コールセンターシステムは、業務の効率化や顧客満足度向上に必要不可欠なツールといえます。
なかでも注目されているのが、「クラウド型」コールセンターシステムです。導入のしやすさや利便性の高さなど、多くのメリットが得られます。しかし、デメリットがあることも留意しておかなければなりません。
本記事では、コールセンターシステムの概要とクラウド型を導入するメリット・デメリット、併せて選び方のポイントをご紹介します。クラウド型コールセンターシステムを導入する際の、情報収集や意思決定にお役立てください。
コールセンターシステムとは?
コールセンターシステムは、顧客との円滑なコミュニケーションと業務効率の向上を補助するためのシステムです。主な機能には、通話の受付・転送、顧客情報の一元管理、統計データの収集などがあり、近年では、音声認識や自動応答などの人工知能技術を活用した機能も追加されています。
なお、コールセンターシステムには「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類の導入形態があります。ここでは、それぞれの概要について見ていきましょう。
オンプレミス型
オンプレミス型は、自社内部にコールセンターシステムを保有し、運用と管理を行います。具体的には、自社でシステムのハードウェアとソフトウェアを購入し、構築・運用を実施します。
データ管理やシステムのカスタマイズ性が柔軟であり、企業ニーズに合わせた機能の導入が可能です。ただし、高い初期投資と維持費用がかかります。
クラウド型
クラウド型は、自社内にシステムの導入・構築が不要で、インターネット経由で手軽に利用できます。具体的には、インターネット環境とログイン情報があれば、場所に制約されずにどこでも利用することが可能です。
クラウド型のメリット・デメリットは後述しますが、時間・費用面から導入しやすいという利点がある一方で、データのセキュリティやプライバシー保持に関する懸念も存在します。
クラウド型コールセンターシステムのメリット
クラウド型コールセンターシステムには、以下のようなメリットがあります。
● コストを抑えられる(導入時・運用時)
● コスト調整・管理がしやすい
● 導入に時間がかからない
● テレワークに対応しやすい
● BCPに繋がる
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
コストを抑えられる(導入時・運用時)
クラウド型の最大のメリットは、システム導入時と運用時のコストが抑えられる点です。
導入時のコスト面では、オンプレミス型と異なり、ハードウェアの購入や、セットアップなど構築に必要な設備・導入費用がかかりません。なぜなら、サービス提供者が構築・管理しているシステムを利用するためです。
また、システムの保守・更新やセキュリティ対策など、管理に関連する作業もサービス提供者によって行われるため、自社内での運用やメンテナンスにかかる負担・コストも削減できます。
導入時・運用時にかかるコスト負担を軽減し、効率的なコールセンター運営が実現できるでしょう。
コスト調整・管理がしやすい
メリット2つ目は、コストの調整・管理がしやすい点です。
オンプレミス型では、上限ライセンス数を決めてしまうと通常、利用の有無に関わらず、長期間にわたって同じ料金が発生します。一方クラウド型は、実際に利用したサービス使用量に基づいて料金が発生します。つまり、無駄な経費を削減するなど、コスト管理が容易になるということです。
またクラウド型は、需要の変動に柔軟に対応できるため、繁忙期や閑散期においても運用コストを効果的に調整できます。仮に、需要が増えた場合には追加のライセンスを活用し、需要が減った場合には削減することで、適切なコスト管理が可能です。
導入に時間がかからない
メリット3つ目は、導入に時間がかからない点です。
オンプレミス型では、ハードウェアの購入や設置、構築、試運転などに多くのリソースと時間を要し、運用開始までに2か月程度の期間が必要といわれています。一方クラウド型は、すでにシステム基盤がサービス提供元で整備されているため、ハードウェアの調達やセットアップの手間が省けます。ユーザートレーニングを含め、運用開始まで1か月程度が目安です。
また、必要なソフトウェアやアプリケーションもクラウド上で提供されており、必要な時に必要な範囲だけシステムの利用が可能です。
煩雑な手続きや長期間のプロジェクトを避け、迅速にコールセンターシステムを導入し、運用を開始できます。
テレワークに対応しやすい
メリット4つ目は、テレワークに対応しやすい点です。
オンプレミス型では、オフィス内に設置された専用のハードウェアやシステム基盤、回線の設置が必要となるため、物理的な拠点を置く必要があります。しかし、クラウド型は、インターネットを通じてシステムにアクセスするため、場所に制約されずに利用できます。
つまり、テレワークの環境が求められる場合、必要なのはインターネット接続とパソコンなどのデバイスだけです。オペレーターは、自宅や遠隔地からでもクラウド上のコールセンターシステムにアクセスすることが可能です。
この柔軟性により、場所に縛られずに働けるため、市や県をまたいで全国から人材を確保でき、人材不足の解消も期待できます。
BCPに繋がる
メリット5つ目は、BCPにつながる点です。BCPとは、企業が災害や緊急事態に直面した際に、被害を最小限に抑えながらも事業を続けるための計画です。
オンプレミス型では、重要なデータが自社内に保管されます。この場合、自然災害などで拠点が被害を受けると、システムやデータの早期復旧・事業継続が困難になります。
一方、クラウド型であれば、自然災害が発生しても拠点の被害を心配する必要がありません。重要なデータがクラウド上で管理され、災害で障害が発生した場合でも、データの安全性と可用性が確保されるためです。このことからクラウド型は、BCPをサポートするための効果的なツールといえます。
クラウド型コールセンターシステムのデメリット
クラウド型コールセンターシステムの導入にあたって、以下のデメリットを考慮する必要があります。
● カスタマイズがしにくい
● 連携システムが限られる
● オペレーターの育成効率化
● 問い合わせ数の削減
● クレーム発生率などの改善
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
カスタマイズがしにくい
デメリット1つ目は、カスタマイズがしにくい点です。
クラウド型は、サービス提供者が管理し、複数のクライアントに共有されるため、個別の要件に合わせたカスタマイズが限定的です。要するに、特定の業務プロセスや要件に合わせてシステム調整をするのが難しいことを意味します。
たとえば、独自のワークフローやデータベースの統合、特定のレポートや分析機能の追加などが必要な場合、クラウド型ではそれらの要求に完全に対応することは難しいかもしれません。
ただし、追加費用や技術的な知識の要求が伴う場合がありますが、サービスによってはカスタマイズの柔軟性や拡張性が高いシステムもあります。
連携システムが限られる
デメリット2つ目は、連携システムが限られる点です。
クラウド型は、連携システムに関しても、サービス提供者にすべて委ねられるという制約があります。つまり、連携を希望する他のシステムやアプリケーションは、提供している範囲内でのみ可能ということです。
自社が使いたいシステムが連携に対応していない場合、コールセンターシステムの導入による顧客満足度の向上や業務効率の改善が十分に実現されず、期待通りの効果が得られない可能性があります。
連携が必要なシステムについては、事前にサービス提供者のサポート範囲やカスタマイズの可否を確認することが重要です。
オペレーターの育成効率化
デメリット3つ目は、システムの利用に際して、オペレーターの育成が難しい点です。
クラウド型コールセンターシステムの導入に際して、オペレーターがシステムを効果的に活用するための教育・コストが必要です。具体的には、オペレーターがシステムを使いこなせる状態になるまでの研修やトレーニングなどに、教育とコストが発生することを考慮しなければなりません。
また、一部のクラウド型システムは、操作を覚えるのが難しい、ミスが多発しやすい、使い勝手が悪いなどの状態に陥るケースもあります。その場合、オペレーターへの教育コストが増加する可能性も否めません。
クラウド型を選択する際には、オペレーターの教育やトレーニングに十分なリソースを割く必要があることを念頭に置き、なおかつオペレーターにとって使いやすい環境を提供することが大切です。
問い合わせ数の削減
デメリット4つ目は、問い合わせ数の削減が難しいという点です。
本来コールセンターシステムは、効率的な問い合わせ対応や顧客サポートを提供するための機能を備えていますが、問い合わせ数の削減に直接的に貢献することは難しい場合があります。とくにクラウド型においては、情報量に制限を設けているケースがあり、システムの性能や容量が不足している場合、大量の問い合わせを効率的に処理することが難しくなるでしょう。
たとえば、問い合わせ過多な状況や繁忙期においては、限られたリソースしか提供できず、電話の取りこぼしや応答の遅延が発生する可能性も考えられます。クラウド型を導入する際には、適切なシステム容量と性能の確保、状況に応じた対応策の柔軟性、問い合わせ数を減らす仕組みを検討する必要があります。
クレーム発生率などの改善
デメリット5つ目は、クレーム発生率などの改善が難しい点です。
クラウド型のコールセンターシステムでは、データや情報が外部のサービスプロバイダーに保存されるため、データの制御や可視性に制約が生じることがあります。とくにクレーム発生率の改善には、顧客データや通話ログなどの詳細なデータを分析し、問題の特定や傾向の把握が必要です。しかし、クラウド環境ではデータの制御やアクセスが限定されるため、改善が難しくなります。
このように、クラウド型コールセンターシステムは、顧客対応や問題解決に関する機能を提供していますが、クレーム発生率などの改善には、直接的な良い影響を与えることは難しいといえます。クレーム発生率の改善を目指す場合は、クレーム処理に特化した機能や、柔軟にカスタマイズできるシステムを選ぶことが大切です。
クラウド型コールセンターシステムの選び方
クラウド型コールセンターシステムを選択する際には、以下の要素を考慮しましょう。
● 自社の業務形態に合うか
● 利用したい規模に合うか
● 機能が十分か
● セキュリティ面が十分か
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
自社の業務形態に合うか
クラウド型を選ぶ際に最も重要なのが、自社の業務形態に合うかどうかです。
以下の違いを参考に、インバウンド・アウトバウンドのどちらに重点を置くのかを確認し、適したシステムを選びましょう。
<インバウンド向け>
インバウンドは、顧客からの入電に対応する業務形態です。商品・サービスの注文受付や、修理のサポート依頼、クレーム対応などが主な業務です。インバウンドに対応したシステムとして、自動応答システム(IVR)やコールキューなどの機能が備わっており、顧客満足度向上や業務効率向上に向けた仕組みが整っています。
<アウトバウンド向け>
アウトバウンドは、コールセンターから顧客へ架電を行う業務形態です。アポイントメントの獲得、市場調査などが主な業務です。アウトバウンドに対応したシステムとしては、オートコールやプレディクティブダイヤリングなどの機能が備わっており、効率的な電話の発信やオペレーターとの接続を行うための仕組みが整っています。
利用したい規模に合うか
クラウド型を選ぶ際には、利用したい規模に合っているかどうかも確認しましょう。
クラウド型は、一般的に同時に利用できるライセンス数に制限を設けています。そのため、自社の規模や運用計画に基づいて、必要なエージェント数がシステムの制限範囲内に収まるか確認する必要があります。自社に合った適切な規模を選ばないと、コールセンターの運用が困難になる状況も避けられないので注意しましょう。
また、将来的な拡張や縮小の可能性も考慮することもポイントです。ビジネスの成長や変化に伴い、コールセンターの規模も変動する場合があるため、柔軟なスケーリングが可能なシステムが望ましいといえます。
利用したい規模に合うか、将来的な変更に柔軟に対応できるか、これらを確認したうえでシステムを選ぶことで、長期的な運用の安定性を確保できるでしょう。
機能が十分か
クラウド型を選ぶ際には、自社の要件や業務ニーズに適した機能を備えたシステムを選ぶことが重要です。十分な機能を持つシステムを選ぶことで、効率的な顧客対応の最大化が実現できるでしょう。
以下に、コールセンター業務に欠かせない、代表的なシステムを一部紹介します。
<オムニチャネル対応>
システムが複数のコミュニケーションチャネル(電話、メール、チャット、SNSなど)を統合的に管理できるシステムです。顧客が利用する、さまざまなチャネルに対応していることで、シームレスな顧客体験を提供できます。
<自動応答機能>
オペレーターの負荷を軽減するためのシステムです。自動音声応答(IVR)やチャットボットなどの活用によって、効率的な顧客対応を実現できます。
<コールルーティング>
着信を適切に転送するシステムです。顧客の問い合わせ内容や優先度に基づいて、最適なオペレーターにコールを振り分けられます。
セキュリティ面が十分か
クラウド型は、インターネット上でデータ管理しているため、セキュリティ面が十分に保護されているか確認しましょう。セキュリティ対策は、コールセンターにおいて欠かせない要素であり、慎重な選択が求められます。
以下の点に留意し、セキュリティ面を評価することが重要です。
● サービスプロバイダーの信頼性: セキュリティに関する実績や評判を調査し、信頼性の高いサービスプロバイダーを選ぶ
● データの保護と暗号化: データの保護や暗号化、パスワードポリシーなどのセキュリティ機能が実装されているかを確認する
● アクセス制御と認証: 権限のない者からのアクセスを軽減するために、システムへのアクセス制御や認証機能が備わっているかを確認する
● バックアップと復旧: 万が一のデータ喪失や、システムのダウンタイムを最小最に抑えるため、データのバックアップと復旧策が適切に実施されているかを確認する
まとめ
クラウド型コールセンターシステムは、インターネットを介して提供されるコールセンターシステムです。オンプレミス型と比べ、導入時や運用時のコスト削減や、導入時に時間がかからないことから、コスト効率の良い運営が可能です。
しかし、カスタマイズ性が制限される場合や、連携システムが限られる場合があるなど、デメリットも存在します。顧客満足度向上や業務効率化のためにコールセンターシステムの導入を検討しているのであれば、電話代行サービスも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
中央事務所は月間の総受電件数6万件(※1)、新規入電の応対率98%(※2)という豊富な実績を持つ電話代行サービス会社です。カスタマー応対率も95%(※3)を維持しており、手厚いサポート体制を整えています。
また中央事務所では、最短翌日から受架電サービスの開始が可能です。専門講習を受けたプロのオペレーターが、高品質かつ臨機応変な対応で顧客接点を担います。企業様のご要望に合わせたプランをご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
※1: 月間総受電数6万件
2021年10月1日~10月31日の期間で入電数をCTI出力により、CTIに接続しオペレーター対応をした件数を集計
※2: 新規入電応対率98%
2021年1月~2022年4月の期間でオペレーター対応数を新規入電数で割り算出
※3: カスタマー応対率95%
2022年2月~2022年4月の期間でオペレーター対応数をお客さまからのカスタマー入電数で割り算出