターによって求めるものは異なります。顧客情報や応対履歴の登録をメインに考えている場合もあれば、データの分析や集計に重点を置くコールセンターもあるでしょう。
システムによってはチケット管理機能やチャットを備えていないものもあるため注意が必要です。
また、CTIや既存のシステムとの連携機能はコールセンター業務の効率化にとって欠かせないものであり、積極的に導入したい機能の一つです。
導入規模の大きさ
CRMシステムを導入する際、導入規模の大きさを考えることは非常に重要です。
例えば、クラウド型のシステムは導入コストが低い反面、利用アカウントごとにサービス利用料金が発生します。導入する部署や人数を把握しておかなければ、システムの維持に必要なコストを割り出すことができません。
導入の効果を見極めてから徐々に増やしていくというのであれば、利用規模を柔軟に変更できるタイプを選んでおくほうが賢明です。
対応チャネルの幅広さ
最近のコールセンターは電話だけでなくメールやチャット、SNSなど、さまざまな対応チャネルを持っています。多様化する顧客のニーズに合わせて、今後ますます増えていくことが予想されています。
せっかく導入したのにCRMシステムに接続できないチャネルがあれば、一元管理ができないため効果的ではありません。
検討する際は、システムがどのチャネルに対応しているか、今後はどの程度増えていくかなどを確認しておく必要があるでしょう。
カスタマイズ性
CRMシステムの「カスタマイズ性」も比較する際のポイントの一つです。カスタマイズ性の高いシステムであれば作業効率の向上が期待できます。
例えば、Gmailと連携して自動的にメールを取り込む、カレンダーアプリと連携してスケジュールを同期させるなど、入力の負担を減らすことができます。
自社で管理したい情報が多いコールセンターほど、システムを自社向けにカスタマイズできるか否かが導入の決め手になるはずです。
画面の操作性
CRMシステム選びにおいて「使いやすさ」は最も重要です。どんなに優れた機能が備わっていても操作がスムーズでなければ効果が出にくいだけでなく、逆に手間が増えてしまわないとも限りません。
実際に使ってみないとわからない部分もありますが、できる限り実際のオペレーションをイメージしながら比較することをおすすめします。
システムによっては「トライアル期間」を設けているものもあるので、活用してみるのも良いでしょう。
セキュリティの高さ
大量の顧客情報を扱う企業としてセキュリティ対策は不可欠です。特にインターネット上で運用するクラウド型の場合は、不正アクセスやフィッシングに対するセキュリティ対策が十分なCRMを選ぶことが大切です。
とはいえ最近のCRMシステムは、ネットワークの暗号化、24時間体制での監視などが標準装備されているものが多く、セキュリティ対策を重要視していることが伺えます。
どのシステムを選ぶにせよ、セキュリティの高さは重要なチェックポイントです。
まとめ
コールセンター向けのCRMシステムは、業務効率化を進める上で絶大な効果を発揮します。ただし、どんなに素晴らしいシステムであっても正しく使うための人材教育が欠かせません。
コールセンターの人材教育に特化した「中央事務所」は、専門講習を受けたプロのオペレーターが在籍しており、月間総受電数6万件(※1)、新規入電応対率98%(※2)、さらにカスタマー応対率95%(※3)を維持するなど確かな実績がございます。
CRMシステムの効果を最大限発揮するために、優秀な人材を揃えた外部委託を検討してみてはいかがでしょうか。
※1: 月間総受電数6万件
2021年10月1日~10月31日の期間で入電数をCTI出力により、CTIに接続しオペレーター対応をした件数を集計
※2: 新規入電応対率98%
2021年1月~2022年4月の期間でオペレーター対応数を新規入電数で割り算出
※3: カスタマー応対率95%
2022年2月~2022年4月の期間でオペレーター対応数をお客さまからのカスタマー入電数で割り算出