コールセンターには、商品・サービスの注文やサポート希望、クレーム・苦情など、さまざまな声が集まります。それらを適切かつ効率的に処理することを目的に、感情分析を導入するセンターが増えてきています。
しかし、いざ「自社でも感情分析を導入して、業務の効率化や顧客対応の改善を目指したい」と思っても、仕組みや実際の活用シーンについて疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、感情分析の概要と導入するメリット、併せて利用イメージについて紹介します。コールセンター運営に課題を抱えている方は、ぜひお役立てください。
感情分析とは
感情分析とは、通話内容から顧客やオペレーターの感情を自動的に判別する技術です。音声認識技術や自然言語技術などのデジタル技術と人工知能を利用して、言葉のトーンや表現方法、単語の選択などから、人の感情状態を分析します。
以下では、感情分析の仕組みや出来ること、コールセンターで注目度が高まっている理由について解説します。
感情分析の仕組み
コールセンターにおける感情分析は、以下のような仕組みで実現します。
1. 音声データやテキストデータを対応内容から収集
通話を録音した音声データやメールやチャットなどで受けたテキストデータを収集します。
2. 収集したデータから、感情を判断するための特徴量を抽出
声の大きさやトーン、話す速度、口調、温度感などから感情を判断するための特徴を数値化します。
3. 感情分類のアルゴリズムを適用して、感情を分類
特徴量を感情分類のアルゴリズムに適用し、感情を分類します。代表的な感情分類には、「興味」「驚き」「喜び」「怒り」「悲しみ」「嫌悪」などがあります。
4. 分析結果を可視化し、サポート提供に役立てる
感情分類の結果を分析レポートとして可視化し、基準のデータを蓄積します。基準のデータを蓄積することで、正確な人間の感情が読み取れるようになり、より実践で活用しやすくなるでしょう。
これらの仕組みから得られた感情分析の結果は、オペレーターに共有し、適切なアクションを取るためのサポート提供に役立てます。
感情分析でできること
感情分析でできることは、以下の通りです。
<顧客の感情状態の把握>
顧客とオペレーターの通話から感情分析を行うことで、顧客が抱く感情状態を把握することが可能です。顧客の感情把握は、要望や問題を理解するために役立ちます。
<問題の特定>
クレームや苦情を受けた際、顧客が不満を抱いている原因や、不快感や不安感を特定することができます。迅速な問題解決や二次クレームを防ぐ策として、非常に有用な方法といえるでしょう。
<応対品質の改善>
感情分析は顧客にだけでなく、オペレーターの感情を読み取ることも可能です。オペレーターが対応中に抱えているストレスや不安などの感情を読み取り、管理者は適切なサポートが行えるようになります。
感情分析の注目度が高くなっている理由
コールセンターにおいて、感情分析の注目度が高くなっている理由には、以下の事柄が考えられます。
<顧客満足度向上への期待>
感情分析をもとに、トークスクリプトの改訂やマニュアル修正を適宜行うことで、現状よりも高品質な対応を可能にし、顧客体験の向上を目指せます。結果として、顧客満足度向上も期待できることから、感情分析の注目度は高まっています。
<AI技術の進化>
AI技術の進化により、感情分析が高度化し、より精度の高い分析が可能になってきています。これにより、慢性的な人手不足によって顧客対応に追われるコールセンターにおいて汎用性が高まり、注目を浴びるようになりました。
<コミュニケーションコストの削減効果>
互いの表情が見えない中、声だけで相手の感情を読み取るのは難しく、理解するまで多くの時間を要するケースも少なくありません。しかし、感情分析を活用することで事前に顧客の感情をくみ取り、それに応じた適切な対応が実現できます。このように、コミュニケーションコストの削減を目的に、感情分析は注目を集めています。
コールセンターでの感情分析の活用方法
コールセンターでの感情分析を活用するシーンには、「リアルタイムでの分析」と「問い合わせ対応後の分析」の2パターンが想定されます。それぞれの内容について、以下に詳しく見ていきましょう。
リアルタイムでの分析
感情分析の活用シーンの1つに、リアルタイムでの分析があります。具体的には、通話中に顧客の声のトーンや、オペレーターの言葉遣いなどを分析し、顧客の感情状態だけでなく、注意が必要な応対を発見できます。
たとえば、通話中に顧客のネガティブな感情が読み取れた場合、管理者はトラブル発生の旨をオペレーターに伝えるのと同時に、適切なサポート提供が可能です。これにより、「話が伝わらない」「気持ちを理解してもらえない」というような、ネガティブな感情を悪化させることなく、早期対応・解決により顧客満足度の向上につなげられるでしょう。
問い合わせ対応後の分析
活用シーンの2つ目は、問い合わせ対応後の分析です。電話対応後に通話内容を確認し、顧客の感情状態や傾向を把握します。
具体的には、寄せられた問い合わせ内容をテキストに変換し、そのデータに対して感情分析を行います。顧客の感情状態や問い合わせ内容に含まれる重要なキーワードから、顧客がよく問い合わせるトラブルの内容を把握できれば、商品・サービスの施策改善が効率的に行えるでしょう。
また、通話後に顧客がどのような感情を持ってオペレーターと対話していたのかを分析することで、対応が適切であったのかを振り返ることができ、今後の応対品質向上も図れます。
コールセンターで感情分析を導入するメリット
感情分析を導入するメリットは、以下の通りです。
● 応対品質改善による顧客満足度向上
● 成約率の向上や解約率の低下
● オペレーターの負荷軽減
● スーパーバイザーなど運営側の負荷軽減
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
応対品質改善による顧客満足度向上
感情分析を導入する最大のメリットは、応対品質改善によって顧客満足度の向上に期待できる点です。電話やメール、チャットなどで問い合わせをした際の、顧客の感情状態を分析し、この情報をもとに改善に向けて対策を素早く講じることが可能になります。
たとえば、分析結果から顧客の不満や怒りを感じさせる対応があったと判明した場合には、その原因を特定し、研修内容の整備やマニュアルの復習など、応対品質改善につながる対策を実施します。
また、感情分析によって得られた蓄積データを活用し、顧客満足度向上につながるマニュアル作成をすることで、応対品質の平準化も可能です。応対品質の高低差は、スキルや経験値によって生じやすい傾向にありますが、分析から得たデータを活用することで、応対品質の均一化が実現できるでしょう。
成約率の向上や解約率の低下
感情分析によって、顧客が「どのような気持ちで問い合わせをしたのか」「どのような課題を抱えているのか」を把握し、臨機応変に対応することで成約率の向上や解約率の低下が見込めます。
たとえば、商品・サービスの購入やアポイントの獲得を向けた営業電話を行った際、通話中に顧客の感情が「関心」「期待」というようなポジティブな結果が出た場合には、積極的に商品説明やメリットを伝えることで、相手の関心をさらにひくことが可能です。一方、「不快」「嫌悪感」といったネガティブな分析結果が出た場合には、強引な営業は避けクロージングを行い、次の顧客に架電をします。これにより、購入が見込めない顧客対応を回避し、効率よく成約率を伸ばせるでしょう。
また、感情分析によって問題点を特定した際、改善に役立たせることで、今後解約の検討になり得る問題を解消します。それにより、継続して商品・サービスを利用する可能性を高め、解約率低下に結び付きます。
オペレーターの負荷軽減
オペレーターの音声から感情分析を行うことで、業務負荷の軽減が図れます。
オペレーターは、大量の電話やメールに対し、適切な対応を行うのが主な業務です。なかでも、クレームや苦情を受ける際には、顧客の怒りや不満をそのまま受け止めるわけですから、ストレスを感じやすい業務といえるでしょう。
感情分析を導入することで、オペレーターの精神状態をリアルタイムで把握し、ネガティブ感情が強い顧客からの入電の際には、管理者が率先してフォローするなど、オペレーターに負荷がかかりすぎないよう支援できます。
具体的には、オペレーターの音声から「恐れ」「迷い」「悲しみ」などの感情分析が確認できた場合には、電話対応の交代と併せて、対応終了後にメンタルケアを行うことにより、過大なストレスの抱え込みを回避します。
スーパーバイザーなど運営側の負荷軽減
スーパーバイザーなどの運営側が、各オペレーターの対応を常時モニタリングする必要がなくなり、負荷軽減に期待できます。
スーパーバイザーや運営側は、オペレーターのモニタリングや問題点の把握、改善策の検討など、多岐にわたる業務を担当しています。なかでも、トラブルになりそうな対応を早期に発見するためには、常にモニタリングをしなければなりません。しかし、各オペレーターに対し、このような行動をしていては、多大な業務負担になってしまいます。
そこで感情分析によって、ネガティブな感情が検知された際にだけ、スーパーバイザーや運営側の管理画面にアラート表示できれば、限られたオペレーターの監視だけでよくなり、負担を軽減できます。
コールセンターで感情分析を導入するデメリット
コールセンターにおいて、顧客の発言から感情を分析する技術が導入されることで、業務効率や顧客満足度の向上が期待できます。一方で、コスト面や運用の難しさなど、いくつかのデメリットが存在するのも事実です。
ここでは、代表的な2つのデメリットについて紹介します。
導入コストがかかる
感情分析を導入する際には、導入コストがかかることがデメリットです。搭載機能やシステムの複雑性にもよりますが、一般的には数百万円から数千万円のコストがかかるといわれています。
具体的には、機器やソフトウェアなどの導入費に加え、エンジニアの人件費、システムのカスタマイズや設定変更、保守などにかかる長期的なランニングコストも必要です。コスト以上の成果が得られればデメリットをカバーできますが、万が一、期待する結果に結びつかない場合、大きな損失にもなり得ます。導入する際には、コスト以上の成果を得られるかどうか見極めが重要です。
ルールやマニュアルの浸透が必要
正確に顧客の感情を分析できるよう、ルールやマニュアルの徹底が必要になる点もデメリットといえます。
たとえば、「顧客の感情に応じてどのような対応をすべきか」「感情分析の結果に基づいてどのように改善点を把握していくか」など、具体的な手順やガイドラインを策定する必要があります。加えて、ルールやマニュアルが浸透するまでには、徹底したオペレーター教育やトレーニングが必要になるため、多くの時間を要するケースも少なくありません。
感情分析を導入する際には、ルールやマニュアルの浸透に時間がかかることを念頭に置き、十分に検討する必要があります。
まとめ
感情分析を導入することで、通話内容から顧客やオペレーターの感情を自動的に把握し、適切な対応を行うことができます。感情分析により、顧客満足度や成約率の向上や問題解決の迅速化、オペレーターやスーパーバイザーなどの運営側の業務負荷軽減に期待できるでしょう。
しかし、導入にあたってコスト面や運用方法の難しさなどがあり、慎重な導入が求められます。また、感情分析によるセンター運用は万能ではなく、得手不得手があるため、過度な期待は禁物です。現状、顧客ニーズの把握やサービス改善に課題を抱えているのであれば、電話代行サービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
中央事務所は、専門講習を受けたプロのオペレーターが在籍しており、月間総受電数6万件(※1)、新規入電応対率98%(※2)、さらにカスタマー応対率95%(※3)を維持するなど確かな実績がございます。
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※1: 月間総受電数6万件
2021年10月1日~10月31日の期間で入電数をCTI出力により、CTIに接続しオペレーター対応をした件数を集計
※2: 新規入電応対率98%
2021年1月~2022年4月の期間でオペレーター対応数を新規入電数で割り算出
※3: カスタマー応対率95%
2022年2月~2022年4月の期間でオペレーター対応数をお客さまからのカスタマー入電数で割り算出