公開日 2023.08.18
更新日 2024.01.29
知識
コールセンターの生産性を上げる方法と重要性について
限られたリソースでコールセンター運営を行っていると、入電数が急増した際、お客様からのお問い合わせに対応しきれないケースもあるのではないでしょうか。
電話をかけてもつながらない状態は、顧客満足度の低下を招くだけでなく、機会損失につながってしまうこともあります。
そこで着目すべきなのが、「生産性の向上」です。生産性を上げられれば、限られたリソースのなかでも業務効率や利益の最大化を目指せるでしょう。
今回は、コールセンターにおける生産性の概要と管理に必要となる指標、あわせて生産性向上の方法についてご紹介します。
コールセンターにおける生産性とは?
コールセンターにおける生産性とは、リソース量(人員数やコスト)に対して、どれだけ成果(対応数)を生み出したかを示すものです。
少ないリソースで多くの成果を生み出せれば、生産性が高い状態であるといえます。
なお、生産性を把握し管理するためには、数値で表せる指標が必要です。「スムーズな案内ができているか」「無駄なコストはかかっていないか」などを、後述する指標を用いて確認してみましょう。
しかし、数値だけに着目するやり方はおすすめしません。コールセンター運営で最も重要なことは、お客様に満足してもらうことです。そのため、数値を管理しつつも「お客様のニーズに応えられているか」を常に意識して、生産性を高めていくことが大切です。
コールセンターの生産性管理のための指標
コールセンターの生産性を管理するためには、以下5つの指標について理解する必要があります。
● AHT
● ATT
● ACW
● CPC
● CPH
それぞれの内容や計算式について、詳しく見ていきましょう。
AHT
AHTは、1回の応対に要した平均処理時間を示す指標です。具体的には、「コール開始→(保留を含めた)通話中→通話終了→後処理開始→後処理終了」この一連の流れにどれくらいの時間がかかったかを測ります。
計算方法は、以下のとおりです。
AHT=ATT(平均通話時間)+ACW(平均後処理時間)
数値が低いほど、お客様からの問い合わせによく対応できていると判断できます。多くのコールに対応し、お客様の抱えている悩みや問題を解決できるコールセンターは、生産性が高いと言えるでしょう。
しかしながら、目標値よりもあまりにもAHTが低い場合、対応がおざなりになっている可能性があります。例えば数値を下げるために、案内すべき内容を省略したり、早口で話したりしてしまうケースが考えられます。これらは、事務的で冷たい印象を与え、ミスやクレームにつながってしまうため、適切なAHT管理が必要です。
ATT
ATTは、1回の応対に要した平均通話時間を示す指標です。通話の開始から、切電をするまでにどれくらいの時間がかかったかを測ります。
計算方法は、以下のとおりです。
ATT=総通話時間÷総対応件数
数値が低いほど、「短い通話時間で完了した」を意味するため、コールセンターとしての生産性は高いといえるでしょう。一方、数値が高い場合はオペレーターの話が長すぎる・スムーズな案内ができていない可能性があります。
改善の手立てとしては、ATT数値の高いオペレーターを見つけ、通話内容のチェックを行う方法です。例えば、通話内容から「お客様の質問に対し、素早く答えられていない」というような問題点が見つかれば、ATTが長くなっていることを指摘します。さらに、お客様の要求を正しく理解し、適切な提案を行える方法を教育するなど、改善に向けての具体的なアドバイスをしましょう。
ACW
ACWは、切電後の後処理にかけた作業時間の平均値を表す指標です。対応内容を専用のシステムに記録する作業や、お客様からの依頼をまとめる作業などにかかった時間を測ります。
計算方法は、以下のとおりです。
ACW=後処理時間の合計÷対応件数
ACWは、AHT・ATTと同様に、数値が低いほど効率的に業務を行えていると判断できます。
なおACWは、お客様によって数値が左右される通話時間を含めず、「電話を切った後の処理時間」であるため、オペレーターの実力が発揮できる動機づけさえできれば効果を得られやすい指標です。生産性を高めるには、ACWの時間短縮を優先的に進めることをおすすめします。
ACWを短縮させる例として、オペレータースキル向上を図る(タイピングスピードを上げるなど)、処理フローの改善、入力項目の見直し、などが挙げられます。
CPC
CPCは、1回の通話にかかるコストを表す指標です。
計算方法は、以下のとおりです。
CPC=総コスト÷対応件数(処理件数)
総コストには、PCや電話機器などの設備費、通信費、家賃、オペレーター・管理者などの人件費など、運営にかかわるすべてのコスト要素を含めて計算するのが一般的です。
CPC数値は低いほど収益性が高いと判断できるため、コストをできるだけ低く抑えることが必要です。しかし、調整しやすい人件費の圧縮を優先的に行ってしまうとモチベーション低下を招き、結果として生産性を落とすことにもなりかねません。
そのため、人件費以外の諸経費削減を目指したり、オペレーター1人あたりの対応件数を増加させたりする方法での改善をおすすめします。
CPH
CPHは、1人のオペレーターが1時間に応対したコール数を表す指標です。
計算方法は、以下のとおりです。
CPH=1日の対応件数÷稼働時間
CPHは、数値が高いほど業務の効率化が進んでおり、生産性の高いコールセンターであると判断できます。一方、数値が低い場合「電話がつながりにくい状態」を意味しており、お客様にストレスを与え、顧客満足度低下が懸念されます。
単純にオペレーター1人あたりの対応件数を増やせばCPHも増加しますが、まずは低下している要因を見つけることが重要です。例えば、「システムが使いにくい」などのコールセンターを取り巻く問題なのか、それともスキル不足などオペレーター個人の問題なのかを明らかにし、それぞれに応じた対策を講じていきましょう。
コールセンターの生産性が落ちる理由
コールセンターの生産性が落ちる背景には、以下の理由が考えられます。
● 通話時間が長くなってしまっている
● 通話前後の作業・対応に時間がかかっている
● 受信数と人員数が合っていない
それぞれの理由を理解し、自社の現状を分析することが重要です。
以下に詳しく説明します。
通話時間が長くなってしまっている
通話時間が長くなると、おのずと対応できるコール数が減少するため、生産性が低下していまいます。要因として考えられるのは、お客様あるいはオペレーターの話が長いという点が挙げられるでしょう。
お客様の話が長くなるケースにおいては、クレームや苦情、お年寄りの方からの入電であった際、より一層丁寧な対応が必要になることから、必然的に長時間化しやすい傾向にあります。
この場合、通話時間を短くしようと話を遮ってしまうと、さらなる怒りを買ったり、不快な思いをさせたりしてしまうかもしれません。オペレーターは、可能な限りお客様の話を脱線させないなど、対話をコントロールする工夫が必要になります。
一方、オペレーターの話が長いケースは、トークスクリプトの精度が低いことにより、円滑なトークができていない、無駄な話が多い、説明が下手などの理由が考えられます。
改善策としては、トークスクリプトの見直しにくわえ、定期的に研修を実施するなど、スキルの向上を図ることで通話時間の短縮が目指せるでしょう。
通話前後の作業・対応に時間がかかっている
通話前後の作業や対応に時間がかかりすぎてしまうと、その分コールセンターに電話をかけているお客様をお待たせすることになり、生産性にも悪影響を与えます。
通話前後の作業に時間がかかる一番の要因は、「入力スキルの不足」です。タイピングスピードが遅いのに加えて、単語登録・ショートカットキーなどの工夫を行っていないことが考えられます。
改善策としては、PCに関するスキルを習得するための教育や研修を実施し、作業時間の効率化を目指しましょう。
また、スキル不足以外にも、「入力項目が多い・複雑」などの要因も考えられます。その場合、入力内容を必要最小限にする・入力システムを簡素化するなどの改修が必要です。
受信数と人員数が合っていない
受信数に対して、オペレーターの人員数が合っていないと生産性の低下を招きます。
「利益を上げるために、人件費は抑えたい」と考え、人員数を適正値にしていないと、当然のことながら「電話の取りこぼし」が発生します。
また、自社商品のキャンペーン開催時や広告宣伝により、予想数を上回る入電があった場合、時間あたりの対応件数が低下し、生産性が下がってしまいます。
改善策としては、コストを極力抑えたいと思っても、業務量を予測し、予測結果に基づくオペレーター数を導入することです。なお、業務量の予測は、1ヶ月・1日・1時間などの平均入電数を元に算出します。
しかしながら、人手不足に悩まされるコールセンター業界においては、人材確保は容易なことではありません。さらに、業務量の予想はできていても、コスト面を考慮すると適正人数の導入が難しいケースもあるかもしれません。
その場合は、「繁忙期のみスポット投入する」など、外部に委託する方法を検討し、生産性低下を防ぐようにしましょう。
コールセンターの生産性を向上させる方法
コールセンターの生産性を向上させるために行うべきことを5つご紹介します。
● 現状を整理する
● 目標との乖離を確認する
● 課題を洗い出す
● 施策を検討し進行する
● 指標のモニタリングを行う
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
現状を整理する
生産性を向上させるには、まず現状整理を行いましょう。
例えば、「トークスクリプトの流れがわかりにくく案内に迷う」「重複しているマニュアルがある」など、現場で困っていること、業務の足かせになっていることを洗い出し可視化します。
また、生産性にはコストも深くかかわってきます。「受信数に対してオペレーター数は適正なのか」「運営にかかっているランニングコストはどれくらいなのか」など、CPC(1通話にかかるコスト)を参考に整理しましょう。
なお現状整理をする際は、センターマネージャー(センター長)やSVなど、管理者のみで実施するのではなく、オペレーターやリーダーなど現場に最も近い位置で勤務している従業員からも情報を得ることが大切です。
目標との乖離を確認する
無理な目標設定をしていないか、目標数値の設定方法が誤っていないか、などを把握するために目標との乖離を確認しましょう。
目標設定は、高いほど良いとされがちですが、あまりにも達成不可能な内容にするのは適切ではありません。現実的な数字ではない目標設定は、従業員の仕事におけるモチベーションに悪影響を及ぼす可能性があるからです。
また、目標が高すぎて達成不可能だった場合、目標に応じて投入したリソースが無駄となり、生産性を落とすことになってしまいます。
そのため、過去の実績をもとに達成可能な目標を立て、従業員のモチベーションと生産性を高めることを意識しましょう。
課題を洗い出す
生産性向上の方向性を明確にするために、課題の洗い出しを行いましょう。
「現状を整理する」内容と重複する部分もありますが、ここでは課題を洗い出したら、表面的な問題だけに囚われるのでなく、原因追求まで行うことがポイントです。
具体的には、「後処理時間が長くなるオペレーターが多い」という課題が出たとして、「なぜ長くなるのか?」など問題になっていることを話し合い、原因を明らかにします。
原因追及まで行うことで、課題を改善するための行動目標の明確化が可能になり、スムーズかつ合理的に生産性向上を目指せるでしょう。
施策を検討し進行する
課題を洗い出し原因まで追究できたら、それをもとに施策を検討し進行しましょう。
適切な施策はセンターで抱える課題ごとに異なりますが、一例として以下の4つが挙げられます。
● コスト削減
● 生産性を高める成果を増やす(ACWやCPHなど)
● 無駄な作業工程を減らす
● 人材や部門を増やし規模を拡大する
注意点として、並行して複数の施策を実施するのは避けるべきです。効果が判定しにくくなるうえに、プロジェクトにかかわる従業員やオペレーターが対応しづらくなります。
すぐに実行可能な施策が見つかったとしても並行進行は避け、1つずつ取り入れながら効果を確認しましょう。
指標のモニタリングを行う
生産性向上を目指すうえで、継続的な指標のモニタリングが欠かせません。
既述した生産性を管理する5つの指標(AHT/ATT/ACW/CPC/CPH)は数値で表せるため、データとして習得しモニタリングすることが可能です。
なお指標は、一度の測定・分析・施策を行うだけでは、成果を上げるのは難しいといえます。日々の業務の一環として、時間ごと・日ごとなど細かくモニタリングを行うことで、各取り組みによる生産性向上の成果を明確にすることができます。
それにより、数字面から改善ポイントが見つかれば、いち早く気づき課題に向けた取り組みが可能です。効率的かつ効果的に、センター全体の生産性向上につなげられるでしょう。
まとめ
コールセンターにおける生産性とは、時間あたりのコール対応数として置き換えられ、リソース量に対して、どれだけ成果を生み出したかを示すものです。生産性が高ければ、お客様をお待たせすることなく多くの応対ができたと判断できます。
一方、生産性の低下は「電話がつながらない=お待たせする状態」を意味し、顧客満足度の低下を引き起こす可能性が高まります。
しかし、生産性向上は一朝一夕に実現できるものではありません。自社にとって効果がありそうな施策をいくつか実施し、継続的な取り組みが必要です。
自社内で生産性向上へのプロセスが難しいと感じているのであれば、電話業務の生産性の向上・効率化を強みとしている、電話代行サービスに委託する方法も有効な手段です。
株式会社中央事務所は、専門講習を受けたプロのオペレーターが在籍しており、月間総受電数6万件(※1)、新規入電応対率98%(※2)、さらにカスタマー応対率95%(※3)を維持するなど確かな実績がございます。
株式会社中央事務所では、24時間・365日オペレーターによる電話受付が可能です。人材不足時などのスポット利用にも、柔軟に対応いたします。
「人手不足の解消やコスト削減に取り組みたい」とお考えの企業様には、ご予算に合わせて最適なプランをご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
※1: 月間総受電数6万件
2021年10月1日~10月31日の期間で入電数をCTI出力により、CTIに接続しオペレーター対応をした件数を集計
※2: 新規入電応対率98%
2021年1月~2022年4月の期間でオペレーター対応数を新規入電数で割り算出
※3: カスタマー応対率95%
2022年2月~2022年4月の期間でオペレーター対応数をお客さまからのカスタマー入電数で割り算出
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