コールセンターの目標設定はどうあるべきか?手順やKGI・KPI事例をご紹介
公開日 2023.11.02
更新日 2023.10.10
知識

コールセンターの目標設定はどうあるべきか?手順やKGI・KPI事例をご紹介

コールセンター 目標設定

コールセンターにおいて、目標を明確に設定することは、顧客満足度の向上や業務の効率化につながります。一方、目標設定をしない場合、何を目指して取り組めばよいのかわからず、オペレーターや管理者のモチベーション低下を招き、業績への悪影響も避けられません。そのため、正しい手順で目標を立てて、運営していくことがとても重要です。 今回は、コールセンターの目標設定に欠かせないKGIとKPIの違いや概要、併せて目標事例と設定ポイントについて解説します。  

コールセンターにおける目標とは?

応対品質の向上や生産性・業務効率の改善など、これらを効率よく進めて成果を出すためには、目標設定が不可欠です。しかし、単に「目標を設定すればよい」というわけではありません。全従業員が明確に理解できる、達成に向けた取り組み方や進捗状況を共有する必要があります。 そこで、役立つのが目標指標として使われる「KGI」と「KPI」です。ここでは、それぞれの違いや概要について紹介します。  

KGIとKPIの違いとは?

「KGI」と「KPI」これらの違いとしては、KGIは「最終目標」であるのに対し、KPIは「中間目標」という点です。つまり、KGIは長期的な目標を示し、KPIはそれを実現するための具体的な行動目標、または達成度合いを示します。それぞれの概要については以下で解説しますが、どちらも目標や目的を達成するための、重要な指標といえるでしょう。  

コールセンターのKGIとは?

KGI(重要目標達成指標)とは、目標を定量的に示す指標です。「最終的な目標を数値で表したもの」とイメージするとわかりやすいでしょう。 KGIの事例には、以下のような内容があります。 f ● 顧客満足度を80%以上にする ● リピート率を20%アップする ● 90%以上のお問い合わせに対して30秒以内に応対する KGIは、設定した数値を満たしたか否かで達成度を判断したり、目標達成に向けた取り組みを促したりするために使用されます。  

コールセンターのKPIとは?

KPI(重要業績評価指標)は、KGI(最終目的)に向けて行われる業務の達成度合いを定量的に示す指標です。わかりやすい例として「応答率95%にするため(KGI)、放棄呼率5%を目指す(KPI)」というように、KGIに到達するための中間目標がKPIです。 なお、KPIは数多く存在する指標の総称であり、特定の指標を示すものではありません。詳細については後述しますが、コールセンターで活用される代表的な指標には「応答率」「稼働率」「放棄呼率」などがあります。 KGIとの関連性を考慮しながらKPIを設定し、それをもとに改善活動を行うことで、おのずと業務の効率化や顧客満足度の向上につながります。  

コールセンターにおける目標の設定手順

目標の設定手順は、以下の通りです。 1. KGIを設定する 2. KGI達成のために必要な要素を洗い出す 3. 洗い出した要素を細分化し、KPIを設定する 4. KPIの数値目標を立てる 5. KPI達成に向けたTODOを洗い出し、実行計画を立てる それぞれについて、詳しく見ていきましょう。  

KGIを設定する

目標を設定する際、最初に行うのがKGI(最終目標)の決定です。なお、コールセンター業務には、アウトバウンドとインバウンドがありますが、それぞれのKGI事例には以下のようなものがあります。 <アウトバウンド(発信業務)> ● 新規顧客の獲得率◯%増 ● 商品リピート率◯%増 ● アフタフォローの案内効率◯%増 <インバウンド(受電業務)> ● 応答率◯%の改善 ● 一次解決率◯%増 ● クレーム発生率◯%減 最初にKGIを設定することにより、目標を達成するための明確な方向性を全従業員に共有できます。  

KGI達成のために必要な要素を洗い出す

KGIを設定した後は、達成に必要な要素を洗い出し、その要素に対して具体的な施策を立てましょう。 たとえば「応答率◯%の改善」と考えている場合、達成のために必要な施策には、以下の内容が考えられます。 ● 受付対応時間を延ばす ● オペレーターの人数を増やす ● 電話対応以外のチャネルを増やす ● 一人の顧客にかかる対応時間を減らす このように、考えられる要素を可能な限り洗い出し、目標達成への方向性を定めましょう。なお、ここではあくまでも「要素」なので、「◯%増やす」というように数値化しなくても問題ありません。  

洗い出した要素を細分化し、KPIを設定する

必要な要素を洗い出した後は、それらを細分化し、KPIを設定しましょう。 仮に、KGIを「応対品質◯%向上」とした場合、必要な要素となるのが「オペレーターの応対品質向上」「応答率を改善する」「問題解決力を上げる」などが考えられます。 その要素に対するKPIとして、以下の指標が挙げられます。 ● 顧客満足度(CS):対応にどの程度満足しているかを示す指標 ● 応答率:着信数に対し、オペレーターが応答した割合 ● 平均応答時間(ASA):応答するまでの平均時間  

KPIの数値目標を立てる

設定したKPIに対し、数値目標を設定します。以下の工程を踏むことで、適正な数値目標が立てられるでしょう。 1.現状を評価する 現状を評価し、どの程度の改善が必要かを判断することで、現実的な数値目標の設定が可能です。 2.過去のデータを分析する 対象KPIの過去データを分析し、ベースラインを確立します。 3.競合他社のデータを調査する 競合他社のKPIデータを調査のうえ、把握・比較し数値目標を設定します。  

KPI達成に向けたTODOを洗い出し実行計画を立てる

最後に、KPI達成に向けたTODOを洗いだし、実行計画を立てましょう。具体的には、KPI達成に必要な業務プロセスの改善や、必要なツールやシステム、人員配置などを洗い出し、それらをタスクに分解します。その上で、実行計画を策定しましょう。 一例として、KPIを「応答率◯%向上」とした場合、達成のためのTODOとして「オペレーターの人数を増やす」「システムを導入する」などが考えられます。 このように、TODOをリストにすることで「何をすれば良いのか」と同時に、「しなくてよいこと」も明瞭になるため、ムダな作業を減らすきっかけにもなります。  

コールセンターにおける目標例

目標を達成するには、KPIの存在が不可欠です。ここでは、コールセンターでよく活用されるKPIを、以下4つの目標例からご紹介します。 ● 応対・接続品質を図る ● 生産性・効率性を図る ● 顧客満足度を図る ● マネジメントを図る それぞれの目標例にかかわる指標と算出方法を詳しく見ていきましょう。  

応対・接続品質を図るKPI

応対・接続品質を図るKPIは、以下の通りです。 <応答率> 着信数に対して、オペレーターが応答した割合を表し「対応件数÷入電数×100」で算出できます。 一例として、入電数500件のうち、400件応対できた場合には「400÷500×100=80」となり、応答率は80%ということです。数値が高ければ、電話がつながりやすい状態であることを示します。 <SL(サービスレベル)> 顧客からの電話に対して、一定時間内に応答した割合を表し「設定時間内の応答数÷入電数×100」で算出できます。 一例として、着信件数は120件、設定時間内に対応できた件数が90件であった場合「90÷120×100=75」となり、SLは75%ということです。数値が低い場合、設定時間内に応答できていないコールが多発していると判断できます。 <ASA(平均応答時間)> 電話に応答するまでの平均時間を表し「応答までにかかった時間の合計 ÷ 入電数」で算出できます。 一例として、4件のコールに対する応答時間がそれぞれ、8秒、10秒、12秒、16秒である場合「(8+10+12+16)÷4=11.5」となり、ASAは11.5秒ということです。応答までの時間が短いほど、顧客を待たせている時間も短いことを意味し、接続品質が高いと判断できます。 <放棄呼率> 顧客がオペレーターにつながる前に切電をした割合を表し「放棄呼件数÷入電数×100」で算出できます。 一例として、200件の入電があり、そのうち10件の対応ができなかった場合「10÷200×100=5」となり、放棄呼率は5%ということです。0%を理想としており、数値が高い場合、機会損失の発生を意味します。  

生産性・効率性を図るKPI

生産性・効率性を図るKPIは、以下の通りです。 <稼働率> 稼働している時間内で、顧客対応などの業務にどのくらいの時間割けたかを表し「顧客対応時間(通話中・保留中・後処理・待機時間)÷勤務時間×100」で算出できます。 一例として、勤務時間が7時間のうち、顧客対応時間が6時間であった場合「6÷7×100=85.7」となり、稼働率約85%ということです。適正数値から外れている場合、業務効率の最適化が実現できていないといえるでしょう。 <CPH> センター全体、またはオペレーターが1時間あたりに対応した電話の数を表し「1日の対応件数÷稼働時間」で算出できます。 一例として、1日7時間で40件の対応を行った場合「40÷7=5.71」となり、CPHは5件ということです。数値が高ければ、効率的にセンター運用できている、つまり生産性が高いと判断できます。ATT(平均通話時間)オペレーターが1コールあたりに要した平均通話時間を表し「総通話時間÷対応数」で算出できます。 一例として、総通話時間が90分、対応件数が10件であった場合「90÷10=9」となり、ATTは9分ということです。数値が短い=短い通話時間で効率よく案内できたことを意味します。ACW(平均後処理時間)切電後の後処理にかけた作業時間の平均値を表し「総後処理時間÷対応数」で算出できます。 一例として、通話件数50件分の後処理に150分かかった場合「150÷50=3」となり、ACWは3分ということです。数値が短ければ、効率的に業務を行えていると判断できます。AHT(平均処理時間)オペレーターが顧客との会話や処理にかかった平均時間を表し「平均通話時間(ATT)+平均後処理時間(ACW)」で算出できます。 一例として、ATTが8分、ACWが2分の場合「8 + 2=10」となり、AHTは10分ということです。なおAHTは、ATTとACWを合わせた数値であるため、まずATTとACWを改善させることで、おのずとAHTの改善につながります。 <CPC> 1コールあたりの電話対応にかかるコストを表し「センター全体コスト÷対応数」で算出できます。 一例として、対応数が2,000件、センターの全体コストが1,000,000円の場合「1,000,000÷2,000=500」となり、CPCは500円ということです。コストには、パソコンや電話機器などの設備費、通信費、人件費など、運営にかかわるすべてのコスト要素を含めて計算します。  

顧客満足度を図るKPI

顧客満足度向上を図るKPIは、以下の通りです。 <CS(顧客満足度)> 顧客が商品・サービスやオペレーターの対応にどれだけ満足しているか、いわゆる「顧客の声」を示した指標です。 応答率や放棄呼率のように、特定の数値を指すものではなく、アンケート調査やインタビュー形式で得られた回答を数値化します。たとえば「応対に満足できたか」というような質問を通話直後にSMS送信し、そのフィードバックをもとに数値化する方法があります。 <NPS> 顧客が、商品・サービスを利用し、他人にどの程度推奨したいかを示した指標です。NPSを算出する際には、まず「友人や家族に薦めたい程度」を以下の分類から、評価してもらいます。 ● 9~10点:推奨者 ● 7~8点:中立者 ● 0~6点:批判者 評価をもとに「推奨者(%)-批判者(%)」の計算式に当てはめて算出します。 一例として、200人の回答者のうち、推奨者が150人(75%)、批判者が50人(25%)であった場合「75-25=50」となり、NPSは50ということです。なお、スコアは-100から100までの数字で算出し、100に近いほど推奨派が多いことを意味します。 <CES> 顧客が問い合わせをした際に、どの程度「労力」を要したかを評価してもらう、いわゆる「不満足度」を示す指標です。サービス利用に要した負担の程度を、以下の分類から評価してもらいます。 ● 6~7点:好意的意見 ● 4~5点:中立的意見 ● 1~3点:批判的意見 評価をもとに「好意的意見(%)-批判的意見(%)」の計算式に当てはめて算出します。 一例として、100人の回答者のうち、好意的意見が60人(60%)、批判的意見が40人(40%)であった場合、「60-40=20」となり、CESは20ということです。NPS同様に、100に近いほど好意的派が多いことを意味します。  

マネジメントを図るKPI

マネジメントを図るKPIは、以下の通りです。 <欠勤率> オペレーターが出勤すべき日数に対して欠勤した日数の割合を表し「欠勤日数÷予定勤務日数×100」で算出できます。 一例として、20日の出勤予定のうち、2日欠勤した場合は「2÷20×100=10」となり、欠勤率10%ということです。欠勤率が高い場合は、従業員の健康状態やモチベーションが低下していることが考えられるでしょう。 <離職率> ある一定期間における離職者の割合を表し「一定期間における離職者÷在籍人数×100」で算出できます。 一例として、100人の従業員が在籍しており、そのうち10人が退職した場合は「10÷100×100=10」、離職率は10%ということです。離職率が高いと、必然的に在籍しているオペレーターの業務量が増え、業務効率の低下や応対品質の低下を招く可能性が高まります。  

コールセンターにおける目標設定のポイント

目標設定のポイントには、以下の2つが挙げられます。 ● KPI設定に重要と言われるSMARTを意識する ● 可視化して達成進捗を分かるようにする それぞれについて、詳しく見ていきましょう。  

KPI設定に重要と言われるSMARTを意識する

目標設定のポイント1つ目は、KPI設定に重要と言われる「SMART」を意識することです。 SMARTとは、Specific(具体的な)、Measurable(測定可能な)、Achievable(達成可能な)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)、これらの頭文字を取ったものです。具体的な内容は、以下の通りです。 <Specific(具体的な)> 「どの項目に対して指標を設定するのか、その指標とKGIがどのような関連性を持つのか」など、具体的な目的・意義を持たせることが重要です。 <Measurable(測定可能な)> 途中経過を確認するためにも、達成度合いを客観的な数値として評価できることが大切です。たとえば、「顧客満足度向上のために、応対品質を良くする」といった、定性的な目標を立ててしまうと、途中経過や目標修正が難しくなります。そのため、「サービスについての満足度アンケートで、好評価を30%以上にする」というように数値化し、進捗状況や結果を確認できる形式にしましょう。 <Achievable(達成可能な)> 目標を設定する際には、現実的で達成可能な目標を設定することが重要です。目標が高すぎるとモチベーション低下やストレスが生じます。一方、目標が低すぎるとチャレンジ精神が減少する恐れがあるので注意しましょう。 <Relevant(関連性がある)> KGI(最終目標)と関連性の高いKPIを設定しましょう。なぜなら、成果に直結する目標設定にしなければ、達成が遠のく可能性が高まるからです。たとえば、KGIが「コスト削減」であるのに対し、「応答率を◯%アップさせる」などの関連性の低いKPIを設定するのは適していません。KPIを設定する際には、KGIと関連づけられた指標であるか、必ず確認しましょう。 <Time-bound(期限がある)> 目標には、期限を設定することが重要です。期限を設定することで、単なる努力目標ではなく、必ず成し遂げる目標として機能します。 このように、KPI設定にはSMARTの考え方を取り入れることで、具体的で効果的な目標設定が可能です。  

可視化して達成進捗を分かるようにする

目標設定のポイント2つ目は、目標を可視化し、達成進捗を分かりやすくしましょう。 可視化せずにいると、たとえ目標が具体的であっても達成状況が把握しづらく、施策改善の実行遅延や、問題発生時の迅速な対応が難しくなるかもしれないからです。そのため、適切な指標を設定し、その指標の進捗状況を可視化することが非常に重要といえます。 たとえば、ブース内の1番見えやすい位置に「応答率改善に向けて、後処理時間◯分の短縮を目指そう」「目標達成まであと◯%の改善が必要」と掲げることで、目標達成に向けた取り組みの進捗状況を全従業員と共有できます。  

まとめ

応対品質の向上や生産性・業務効率の改善など、これらを効率よく進めて成果を出すためには、KGIとKPIを活用した目標設定が不可欠です。またKGIに対して、関連性の高いKPIを設定し、改善していくことで、おのずとセンター全体の目標達成につながります。 しかし、目標設定する際には、現状の課題や目的を踏まえた詳細な分析が必要です。さらには、KGI・KPIそれぞれの知識や仕組み、データを可視化するためのコールセンターシステムも不可欠です。時間やコストなどの問題から、自社ですべて準備するのは難しい場合、コールセンター業務の全般、または一部の業務を電話代行サービスに委託するのも有効な選択肢といえます。 中央事務所は、専門講習を受けたプロのオペレーターが在籍しており、月間総受電数6万件(※1)、新規入電応対率98%(※2)、さらにカスタマー応対率95%(※3)を維持するなど確かな実績がございます。 中央事務所では、経験豊富な営業コーディネーターが作成したトークスクリプトに基づき、高品質の電話対応を提供します。コールセンターの業務改善に課題を抱えているのであれば、課題に沿ったご提案をいたしますので、お気軽にご相談ください。 ※1: 月間総受電数6万件 2021年10月1日~10月31日の期間で入電数をCTI出力により、CTIに接続しオペレーター対応をした件数を集計 ※2: 新規入電応対率98% 2021年1月~2022年4月の期間でオペレーター対応数を新規入電数で割り算出 ※3: カスタマー応対率95% 2022年2月~2022年4月の期間でオペレーター対応数をお客さまからのカスタマー入電数で割り算出
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