コールセンターでのChatGPT活用とは?メリットや注意点を解説
公開日 2024.08.05
更新日 2024.08.05
知識

コールセンターでのChatGPT活用とは?メリットや注意点を解説

満を持して登場した「ChatGPT」は、すでにさまざまな業界で活用されており、コールセンター業界も例外ではなく確実に導入事例が増えています。

ただし現場に浸透するまでにはまだまだ課題も多く、使い方を間違えると情報漏洩につながるリスクも持ち合わせています。

そこで今回は、コールセンターにおける「ChatGPT」の活用事例や注意点について解説します。

 

ChatGPTとは

ChatGPTとは、正式には「Chat Generative Pre-trained Transformer(文章生成モデル)」の略で、人工知能の研究で知られるアメリカのOpenAI社が開発した自然言語処理モデルのひとつです。

ChatGPTは、利用者が入力した質問に対しAIがチャット形式で瞬時に回答してくれるため、世界中で利用者が急増しています。

特徴は日常的に使用している言語データをAIが学習し、まるで人間と対話をしているかのような自然な文章を作成してくれることです。

すでに日本の大企業や団体の半数以上が検討もしくは導入していると見られ、従業員の生産性向上や業務改善になくてはならないAI技術になりつつあります。

 

コールセンターでChatGPTを活用するメリット

顧客との会話によってサービスを提供しているコールセンターにとって、文章作成の人工知能であるChatGPTは、さまざまな分野にメリットがあると考えられています。

特に、コールセンターの良し悪しを決める「応対品質」と「生産性」の向上に効果が期待できることがわかってきました。

その理由について詳しく解説します。

 

応対品質の向上につながる

ChatGPTの導入は応対品質の向上につながるといえます。

例えば、顧客の意見やクレームは顧客満足度の向上に欠かせない材料ですが、言葉で文章にまとめるのは容易なことではありません。

ChatGPTの得意分野である文章の要約を活用することで煩雑な事務処理が減り、その分顧客対応に時間をかけることができます。

最近は話すトーンや言葉づかいなどを分析して感情を推察する「音声認識」の技術も進歩しており、将来的には、会話中に相手の怒りを検知したタイミングでアラートを出すなどの試みも検討されています。

これまで人間に頼っていた仕事をChatGPTに任せることで管理者の負担が減り、顧客にとっても「痒い所に手が届く」対応の一助となるでしょう。

 

生産性の向上につながる

ChatGPTは生産性の向上にも大いに役立ちます。

コールセンターの評価基準であるACW(平均後処理時間)は、オペレーターが応対履歴を入力する時間が含まれていますが、コールログをChatGPTに要約させればACWの短縮につながります。

ACWが短縮できれば自ずと対応できる本数が増え、サービスレベルの安定が期待できます。

また実際のログをChatGPTにインプットさせ、生成された回答をもとに顧客対応を行えば業務効率が格段にアップするはずです。

コールセンターの仕事は多岐にわたり常に人手不足に悩まされていますが、ChatGPTの導入によって生産性がアップすれば、少ないリソースでの運営も実現可能になるでしょう。

 

コールセンターでのChatGPT活用例

ここからはChatGPTが得意とする5つの機能に注目し、コールセンターでの実際の活用例を具体的に解説します。

ChatGPTのメリットは、入力した質問に対しチャット形式で瞬時に回答してくれることですが、望む答えを導き出すためには、入力する指示文「プロンプト」が重要であることも理解しておきましょう。

 

FAQの作成支援

FAQは顧客対応になくてはならないものですが、作成するためには過去ログや問合せ内容を分析する必要があり、かなりの手間がかかります。

その点ChatGPTであれば、お客さまからの問い合わせに関するデータをChatGPTに読み込ませ、FAQの作成を指示することで自動作成が可能です。

ちなみに「通信販売のコールセンターのカスタマーサポートで寄せられるよくある質問を5つQ&A形式で書き出して」と指示すると下記のような回答が返ってきました。

この回答に対し新たな情報を与え、「Aは300文字程度にまとめて」などと追加で指示することにより精度の高いFAQ作成が可能です。

また、ChatGPTが作成した回答をベースとして人間が手を加えるだけでも、大幅な作業時間の節約になるでしょう。

 

トークスクリプト作成支援

文章の作成が得意なChatGPTは、トークスクリプトの原案を作成することも可能です。

トークスクリプトは複雑でChatGPTだけでは完成が難しいかもしれませんが、たたき台として活用するだけでも時間短縮になるはずです。

例えば、「30代女性向けの化粧品をアピールするためのトークスクリプトを作成して」と指示した場合の出力は以下の通りです。

オープニングからクロージングだけでなく使用感とレビューなどを含む、高性能のスクリプトが完成しました。

プロンプトを入力して出力までにかかった時間は5分程度ですので、使わない手はありません。

ただし、最終的には人の手で肉付けする必要があり、流れを参考にする程度に留めておくと良いでしょう。

 

応対履歴の要約支援

応対履歴の要約もChatGPTの得意とする分野であり、コールセンターで活用できる機能です。

AI音声認識ツールで文字起こししたコールログをChatGPTに読み込ませれば、要約した文章を生成することが可能です。

例えば「この通話を500字程度に要約して」「箇条書きでまとめて」などと指示をすると指示通りの文字数や形式で出力します。

さらに文字起こしの段階で間違った箇所があれば、ChatGPTが前後の文脈から正しい言葉を導き出し自動的に修正してくれる効果も確認されています。

いずれにせよ応対履歴の入力が簡素化し、ACWの改善ができればオペレーターにゆとりも生まれ、結果的に顧客満足度の向上が期待できるでしょう。

 

AIチャットボットの学習支援

人間よりスピーディーに回答をくれるAIチャットボットは顧客にとって利用価値が高く、年々需要は高まっています。

AIチャットボットの正答率を高めるためには、AIにさまざまな言い回しを学習させる必要がありますが、人間が言い回しを考え1つ1つインプットしていくのは合理的ではありません。

その点ChatGPTであれば瞬時に複数の言い回しを生成することが可能です。

ちなみに「注文内容を変更したいというフレーズに変わる別の言葉を20個作成して」と指示してみたところ下記の回答を得られました。

中には実用的でないものもありますが、これだけの数をアナログで作成しようとするとかなりの時間と労力が必要です。

ChatGPTを活用することで、AIチャットボットがより精度の高い身近なものとなるでしょう。

 

オペレーターの育成支援

ChatGPTはオペレーターの育成にも大いに力を発揮します。

オペレーター研修に必要な資料を用意するのは時間も労力もかかりますが、資料作りをChatGPTに任せることができればSVの負担も減り、実際の研修に集中できるからです。

新人研修に欠かせないロープレも、「コールセンターの新人向けにお届け日変更のロープレを考えて」と指示すると、以下のとおりロープレ形式でのシナリオが作成できます。

この例は「お届け日変更」のシナリオですが、クレームの内容を指示してお詫びバージョンを作成することも可能です。

また、お客様の声やログを元に回答を作成すれば、知識の少ない新人でも顧客対応が可能になり即戦力としての育成に役立つでしょう。

 

コールセンターでChatGPTを活用する際の注意点

メリットばかりに思えるChatGPTですが実は課題も多く、以下の点に注意して活用しなければメリットがデメリットにもなりかねません。

ここからはChatGPTを活用する際の3つの注意点について解説します。

 

全ての回答を正しいものととらえない

ChatGPTは学習した情報をもとに回答を導きだす頭脳に優れていますが、裏を返せばインプットされていない情報に関しては正しい回答をすることができません。

プロンプトによって回答が大きく変化するのもChatGPTの特徴で、指示の仕方によっては的外れの回答が出力されることも確認されています。

また、ChatGPTが学習したデータの中に事実と異なる内容が含まれていれば、当然間違った回答が出力されてしまいます。

ChatGPTはあくまでも自然な文章生成に優れたツールであり、事の真偽を判断させるための知能ではありません。

最終的には人間の目で情報を精査し、ChatGPTはあくまでも補助的なツールであるという心構えが必要です。

 

個人情報などは入力しない

ChatGPTはユーザーが入力した内容や過去にインプットされた情報を自ら学習し、まるで自分が実際に関わったような文章を作り出して出力します。

つまり、どんなデータも取りこぼさずパフォーマンスの向上に役立てていると考えれば、うっかり入力してしまった個人情報も使用される可能性が高いといえます。

自分の個人情報だけならまだしも、顧客に関する情報が他のユーザーへの回答に活用されれば重大なインシデントになりかねません。

個人情報の入力を禁止するのはChatGPTだけに限ったことではありませんが、チャット形式で瞬時に回答が得られるChatGPTであれば、一瞬のうちに情報漏洩してしまうことを理解しておきましょう。

 

活用範囲や使用ルールを明確にする

ChatGPTはコールセンターの効率化を図る上で有効な手段である反面、前述したとおりセキュリティ上の問題や回答の正確性において課題を残しています。

企業がChatGPTを安全に利用するためには、活用範囲や使用ルールを明確にしたガイドラインを作成しておかなければなりません。

例えば、ChatGPTを公式な文書や契約書などに使用しないことはもちろん、出力された回答は必ず根拠や裏付けを自身で確認し、責任の所在を明らかにするなどです。

また、ChatGPTの回答が著作権やプライバシーを侵害する場合も否定できないため、個人情報などの機密性の高い情報は絶対入力しないことを周知徹底しておく必要があるでしょう。

 

まとめ

ChatGPTはさまざまな機能を持つ優れたAI知能であり、もはや業務の自動化になくてはならないツールです。

すでに多くのコールセンターでChatGPTのAI機能を使った取り組みが進み、作業の効率化や稼働の削減に一定の効果をみせています。

ただし前述したとおり、現状ではChatGPTに依存するのは危険であり、最終的にはオペレーターの質が物を言う業界であることに変わりはありません。

中央事務所は、専門講習を受けたプロのオペレーターが在籍しており、月間総受電数6万件(※1)、新規入電応対率98%(※2)、さらにカスタマー応対率95%(※3)を維持するなど確かな実績がございます。

ChatGPTを活用して業務の自動化を図りながら質の高いオペレーターを育成し、安定したコールセンター運営を目指しましょう。

※1: 月間総受電数6万件
2021年10月1日~10月31日の期間で入電数をCTI出力により、CTIに接続しオペレーター対応をした件数を集計
※2: 新規入電応対率98%
2021年1月~2022年4月の期間でオペレーター対応数を新規入電数で割り算出
※3: カスタマー応対率95%
2022年2月~2022年4月の期間でオペレーター対応数をお客さまからのカスタマー入電数で割り算出

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